名古屋市科学館

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20180728_皆既月食

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2018年7月28日の皆既月食の様子です。今回の月食は西へ行けば行くほど、地平線から高くなり観測条件が良くなります。また名古屋は曇りで月を見ることすらできませんでした。この写真は名古屋市科学館月食観測チームの協力者の方が、晴天域を求めて北九州市に移動し撮影をされたものです。この5時10分という撮影時刻は、名古屋ではすでに月が沈んで、太陽が出ている時刻になります。


下関市付近の夜景の上に、赤い月と赤い火星が見えています。右上は望遠レンズで皆既中の赤い月をアップにしたものです。

 
● 以下は過去の情報を含みます ●

 

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2018年7月28日の未明に皆既月食がおこりました。今回は皆既中の赤い月がとても見えそうにないという残念な条件の皆既月食です。晴れていれば欠け始めは見えそうですが、月食の進行とともにどんどん低くなり、夜も明けてきて皆既月食の月が見えなくなっていきます。この現象は27日の夜が更けて28日の未明です。普通に28日の朝起きると終わっていますのでご注意ください。

 

● 月食は月が欠けていく現象です。普段からご覧の「月」を見るわけですから、特別な道具は要りません。もしオペラグラスや双眼鏡などをお持ちでしたら、よりラクにみることができます。今回の月食は西南西の視界が開けたところで、だんだん欠けていく様子はご覧いただけるでしょう。月食自体の進行の時刻は日本のどこでも同じですが、地域によって、地平線からの高さや方角は違います。今回は超低空なので地平線からの高さの違いが「見える、見えない」に関わってきます。おおまかな傾向としては、南西の地域ほど有利です。皆既食の始めの時点での月の高さは名古屋が5°、東京は2.8°、広島では8.5°、那覇では16°にもなります。

 

 

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 日食と月食は、太陽と地球と月の位置関係で起きるという意味では、よく似た天文現象です。太陽と地球の間に月が入って、月の影が地球に落ちるのが日食。月が太陽の反対側に行って、地球の影に月が入るのが月食です。

 

 今回はリンク先のページの下の方の図で世界地図に色が付いていない地域で月食を見られます。 インド洋を中心としたアフリカ、中東、インドなどの地域では、赤い火星と赤い皆既月食の共演を楽しむことができます。うらやましいです。

  

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 以前の皆既月食の写真です。皆既中はこんなふうにきれいな赤い色になります。さらに月明かりが弱くなりますから、空が暗い郊外では、あ、暗くなったなぁという感じを掴んでいただけるのが通例なのですが、今回は皆既になるころはすでに夜明けが始まっていますので、皆既月食による暗さを感じることはできません。

 

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 皆既月食の月が赤く見えるのは、地球に大気があるからです。図のように地球の大気を通り抜けた光は、やや内側に回りこみ、影の中の月を照らします。

 

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 この光は地球大気の中を長い距離通過してから通り抜けるので、その間に波長の短い紫や藍色、青といった色の光が、途中で散乱されてしまいます。これが青空です。その結果通り抜けてくる光は赤っぽくなります。夕日や朝日が赤く見えるのも同じ理由です。また地球は丸いので地球の大気も大きく見ると凸レンズ型になります。そこで光は曲げられて影の中に向かい皆既中の月を赤く照らすのです。

 

 

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 今回の月食では、欠けていく過程はご覧いただけます。その時の欠け方は、普段の月のくっきりとした欠け方と違って、欠け際がぼんやりとしています。これは地球の影の外側に半影というぼんやりした影がさらに広がっていることが原因です。月食の時、月から見ると地球が太陽を隠す日食になっています。この時、太陽が地球によって全部隠れて見えている地域は真っ暗になっていますが、半分とか、少ししか隠れていない地域もありますね。そこは薄明かりが当たっていて、地球から見ると半影となるのです。また、欠け際のカーブは地球の影の形です。そこで地球の方が月よりかなり大きいこともわかりますね。この大きさを測ると地球の大きさが求められます。ただし実際、月の距離では影がすぼまっていて、月の大きさの約3倍とやや小さめになっています(本当は4倍)。

  

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 太陽の周囲を回る地球の軌道に対して、月の軌道は傾いています。また、空間的に一直線に並ばないと、日食や月食にはなりません。ただし、図の上側と下側の位置では、たとえ軌道が傾いていても空間的に一直線になりますね。つまり半年ごとに月食や日食のチャンスがあるわけです。図下の1月31日から半年。図上の状況が巡ってきました。そして運良く日本は、その両方で月食が見られる位置(ほんのちょっとですが)にあったのです。

   

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 前回、日本から見られる条件にあった皆既月食は半年前の2018年1月31日でした。写真などはこちらです。リンク先の月食一覧(1993-2030)のページでは、さらに長い期間の名古屋の過去と未来の月食をご覧いただけます。2019年7月17日は名古屋では見えず、関西以西でほんの少し欠けるだけ。名古屋での次回の月食は2021年5月26日の皆既月食です。

 

 

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