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空飛ぶクルマの商用運航が実現間近!

 

みなさま、この学芸員NOWに初めて投稿させていただく藤本です。工学部出身で工学を担当させていただいています。これからよろしくお願いいたします。

 

最近は、スマホでタクシーを呼べるようになりましたが、空飛ぶクルマを呼べるようになるのはいつのことでしょうか。空飛ぶクルマは、現在世界各地で多くの会社が開発を進めています。国内のメディアで初めて「空飛ぶ車」の文字が登場したのは、1997年でした。

 

2003年には、日本航空宇宙学会誌に一人乗りの軽スポーツカーで電動モーター駆動式、地上走行は最大時速50km、空を飛ぶ時の速度は時速200km、地上では翼を折り畳み、飛ぶときは羽を開く機体に関する論文が、掲載されました。しかし、実現には至っていません。

 

2018年8月に経済産業省と国土交通省が官民の関係者が一堂に会する「空の移動革命に向けた官民協議会」が発足させ、その動きが強まりました。

 

その後、空飛ぶクルマと言えば電動で真っ直ぐに上がり真っ直ぐに降りるeVTOLと呼ばれる機体を指すようになりました。このような機体は、真っ直ぐに上がり真っ直ぐに降りることが可能なので、狭いスペースで発着できる。建物が密集し、土地代が高い都市部でも、比較的離着陸しやすい。そして空を飛ぶので、道路の渋滞とは無縁という大きな利点があります。このような機体は、現在のクルマのように道路を走行することはできません。それでも「空飛ぶクルマ」と呼ばれているのは、2003年頃の案に空港まで車輪を使って地上を走行し空港から翼を広げて空を飛ぶ「空陸両用車」が含まれていたためです。

 

2025年に開催される大阪・関西万博では4つのグループが空飛ぶクルマの運航を目指しています。

ANAとアメリカのJoby Aviation社は「Joby S-4」という機体で運航を目指しています。プロペラの向きを上昇方向から前進方向へ変える推力偏向タイプで、パイロット1人と乗客4人の5人乗りです。最高速度320km/h、航続距離最高240kmの設計です。海外の機体としては、初めて国土交通省に型式認証申請を実施しました。

JALはドイツのVolocopter社の「Volo City」という機体で運航を目指しています。プロペラの向きを変えないマルチコプターというタイプで、パイロット1人と乗客1人の2人乗りです。最高速度110km/h、航続距離35kmの設計です。この機体は、2024年にフランスのパリ、シンガポールで商用運航を予定しています。

丸紅はイギリスのVertical Aerospace社の「VX4」という機体で運航を目指しています。推力偏向タイプで、パイロット1人と乗客4人の5人乗りです。最高速度320km/h、航続距離160kmの設計です。

SkyDrive社は同社の「SD-05」という機体で運航を目指しています。マルチコプタータイプで、パイロット1人と乗客1人の2人乗りです。最高速度100km/h、最大航続距離10kmの設計です。

 

SkyDrive社の開発拠点は愛知県豊田市にあり、その空飛ぶクルマは、2023611日まで名古屋市科学館で開催中の特別展「スケスケ展 −スケると見える仕組みの世界−」のナゴヤスケスケコーナーで展示しています。展示しているのは、20208月に有人試験飛行に成功したSD-03で、内部の仕組みが分かる透視図と一緒に展示しています。SD-05の大阪・関西万博での運行計画を解説しているパネルもあります。空を飛んだSD-03の実機が展示されるのは、世界でも初めてですので、ぜひご覧ください。

 

スケスケSD-03.jpg

写真 スケスケ展で展示中の「SD-03

 

 

学芸員 藤本雅之

 

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