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ペロブスカイト太陽電池ってなに?

 

<2023/7/19更新>本文中に記載の8月11日(金曜日)第43回古川為三郎サイエンス講演会「ペロブスカイト太陽電池」は、講師の都合により延期となりました。誠に申し訳ございませんが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 

みなさん、こんにちは!化学担当学芸員の山田こうすけです。

 

最近は、いろいろなモノが値上げ!値上げ!という流れですが、特に電気代の値上がりは報道でも良く取り上げられ、みなさんの周りでも電気代が上がった!という声をよく聞くのではないでしょうか?

これには様々な要因が絡んでいますが、間違いなく言えることは、このまま何もしないと未来はもっと悪くなる!ということです。「時間が、誰かが、解決してくれるわ~」という問題ではなく、「すぐに、みんなで考えて、解決していかないといけない」問題なのです。

 

とは言いつつも、何からやればいいのか?

まずは「知ること」からだと思います。知ることで考えることができ、考えることで解決策を導き出すことができます。

 

ここでみなさんに「知っていただきたいモノ」は、「ペロブスカイト太陽電池」です。

現在の主流となっている太陽電池は、シリコン系太陽電池です。多くの研究や開発、製造により発電効率の向上やコストダウンを進め、既に多くの場所に設置・稼働されていますが、重いため設置場所に制限があり、製造工程でも大電力を使うなど、これらの欠点を補った次世代の太陽電池が求められています。

そこで登場したのが、ペロブスカイト太陽電池です。

特徴の一つが「軽くて曲げられること」です。このため、ビルの壁面やガラス面、自動車の屋根など、シリコン系太陽電池が設置できない場所にも設置できます。

特徴の二つ目が「簡単に製造できること」です。印刷技術のように「塗って乾かすだけ」と非常にシンプルに製造することができます。

様々な場所で発電し、その場で電気を使える。電気の地産地消を今以上に加速させる可能性を、ペロブスカイト太陽電池は秘めています!

 

そして、このペロブスカイト太陽電池を発明したのが「宮坂 力(みやさか つとむ)」先生です。

宮坂先生は、富士フィルム株式会社の研究者を経て、桐蔭横浜大学 教授に着任します。そこで研究テーマの一つ「フィルム型色素増感太陽電池」を進めていたところ、東京工芸大学の手島健次郎先生から「私の指導している学生の小島陽広くんがペロブスカイトで色素増感太陽電池をやりたいと言っている」という相談を受け、ここから両大学の共同研究、そして、ペロブスカイト太陽電池の研究史が始まります。

ちなみに、ペロブスカイト(perovskite)という言葉は、灰チタン石という鉱物の名前です。ロシアのペロブスキ氏が発見し、名前のペロブスキに石を意味するiteをつけ、ペロブスカイトと名付けました。ただし、ペロブスカイト太陽電池はこの鉱物を使っている訳ではなく、この鉱物の結晶構造と同じ合成物を使っています。

小島氏のペロブスカイトを色素と置き換えた太陽電池の研究は、数ヶ月後すぐに結果が出ます。光を当てると、わずかに電流計が動いたのです。研究の中でも最高の瞬間ですね!

しかし同時に、実用化には程遠い変換効率や、様々な問題が浮き彫りになりました。そのため、そこから………なことがあったり、………があったのです!

 

いや、続きが聞きたいですよ!と言う声が聞こえてきますが、もちろん話します、が!それは宮坂先生ご本人から聞いてみたいとは思いませんか?

なんとこの夏!名古屋市科学館に宮坂先生をお招きします!!

2023年8月11日(金曜・祝日)当館サイエンスホールにて、宮坂先生にご登壇いただく第43回古川為三郎サイエンス講演会「ペロブスカイト太陽電池」を開催します!!

詳しくは、こちら(当館ウェブサイト)をご覧いただき、ぜひ皆様にご参加ください。

 

ペロブスカイト太陽電池は、現在も世界のあらゆる大学や研究機関、企業で発電効率の向上、材料の最適化、量産化技術の開発などが行われています。しかし、日本は開発国なのに出遅れてしまっているのが現状です。

エネルギー問題に対して、日本初の技術を日本が進化させ、日本が世界をリードしてエネルギー問題を解決し、その先頭を走る。そんな未来が来ることを願い、多くの方がペロブスカイト太陽電池の研究や開発、製造に関心を持ち、携わる人が出てきてほしいと願っています。

 

参考文献

・宮坂力(2023) 大発見の舞台裏で!ペロブスカイト太陽電池誕生秘話 さくら舎

 

学芸員 山田厚輔

 

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