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小牧隕石

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小牧隕石最大破片(530g)
手前の平らな部分は研究用切断面です。てかった感じに見える粒が鉄ニッケル合金。上を覆う黒い部分は溶融被殻です。

隕石の落下と展示

IMG_3767.jpg●2018年9月26日(水)22時30分頃、愛知県小牧市の民家に隕石が落下しました。雨の中、大きな音がして翌朝調べてみると、民家Aの屋根にえぐれた跡があり、庭とテラスに黒い破片(中、小)が落ちていました。隣の民家Bのカーポートの屋根には穴が開き、とめてあった車の屋根やカーポートの梁に傷(後日の調査で発見)がありました。そして民家Bの玄関に黒い石(大)が発見されました。

 

 

PC282396_m.jpeg●民家Bで見つかった最も大きい破片(大)は落下時点で550g(105x85x45mm)ありました。研究および隕石の登録用に20gを切断した後、所有者のご厚意により名古屋市科学館で常設展示できることになりました。ですので現在は530gになります。2番目の大きさの破片(中)は81gあり、所有者のご厚意により国立科学博物館での常設展示になりました。3番目の破片(小)は23g。それ以外の多くの欠片も加えて全体で650g程度だったと推定されます。

 上の写真は3つの主要な破片を合わせてみた時の写真です(撮影:国立科学博物館)。

 

●名古屋市科学館では4月6日より、小牧隕石の破片(大)、民家Aのえぐれた屋根、民家Bの割れたカーポート、そしてその経緯を示す模型を製作し展示しています。また欠片から岩石薄片を製作し(協力:名古屋大学博物館)偏光顕微鏡での映像を展示しています。

 

マスコミのみなさまへ 

この件についてのお問い合わせは、名古屋市科学館・学芸課天文係までお願いします。
ご迷惑になりますので、落下したお家を探して突然訪問されたりしないようお願いします。

 

隕石の確認 

●残念ながら、落下当日の東海地方は雨で、全国にある火球の監視カメラにも写っておらず、落下の目撃者もありませんでした。つまり宇宙空間での軌道を推測するすべがありませんでした(情報:日本火球ネットワーク)。

 

Komakiガンマ線プロット.jpg●隕石は宇宙空間にある間に宇宙線が当たり、地上ではできない宇宙線生成核種が作られ、それらを調べることでさまざまな情報が得られます。生成される核種には安定な核種と不安定な放射性核種があります。放射性核種は時間の経過とともに一定の割合で崩壊しますが、宇宙空間では次々宇宙線が当たって生成されるので、一定量存在します。一方、地上では地球の大気により宇宙線は遮断されているので生成されません。そこで放射性核種は一定の割合で壊れていき、やがてなくなります。そこで、この核種が検出されれば、その物体が最近まで宇宙空間にあったことの証拠になります。国立科学博物館の分析(左図 提供:国立科学博物館)により、宇宙空間で作られる放射性核種のアルミニウム26とナトリウム22由来のガンマ線が検出され、最近落下した隕石であることが確認されました。このガンマ線は大変弱く、専用の装置内で24時間観測してやっと検出できる程度のもので、人体への影響はありません。

 

資料:国立科学博物館プレスリリース 新しい隕石(仮称 小牧隕石)の落下を確認しました

 

●日本国内での隕石落下は2003年の広島隕石以来15年ぶりです。また2018年2月に登録された長良隕石に続いて国内で52番目に確認された隕石となりました。

 

資料;国立科学博物館webページ 日本の隕石リスト

 

小牧隕石の特徴

●隕石はその岩石的な特徴から、鉄隕石、石鉄隕石、石質隕石に分類されます。今回のものは石質隕石になります。石質隕石には、いったんある程度の大きさの天体を形成した後、破片になったエコンドライトと、太陽系ができた46億年前からの球状の組織(コンドルール)を保持しているコンドライトがあります。小牧隕石は「L6普通コンドライト」に分類されました。

 

●この隕石に含まれるアルゴンガスの分析から44±2億年(形成年代)前に形成され、ネオンガスの分析から2510±60万年(宇宙線照射年代)前に、元の小惑星から割れて小さな破片となったことが示されました。多くのL型コンドライトが2000-3000万年の宇宙線照射年代を示すことから、Lコンドライトの元の天体(小惑星)が、小惑星同士の衝突によって多数の破片となり、そのなかのいくつかが時々地球に落下していると考えられています。

 

資料:国立科学博物館プレスリリース

愛知県小牧市に落下した隕石の分類を確定し「小牧隕石」 として国際隕石学会に登録されました

国際隕石学会データベースでの小牧隕石

 

 

小牧隕石の観察

IMG_0520_m.jpeg●隕石は黒い薄い殻のようなものに包まれています。これは溶融被殻と言って、宇宙空間から大気中に飛び込んで急ブレーキがかかった際、非常に高温になって表面が融けたものです。流れ星が光るのもこの空力加熱によるものです。これは空気中を超高速で移動する物体の前面で、空気が圧縮されて大変な高温になる現象です(摩擦ではありません)。

 

●小牧隕石ではこの空力加熱で融けた側(たぶんこちらを下にして大気に突入した)が丸くなっています。そこで展示ではその面を下側にし、下から覗き込んだり、鏡で見ることができるようにしています。

 

IMG_0505_m.jpeg●隕石が大気に突入する速度は一般に秒速数10kmにもなります。その超高速で、上空100kmほどで大気が濃くなるところに突入すると前述の空力加熱で一気に融けて小さくなります。小牧隕石落下の夜がもし晴れていたら、中部から関西の各地でまばゆい火球として見えたでしょう。その後、突入してきた速度はほとんど失われ、上空から自由落下してきます。このときの向きは先程の溶融の向きとは関係ありません。そして小牧隕石では展示上面が、屋根にあたり割れた結果、溶融被殻の中の隕石そのものを見ることができます。また研究用にカットした断面も真横に向けますので、組織を観察していただくことができます。

 

偏光顕微鏡での観察

●岩石を薄く削って光が通るようにし、顕微鏡で鉱物やの性状を観察することができます。鉱物の結晶構造などを観察するために偏光板を用いて観察ができるようにしたものを偏光顕微鏡といいます。

 

●小牧隕石には太陽系の形成時に宇宙空間でできたコンドルール(球粒)と呼ばれる丸い小さな粒(一般に0.1mm-10mm程度)が含まれています。コンドルール自体は主に輝石やかんらん石からできています。またコンドルールではないかんらん石(偏光板を入れてみると色鮮やかに見えている粒)や鉄ニッケル合金(不透明)の粒も多く見られます。

 

●小牧隕石の偏光顕微鏡による映像(1分間)です。協力:名古屋大学博物館

 

 


参考:隕石とは

●宇宙空間からの自然起源の固形物が、地表や他の惑星、月などの表面に落下したもの。太陽系の惑星や衛星の表面に見られるクレーターは、そのほとんどが隕石の落下によって形成されている。地球に落下し回収されたものは、月や小惑星から持ち帰った僅かな石以外でわれわれが直接手にすることのできる、唯一の太陽系の始原につながる物質である。小惑星帯を起源とする隕石は46億年昔の年代を示し、太陽系や地球の生成年代の推定に使われている。地上で手に入る隕石は、その絶対量が少なく貴重な研究資料である。1969年以降には、南極に隕石の氷河による集積地が発見され、日本の極地研究所とアメリカが大量の隕石を収集・保管し、研究の対象となっている。

 
●地球に落ちてくる大部分の隕石の起源は、小惑星帯にある。これは、落下を観測された複数の隕石の軌道から割り出されたものである。しかしごくまれに、月起源や火星起源(SNC 隕石)と考えられる隕石がある。隕石は、落下が見届けられその落下地点から見つかる落下隕石と、落下は見られていないが、後に見つかる発見隕石に分けられる。また、その成分から大きく、鉄隕石(iron meteorite)、石鉄隕石(stony-iron meteorite)、石質隕石(stony meteorite)に分類される。さらに、石質隕石はコンドライトとエコンドライトに分類される。鉄隕石(隕鉄などとも呼ばれる)は、ほとんどが鉄‐ニッケル合金で構成されている。石質隕石は珪酸塩、いわゆる岩石質であり、石鉄隕石はそれらが混じっている。コンドライトは、球状の組織コンドルールが見出だせるより始源的な石質隕石、エコンドライトはコンドルールが見られない分化した石質隕石である。

 
●一般に、鉄隕石、石鉄隕石、石質隕石(エコンドライトの一部)にはいくつかの母天体があり、母天体は核、マントル、地核を形成したと考えられている。その母天体は現在までにばらばらになってしまい、その中心部を構成していたかけらが鉄隕石、そのやや外側が石鉄隕石、そして上層が石質隕石(エコンドライトの一部)だと考えられている。また、エコンドライトにはコンドライト以外の石質隕石が分類されるため、他の起源を持つものもある。コンドライトはそのような母天体にならなかった小天体が起源と考えられ、太陽系の初期条件を決める上で重要な資料である。これらの隕石はさらに化学的、岩石学的にこまかく分類されている。


●隕石の外観は、大気との空力加熱よる高温で表面が溶け、黒いガラス状になっている場合が多い。また、鉄隕石の場合比重が通常の岩石の倍あるため、ずっしり重い。鉄鉱石のスラグがよく各地の科学館やプラネタリウムに「鉄隕石か?」と持ち込まれるが、ニッケル含有量の少なさや急冷組織が見られることから見分けることが可能である。

 
DSCN0462.JPG●隕石は通常、その落下地点の名前がつけられる。最も大きな隕石はナミビアにあるホバ(Hoba)隕石で、重量は約60トンで、1920年に発見されている。重すぎるのでそのまま現地に置かれている。2位は、グリーンランドで見つかったケープヨーク(Cape York)隕石で、そのかけらのうち最も大きな31トンのアーニートゥ隕石(Ahnighito)はニューヨーク自然史博物館にある。3位は、ロシア・中国・モンゴル国境付近で発見されたアレタイ(Aletai)隕石で、その中でもっとも大きな28トンのアルマンティ(Armanty)隕石が中国領内で公開されている。2000年に名古屋市科学館で行った特別展「宇宙展2000」では、現地からこの隕石を名古屋市科学館に移送して展示を行った。

  

●石質隕石は鉄隕石よりもろいため、最大でも吉林隕石の総重量4トン、最大破片1.8トンである。そのもろさゆえに大量の隕石が降り注ぐ隕石シャワーになる場合が他の隕石種より多く、1969年2月8日にメキシコのアエンデに降り注いだ隕石シャワーは、50km×12kmの範囲に何千もの隕石が落下し、そのうち約2トンが回収されている。鉄隕石は特に有史時代以前から特別な石として、また鉄鉱石として知られていた。日本で一番古い隕石は、福岡県直方市の直方隕石が世界最古の落下隕石となる(西暦861年)。2番目は、名古屋市南区の南野隕石(西暦1632年)である。


隕石関連リンク集 

国立科学博物館  宇宙の質問箱 隕石は流れ星が落ちたものですか?

         隕石の分類 日本の隕石リスト

         隕石が語る太陽系の始まり 熱かった太陽系初期〜隕石に残る証拠〜

         質量分析計で隕石中の元素の同位体を測る

         他にも上の解説文中に小牧隕石関連のリンクがあります。

 

国立極地研究所  南極隕石ラボラトリー 

         愛知県小牧市に落下した隕石の分類を確定
         「小牧隕石」として国際隕石学会に登録されました

 

九州大学     小牧隕石」国際隕石学会に登録!

 

日本天文学会 天文学辞典 隕石

 

長良隕石関係(小牧隕石とはまったく無縁です)

         岐阜市長良で発見された鉄隕石、「長良隕石」と命名

         岐阜市で2個目の鉄隕石見つかる 長良隕石と同時落下したものか

 

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