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カオリン 〜愛知県「県の石」シリーズ〜 (写真更新!)

 

こんにちは、学芸員のあけだです。

 

愛知県の「県の石」紹介、第2回目を飾るのは愛知県の鉱物、カオリンです。

この鉱物は、愛知県瀬戸市周辺の地盤を形成する瀬戸陶土層(約700万年〜200万年前の間に形成)から豊富に産出します。可愛らしい名前ですよね。実は、瀬戸市で生産される陶磁器「瀬戸焼」の地盤を長年支えている、すごい鉱物なのです。

 

みなさんは、鉱物と聞いてどのようなものを思い浮かべますか?ひょっとすると、水晶のように透き通っていたり、ダイヤのようにキラキラしていたりとキレイな印象を受ける方も多いのではないでしょうか。それを踏まえてカオリン(写真1)を見てみましょう。

 

学芸員now_カオリン_図1.jpg

写真1 カオリン

 

いかがでしょうか?みなさんがイメージしていたであろう「鉱物」とは随分印象が違うと思います。

カオリンは、水と混ぜると柔らかくなり、こねて好きな形にすることができるようになります。そうなんです、実はカオリンは鉱物の中でも粘土質の鉱物、粘土鉱物なのです。

陶磁器は粘土を練り固めたものを焼いて作ります。そのため、このような粘土鉱物が豊富に産出することが、瀬戸市において陶磁器産業が発展する源となっています。

 

また、瀬戸市から産出するカオリンは、花崗岩(かこうがん)と呼ばれる岩石が長い時間の中で砕かれ、水に流され、細かくなったものが変質してできます。このとき、鉄分や有機物が水によってほとんど流されてしまうので、瀬戸市のカオリンには不純物、特に鉄分がほとんど含まれていません。このようなカオリンで陶磁器を作ると、白く美しい素地になります。

 

陶磁器の素地が白いと、様々な色で絵を施すことが可能になります。そのため瀬戸焼では、鳥や花などの繊細な自然画が、藍色を中心とした色彩で豊かに描かれる陶磁器が作られるようになりました。この陶磁器は、瀬戸染付焼と呼ばれ、伝統工芸品として登録されています。このような伝統工芸、およびその技術が発展した背景には、不純物の少ないカオリンが瀬戸市に分布していたことがあるのです。

 

染付山水図大花瓶 愛知県陶磁美術館.jpeg

染付山水図大花瓶 瀬戸 加藤民吉(伝) 江戸時代後期(19世紀) 愛知県陶磁美術館蔵(川崎音三氏寄贈)
写真提供:愛知県陶磁美術館

 

当館生命館2F「発見処」には、瀬戸市のカオリンが展示されています。実際に観察していただき、瀬戸焼を支えるカオリンの白さを実感してみてくださいね!

 

参考文献

https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/museum/m/webmuse/clay01.html

https://sixancientkilns.jp/seto/

https://www.pref.aichi.jp/sangyoshinko/densan/103.html

日本原子力研究開発機構(2016)平成 28 年度 地層処分技術調査等事業 地質環境長期安定性評価確証技術開発報告書. 日本原子力研究開発機構, 230p.

葉田野 希,吉田孝期,笹尾英嗣(2021)中新統~更新統瀬戸層群の陸成層と陶土.地質学雑誌,127345–362

 

 

学芸員 明田

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