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松脂岩 〜愛知県「県の石」シリーズ〜

 

こんにちは!地球担当学芸員の木田です。

 

 

みなさんは、それぞれの都道府県に「県の石」なるものが選定されていることをご存知ですか?花や樹木、鳥については知っていても、石については知らない、という方も多いのではないでしょうか。

 

2016年5月10日、日本地質学会は、各都道府県に特徴的に産出する、あるいは発見された岩石・鉱物・化石を「県の石」として選定しました。5月10日といえば、地質の日!さすが日本地質学会ですね。ちなみに、愛知県の石として選定されたのはこちら。

 

  愛知県「県の石」

   岩石:松脂岩(しょうしがん)

   鉱物:カオリン

   化石:師崎層群の中期中新世海生化石群

 

現在、名古屋市科学館の生命館2階・発見処では、この愛知県の石を展示しています。そして、この学芸員NOWの中では、今回から全3回、愛知県の岩石、鉱物、化石についてそれぞれ紹介していきます。第1回は、松脂岩です。

 

 

愛知県の岩石:松脂岩【pitchstone

主な産出地:愛知県新城市鳳来寺山

主な特徴:ガラス質、樹脂状光沢

 

写真1_松脂岩.JPG

写真1 松脂岩

 

写真2_鏡岩.jpg

写真2 鏡岩

 

愛知県の岩石に選定された松脂岩(写真1)。こちらは、新城市鳳来寺山の鏡岩という岩壁(写真2)で見ることができます。鏡岩の本体は主に松脂岩からできており、国の名勝天然記念物に指定、さらには日本の地質100選にも選定されているんですよ。

 

では、岩石としての特徴を見てみましょう。

松脂岩……松脂……まつやに………。

この岩石は、その名の通り、松やにのような樹脂に似た光沢をもちます。「pitch」には松やにという意味があり、ピッチストーンという英名も見た目からついたものです。岩石としては流紋岩質な火山岩で、いわゆる火山ガラスと呼ばれるもの。黒曜石の仲間ですが、松脂岩の方が水分を多く含んでいます。

 

なんだか難しいですね。

ところで、みなさんは岩石の種類をどうやって覚えていますか?

 

そもそも、マグマが固まってできる岩石である火成岩には大きく分けて2種類あります。

地下深くでゆっくり冷えて固まった深成岩と、地表近くで急速に冷えて固まった火山岩です。

深成岩は、マグマがゆっくり冷えて固まるため、結晶が大きく成長します。それに対して火山岩は、マグマが急速に冷えて固まるため、結晶はできますが大きくはありません。結晶が成長できないくらいとても急速にマグマが固まると、ガラス質な岩石、火山ガラスができることもあります。

そして、それぞれの岩石のマグマの組成によって、さらに以下のような複数の種類に分けられます。

 

表1.png

 

私は中学生のころ、この岩石の種類をこう覚えました。

 

『新幹線は、刈り上げ』

 

『しん(深成岩)か(花崗岩)んせん(閃緑岩)は(斑れい岩)、か(火山岩)り(流紋岩)あ(安山岩)げ(玄武岩)』

 

です。覚えやすいでしょう?

 

さあ、岩石の種類が分かったところで、もう一度松脂岩について見てみます。拡大!

 

写真3_松脂岩アップ.jpg

写真3  松脂岩(拡大)

 

そうすると、松脂岩には大きい結晶は確認できません。それどころか、結晶らしきものが見えませんね。

つまり、松脂岩はマグマが地表近くで急速に固まってできた岩石である、しかも結晶が見えない火山ガラスなので、めちゃくちゃ早くマグマが固まったのだ!ということが分かります。

しかし、どのように固まったら、あの樹脂のような光沢ができるのか、詳しい成因はまだわかっていません。そのため、たくさんの研究者たちが今も研究を続けているんですよ。

 

ね、石について考えるのが楽しくなってきたでしょう?

 

 

石との出会いは一期一会です。気になる石に出会ったら、その石がどんな人生ならぬ石生を過ごしてきたのか、考えてみてください。

これを読んで松脂岩が気になったみなさんも、ぜひ実際に科学館や新城市鳳来寺山に行ってあなた自身の目で観察してみてくださいね!

 

 

 

参考文献:

日本地質学会 - 「県の石」発表

http://www.geosociety.jp/name/content0121.html

愛知県東三河総局新城設楽振興事務所 - 新城設楽の地形・地質

https://www.pref.aichi.jp/shinshiroshitara/feature/geo/data/28_landform.html

  

 

学芸員 木田

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