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2021年5月26日_皆既月食

2021年5月26日19:45-21:00 
公式Youtubeチャンネルでオンライン市民観望会「皆既月食」
を行いました。録画がご覧いただけますので上からどうぞ!

名古屋は完全に雲の向こうでした。以下、過去の情報を含みます。
美しい月食の次回は12年後ではありません。半年後です。
下の方に情報がありますが、
11月19日の「ほぼ」皆既月食をお楽しみに!

 



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2021年5月26日の宵に皆既月食がおこります。今回は欠け始めた月が昇ってきて、20時9分に地球の影に全部入る皆既となります。しかしその継続時間は19分。地球の影の端を通り抜けるという感じです。低空での現象ですので、南東の視界が開けたところを事前に探しておくのが大切です。

   

● 月食は月が欠けていく現象です。普段からご覧の「月」を見るわけですから、特別な道具は要りません。もしオペラグラスや双眼鏡などをお持ちでしたら、よりラクにみることができます。今回の月食は南東の空低くですので、その方向の視界が開けたところを探しておきましょう。月食自体の進行の時刻は日本のどこでも同じですが、地域によって、地平線からの高さや方角が少し違います。今回の月食は関東から東北の太平洋側の方が少し月が早く昇るので、欠け始めるところから見ることができますが、その差はわずかです。

 

 

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 日食と月食は、太陽と地球と月の位置関係で起きるという意味では、よく似た天文現象です。太陽と地球の間に月が入って、月の影が地球に落ちるのが日食。月が太陽の反対側に行って、地球の影に月が入るのが月食です。

 

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● 今回の皆既月食は地球の影の上の方を通過します。中央付近を通るときは皆既の時間が1時間を超えますが、今回は縁なので19分と短くなります。

 

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 以前の皆既月食の写真です。皆既中はこんなふうにきれいな赤い色になります。
 過去で晴れた月食の記録映像です。2018年1月31日 2014年10月8日 2011年12月10日

 

 皆既月食中(2018年1月31日)の赤い月の超高感度カメラよる動画です。
 (Carina SSC-9600 + FS-60CB + フラットナー 6cm F6)

 
さらに月明かりが弱くなりますから、空が暗い郊外や山奥では、明るい「月夜」から「闇夜」にかわります。山奥などでは皆既の間だけ天の川が見えるようになります。2014年の皆既月食ではその様子を捉えることができました。こちらに動画があります。

  

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 皆既月食の月が赤く見えるのは、地球に大気があるからです。図のように地球の大気を通り抜けた光は、やや内側に回りこみ、影の中の月を照らします。

 

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 この光は地球大気の中を長い距離通過してから通り抜けるので、その間に波長の短い紫や藍色、青といった色の光が、途中で散乱されてしまいます。これが青空です。その結果通り抜けてくる光は赤っぽくなります。夕日や朝日が赤く見えるのも同じ理由です。また地球は丸いので地球の大気も大きく見ると凸レンズ型になります。そこで光は曲げられて影の中に向かい皆既中の月を赤く照らすのです。

 

 

皆既月食中の月に行ってみた動画です。皆既月食中の月から見ると地球が太陽を隠す皆既日食になっています。さらに月を照らしている赤い光が通り抜けている地球大気が赤いリングとして見えています。まだどの探査機も撮影したことがなく、誰も見ていないこの赤いリング。名古屋市科学館のプラネタリウムでは、デジタル式プラネタリウム導入の2011年から、皆既月食を取り上げるたびにこの現象をドーム内で再現してきました。現在(2021年5月)もリニューアルしたデジタル式プラネタリウムで地球の赤いリングを再現しています。この動画はその一部分を切り出したものです。できるだけ大きくして御覧ください。

 

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 月食の時の欠け方は、普段の月のくっきりとした欠け方と違って、欠け際がぼんやりとしています。これは地球の影の外側に半影というぼんやりした影がさらに広がっていることが原因です。月食の時、月から見ると地球が太陽を隠す日食になっています。この時、太陽が地球によって全部隠れて見えている地域は真っ暗になっていますが、半分とか、少ししか隠れていない地域もありますね。そこは薄明かりが当たっていて、地球から見ると半影となるのです。また、欠け際のカーブは地球の影の形です。そこで地球の方が月よりかなり大きいこともわかりますね。この大きさを測ると地球の大きさが求められます。ただし実際、月の距離では影がすぼまっていて、月の大きさの約3倍とやや小さめになっています(本当は4倍)。

  

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 太陽の周囲を回る地球の軌道に対して、月の軌道は傾いています。また、空間的に一直線に並ばないと、日食や月食にはなりません。ただし、図の上側と下側の位置では、たとえ軌道が傾いていても空間的に一直線になりますね。つまり半年ごとに月食や日食のチャンスがあるわけです。この5月26日の皆既月食(図下)の半年後、11月19日にも月食が見られます。それもほとんど皆既と言って良いくらいの深い部分月食です。太陽の周りを月とともに半周して繰り返す月食。ぜひ両方見ておきたいですね。

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 前回、日本から見られる条件にあった皆既月食は3年前の2018年1月31日でした。写真などはこちらです。リンク先の月食一覧(1993-2030)のページでは、さらに長い期間の名古屋の過去と未来の月食をご覧いただけます。名古屋での次回の月食は2022年11月8日の皆既月食。これはかなりの好条件です。また忘れてはいけないのが2021年11月19日の「部分月食」。食分は0.98とほぼほぼ皆既月食なのです。今回が1.02ですからほんとうに少しの差ですね。ぜひ見比べてみましょう!

 

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 半年後のほぼ皆既月食と、その1年後のすばらしい皆既月食の予報図です。3つそれぞれに個性があって、最後が一番いい条件になるという願ってもない皆既月食あたり期間に今入っています。前回は3年前の2018年。2022年の次は2025年とやはり3年間が空きます。この大当たり期間をぜひお楽しみください。

 

● たった19分弱という短い皆既の時間が今回の皆既月食の特徴です。その短い間に市民観望会の100名ものみなさま全員に望遠鏡を覗いて体験していただくのは難しいです。また白川公園では大きく育った木々があり、公園の端っこでしか皆既月食が見られませんので、公園に集まっていただいてもかえって条件が悪くなってしまいます。皆既月食は「月」の現象ですので、見るのは簡単ですし、中継用の高感度カメラできれいに捉えられる天文現象です。そこで当日は名古屋市科学館公式YouTubeチャンネルでのライブ中継を行います。現在、工事休演中のプラネタリウムが再開したら、プラネタリウムで事前学習していただくのがオススメです。そして月食当日はお家の近くで、スマホやタブレット片手にライブ中継での解説を聞いていただきつつ、本物を眺めてみてください。皆既月食はとにかく赤くなっていく色がきれいです。これは肉眼で十二分に楽しんでいただけます。(2022年以降の皆既の時間が長い皆既月食では、以前のようなリアル観望会とライブ中継の並行開催なども検討していきます)

 

 また、今回の皆既月食は今年最も大きな満月での皆既月食となります。この最も大きな満月についてはこちら「月が大きくみえるわけ_2021」を御覧ください。

 

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