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ボーリングコア2023

 

こんにちは!地球担当学芸員の木田です。

  

今回は、当館理工館6階に展示しているボーリングコアのちょこっとウラ話です。

ボーリングコアとは、ひとことで言うと「地層を掘って採取した岩石」です。目的によって、陸を掘ることも、海底を掘ることもあります。

理工館6階は、地球環境や宇宙開発についての最先端の科学をテーマにしており、地球内部を研究する手法としてボーリングコアを紹介しています。このボーリングコアの展示コーナーは、実は毎年変えている部分があるのです。それがこちら!

 

コア全体.JPG

写真1:「地下から地球を解き明かす ーボーリングコアー」内「ボーリングコア試料」

 

これは、実際に研究に使用されるボーリングコア試料です。ケースの中は、大切なコア試料の保管のため、温度と湿度が管理されています。高知コアセンターのご協力のもと、学芸員がそのときにみなさんに見ていただきたいコアを選んで、およそ1年に1度展示の入れ替えを行っています。

 

今年のコア試料のテーマは、ずばり「気候変動」です!

 

まずはケースに向かって奥のコアの紹介です。

 

IRDコア.jpg

写真2:統合国際深海掘削計画(IODP)第323次航海(2009年) Exp.323-U1339D-21H

 

こちらは日本の北東、ベーリング海を掘削したコアで、北太平洋域の古環境復元の研究に用いられています。注目ポイントは向かって右の端の方に含まれているIRDと呼ばれる礫(れき)です!IRDは「氷山や海氷などにより運ばれた粗粒砕屑物(そりゅうさいせつぶつ)が氷の融解によって供給源地から離れた地域に供給されたもの」、つまりもともとあった場所から氷山や海氷によって運ばれて、氷が溶けたところの海底に堆積した堆積物です。IRDが見つかるということは、氷山や海氷がその場所まで溶けずに移動してきたことを示しており、当時どこの海域まで氷に覆われていたのかを知ることができます。この範囲が広ければ寒冷、狭ければ温暖な気候と言えるのです。コアに含まれるちいさな石ころが、昔の環境を知る手がかりになっているのですね。

 

次に、ケースの手前にあるコアの紹介です。

 

ベンガルコア.jpg

写真3:国際深海科学掘削計画(IODP)第354次航海(2017年) Exp.354-U1453A-23F

 

こちらはインド洋のベンガル湾海底にある世界最大の海底扇状地、ベンガルファンを掘削したコアで、ヒマラヤ山脈の形成史についての研究に用いられています。注目ポイントはなんといってもきれいなしましま!濃いグレーの堆積物(①)と、白っぽい堆積物(②)、組成の異なる砂や泥が交互に積もっています。この白っぽい堆積物は、洪水によって流れ込んできたものです。陸で雨がたくさん降って洪水となると、その流れは川から海へ、さらに浅い海から深海へと堆積物を運びます。そのため、深海の海底を掘削したコアから陸を削った堆積物が見つかるのです。ちなみにこの洪水で流れ込んでくる堆積物は、どこから来たものかわかりますか?答えは、ヒマラヤ山脈から来たもの。どのような鉱物が含まれているかを分析すると、ヒマラヤ山脈のどのあたりから運ばれてきたのかまでわかってしまうんです。海底に、ヒマラヤ山脈を大昔に削った砂が積もっているだなんて、なんだかロマンがありますね!

 

このように、ボーリングコア試料には地球の歴史がたくさん詰まっています。たった1m2mのコアに、何万年もの地球の歴史が刻まれていると思うと、ドキドキが止まらないのは私だけでしょうか?

もっとボーリングコアやその研究について詳しく知りたい!と思った方は、当館HPの展示ガイド「地下から地球を解き明かす ーボーリングコアー」も参考にご覧ください。今回ご紹介したコアの展示期間は、20243月頃までの予定ですので、展示期間のうちにぜひ見に来てくださいね!

 

P.S.

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「海と地球の情報サイト JAMSTEC BASE」内にて、「展示協力した主な博物館・科学館・水族館情報」として名古屋市科学館が紹介されています。こちらもチェックしてね!!!

 

 

学芸員 木田梨沙子

 

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