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記事掲載: 2014年10月17日
記事更新: 2025年03月17日
● 今回の皆既月食の食最大の時刻は55分。その直後の雲の切れ間から撮影しました。
● 今回の皆既月食のまとめです。18時16分はまだ昇ってすぐだったので黄色っぽいです。18時43分もすこしベージュっぽいですね。これらを調整して白くすることは可能ですが、ここでは自然のありのままを表現しています。
● 今回の皆既月食の映像を地球の影を基準に配置してみました。影の中央ほど光が回り込みにくいので、暗くなっていることがわかります。
● 今回の皆既月食は名古屋では3年ぶりでした。月食は特別な道具がなくても肉眼で安全に楽しめるオススメの天文現象です。さらに今回は夜更かししなくても見られる良い時間帯。お見逃しなく!
上の図の白黒版・白黒英語版です。
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印刷などにお使いください。
● 月食は月が欠けていく現象です。普段からご覧の「月」を見るわけですから、特別な道具は要りません。もしオペラグラスや双眼鏡などをお持ちでしたら、より楽しいです。東の視界が開けたところで、だんだん欠けていく様子をお楽しみください。なお、月食の進行の時刻は日本のどこでも同じです。地域によって、地平線からの高さや方角は少々違いますが、おおまかな傾向は同じです。
● 皆既月食は予備知識を得た上でご覧いただくと感動も高まります。そこでプラネタリウムでは事前の9月に取り上げました。10月のテーマは「天を測る」ですが、月食の話も少し触れます。また、9月のプラネタリウムでドーム内に再現していた「宇宙からみた月食」の動画を、このページの下部に公開しました(9/27)。
● 日食と月食は、太陽と地球と月の位置関係で起きるという意味では、よく似た天文現象です。太陽と地球の間に月が入って、月の影が地球に落ちるのが日食。月が太陽の反対側に行って、地球の影に月が入るのが月食です。
日食は影の落ちた限られた地域でしか見ることができませんが、月食は月が影に入ってしまえば、たとえ宇宙空間から見ても月食です。そこで、月食になれば月に向いた側、地球の約半分の地域で月食を楽しむことができます。今回はリンク先のページの下の方の図で世界地図に色が付いていない地域で月食を見られます。 また月食の進行は世界中全く同じタイミングです。各地で時差がありますので、日本は宵、ハワイは夜中、北米は明け方となりますが、インターネットの中継で比較してみると面白いです。
● 皆既月食の月が赤く見えるのは、地球に大気があるからです。図のように地球の大気を通り抜けた光は、やや内側に回りこみ、影の中の月を照らします。
● この光は地球大気の中を長い距離通過してから通り抜けるので、その間に波長の短い紫や藍色、青といった色の光が、途中で散乱されてしまいます。これが青空です。その結果通り抜けてくる光は赤っぽくなります。夕日や朝日が赤く見えるのも同じ理由です。また地球は丸いので地球の大気も大きく見ると凸レンズ型になります。そこで光は曲げられて影の中に向かい皆既中の月を赤く照らすのです。
● この図は地球から見た地球の影と月を表しています。地球の影に対して、月は向かって右から入って行き、左に抜けていきます。影の中に全部月が入った状態を皆既月食、部分的に入った状態を部分月食と言います。2014年の皆既月食は、このように、地球の影の上の方を月が通り抜けますので、月の下側がやや暗くなるはずです。
● 皆既中の月に行ってみましょう。月から見ると地球が太陽を隠す皆既日食になっています。地球から見ると月と太陽はほぼ同じ大きさですが、月から見ると地球は太陽に対してずっと大きく見えます。そして、地球大気を通り抜けた赤い光が月を照らしているということは、向こうから見ると地球大気が赤く見えているはずなのです。名古屋市科学館・プラネタリウムでは、まだ誰も見たことがないこの光景を可視化しました。いつか、この光景を眺められる日が来ると良いですね。この動画は9月の一般投影「皆既月食」から切り出したものです。使用条件はこのページ最下部のクリエイティブ・コモンズ表記ccbyndです。ご活用ください。
● 部分月食の時の欠け方は、普段の月のくっきりとした欠け方と違って、欠け際がぼんやりとしています。これは地球の影の外側に半影というぼんやりした影がさらに広がっていることが原因です。月食の時、月から見ると地球が太陽を隠す日食になっています。この時、太陽が地球によって全部隠れて見えている地域は真っ暗になっていますが、半分とか、少ししか隠れていない地域もありますね。そこは薄明かりが当たっていて、地球から見ると半影となるのです。また、欠け際のカーブは地球の影の形です。そこで地球の方が月よりかなり大きいこともわかりますね。この大きさを測ると地球の大きさが求められます。ただし実際、月の距離では影がすぼまっていて、月の大きさの約3倍とやや小さめになっています(本当は4倍)。
● 太陽の周囲を回る地球の軌道に対して、月の軌道は傾いています。また、空間的に一直線に並ばないと、日食や月食にはなりません。ただし、図の上側と下側の位置では、たとえ軌道が傾いていても空間的に一直線になりますね。つまり半年ごとに月食や日食のチャンスがあるわけです。
● 次回に日本から見られる皆既月食は半年後の2015年4月4日。え、すぐですね? と思われるかもしれませんが、次回はちょっと変わった月食です。皆既の時間がたったの12分。地球の影の縁ぎりぎりを通る「すれすれ皆既月食」なのです。そこで皆既月食本来の、深い赤い色は楽しめないかもしれません。その次、日本から見られる皆既月食は2018年1月31日までありません。今回、晴れて多くの方にご覧いただけることを願っています。さらに長期間の過去・未来の月食一覧はこちらです。
● 名古屋市科学館のレストランでは、皆既月食にむけて特別メニューを史上初? の2種類用意しています。第1弾は月食ベリーソーダ。なんと月食の進行まで楽しめます。第2弾は月食スタディパンケーキ。月食時の太陽と地球と月をメニューの中で表現しました。いずれも10月8日夜(皆既月食観望会)までです。よろしければお楽しみくださいませ。写真はクリックすると大きくなります。
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