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オパールで固められた地層

 

あけましておめでとうございます。

石好き学芸員、改めまして、アングラキュレーターの西本です。

 

前回は、長良川で見つけた石の話をしました。まだ見ていない方は、こちらをチェック!

学芸員NOW「川原の小石で新発見」

今回は木曽川で見つけた石のお話です。

岐阜県美濃加茂市の木曽川に架かる橋の下で、オパールで固められた地層を見つけたというお話です。

 

もう5年くらい前のことです。

研究仲間たちと美濃加茂市の橋の下で地層を観察していましたら、まるでヘビの化石かのように、うねうねと長細く脈状に出っ張っている部分があったのです。それは黒っぽくてとても硬く、ハンマーで叩くと火花が飛び散るほどでした。

 

ガラスのように貝殻状に割れる黒曜石に見える部分もあったので、最初は、マグマが入り込んで固まったのではないかと思いました。しかし、地質調査と化学分析を実施したところ、オパールであることがわかりました。

 

オパールといえば、宝石にされることもある乳白色の鉱物。温泉(高温の地下水)に溶けているシリカ分(SiO2=ガラスの主成分)が沈殿してできます。ですから、地下の割れ目に沿って上昇してきた温泉が、割れ目の周囲の地層に浸透し、オパールを沈殿させることで地層を脈状に固めてしまったと考えられます。

不純物を伴いながら、細かい火山灰の粒の隙間を埋めるように沈殿しているため、黒っぽくなっているのでした。

 

このあたりの地層は、およそ2000万年前の火山灰などが川に積もってできたもので、瑞浪層群中村層と呼ばれています。植物の葉の化石がたくさん出てくるだけでなく、立ち枯れした木の化石も見つかっており「化石林」と呼ばれています。

これらのことから、火山の近くにある森の中を川が流れる環境だったことがわかります。

 

つまり、大昔の森の中で温泉が湧き出していた跡が、この黒っぽいオパールの脈として残ったということになります。

橋の下にある石にも、地球の営みが記録されているのです。

 

研究のために採取したこのオパール(未加工試料、スライス試料、薄片プレパラード)を、生命館2階発見処に展示しました。ぜひご覧ください!

 

IMGP3164.JPG

写真1:木曽川に露出するオパールで固められた地層(出っぱっている部分)

 

スライス試料.jpg

写真2:割れ目の周囲がオパールによって固められた部分(黒っぽい部分)のスライス試料

 

薄片.jpg

写真3:オパールで固められた地層の薄片(プレパラート、写真横=3cm)

 

※展示協力=愛知大学 古川邦之教授

 

文献:

古川邦之, 西本昌司, 金丸龍夫, 和田穣隆, 新正裕尚 (2020) 瑞浪層群中村層における脈状岩石の形成過程. 地質学雑誌 vol.126, no.12, pp.697-712.  doi:10.5575/geosoc.2020.0039.

 

 

学芸員 西本昌司

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