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学芸員のおすすめ展示:ストロマトライト 後編

 

みなさん、こんにちは!新人学芸員の片田です。

前編に引き続き、生命館2階のストロマトライトについてのお話です。

 

前編ではストロマトライトはシアノバクテリアという光合成を行って酸素を発生させる細菌によって作られている、というお話をしました。

今回はシアノバクテリアの光合成と私たちの暮らしについてのお話です。

  

シアノバクテリアによる光合成が始まる以前、なんと空気中に酸素はほとんどなく、空気の98%以上は二酸化炭素でした。現在の空気中の二酸化炭素濃度は約0.04%にまで下がり(400ppmという言い方もします)、代わりに酸素の濃度が高くなりました。酸素がない世界なんて想像も出来ませんね。この空気中の酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化を引き起こしたのが、シアノバクテリアなのです。いやはやびっくり、脱帽モノですね。生命館2階の壁にも、酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化を示したパネル(写真1)がありますので、ぜひご覧ください。

 

大気組成変化1.JPG大気組成変化2.jpg

写真1 酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化

 

さて、シアノバクテリアの光合成は空気の成分を激変させる以外にも、地球に大きな影響を及ぼしました。

シアノバクテリアが光合成で酸素を発生させ始めた時代には、海の中に大量に鉄が溶けていました。そこに光合成で酸素が放出され、鉄は酸素と結びついて海底に沈殿しました。こうして出来た地層は縞状鉄鉱層と呼ばれています。

 

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写真2 縞状鉄鉱層

 

実は、現在の鉄鉱石(鉄のもと)の大部分はこの縞状鉄鉱層から採られているんです。身の回りの鉄製品が、大昔にシアノバクテリアが光合成で発生させた酸素と結びついて出来た鉄鉱石から作られたと想像してみてください。自動車や建物、スマートフォンにも鉄は使われています。そう思って周りを見渡すと、なんとも不思議な気分になりますね。

  

光合成による酸素の発生は、これ以外にも、環境問題でよく聞くオゾン層の形成など生命の歴史の中でとても重要な場面に関わっています。このコラムでは書ききれませんが非常に面白いのでぜひ自分で調べてみてくださいね!

 

ここまで読んでいただいた方はシアノバクテリアが私たちの生活にも深くかかわっていることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

せっかくですからシアノバクテリアに感謝を伝えましょう。ありがとう、シアノバクテリア。本当にありがとう。(まぁ、シアノバクテリアは私たちのために光合成をしている訳ではないんですけどね。)

 

皆さんも生命館2階の展示室でストロマトライトを眺め、シアノバクテリアの活動に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

  

学芸員 片田はるか

 

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