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石油の饅頭 〜石油包有シリカコンクリーション〜

 

石好き学芸員、改め、アングラキュレーターの西本です。

またまた変な石を公開することになりましたので報告します!! 饅頭(まんじゅう)みたいな石です。

 

米国ユタ州に分布する約5000万年前(新生代新第三紀始新世)の地層「グリーンリバー層」を調査中、お餅をつぶしたような丸い石が含まれていることに気づきました。

少し前に「湖底でできたチャート層」を紹介しましたが、その近くの露頭で見つけました。

その石はシリカ(珪酸分=ガラスの主成分; Si02)でできていて、とても硬かったのですが、中に化石が入っていないか確かめたくなりハンマーで叩き割ってみました。

そうしたら、油の臭いがプ~ンとしてきてびっくり。化石ではなく、石油が出てきたのです。

石油が掘削されている地域ですから、地層中に石油があること自体は驚くことではなかったのですが、まさか、カチコチの石の中に石油が閉じ込められているとは思ってもみませんでした。こりゃまるで“石油の饅頭”ですね。

 

学術的には、シリカによって固められた「コンクリーション」と呼ばれる岩石ですが、どのようにしてできたのかはよく分かっていませんでした。

あれこれ調べてみると、シリカのコンクリーション中に閉じ込められていた石油は、もともと魚の糞だったのではないかと推測されました。シリカは酸性になると沈殿しやすいので、魚の糞の腐敗によって生じた酸によって酸性となった部分に沈殿したと考えられます。

グリーンリバー層は、魚の化石がたくさん見つかることでも有名ですから、湖の底は魚の糞でいっぱいだったのでかもしれません。

“石油の饅頭”は、約5000万年前のたくさんの魚が泳いでいた証なのです。

 

 

写真1:シリカコンクリーション露頭.JPG

写真1:”石油の饅頭”(=石油入りシリカコンクリーション)が見つかった地層(アメリカ・ユタ州)

 

写真2:シリカコンクリーション産状.jpg

写真2:石油包有シリカコンクリーションの断面 (左)=地層中に埋もれている状態、(右)=切断面を見ると、中心部に黒っぽい石油と小さな水晶がある。熱すると石油がしみ出してくる。

 

 

詳しくは名古屋大学のプレスリリースをご覧ください。

名古屋大学プレスリリース:世界初!石油を内包するシリカコンクリーションの成因を解明

 

公表論文は下記になります(オープンアクセス、英語)

H.Yoshida, R.Kuma, H.Hasegawa, N.Katsuta, S.Sirono, M.Minami, S.Nishimoto, N.Takagi, S.Kadowaki, R.Metcalfe (2021) Syngenetic rapid growth of ellipsoidal silica concretions with bitumen cores. Scientific Reports, 11, 4230.

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