名古屋市科学館

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パンスターズ彗星

 パンスターズ彗星が西の低空で観測可能な位置にやってきています。ただし日が沈んですぐ、まだ明るいうちに沈んでしまうので、観測条件はもともとよくありません。彗星の明るさは予測がつきにくいので、望外にどんと明るくなってくれたら、という期待がありましたが、いまのところ、想定の範囲内です。すなわち、普段から望遠鏡や双眼鏡で星雲や星団を見慣れているという方なら見られるかも。普段から天体写真を撮っている方なら狙って写るかも。といったところです。このような方たちはすでに天文雑誌やwebなどで情報を掴んで見ておられるでしょうから、ここでは今まで見たことがないという方向けに解説を進めます。 

見え方は?

 3月10日、11日と晴天が続きました。今回の彗星は夕焼けの明るさが残っている時間帯に沈んでしまうため、山奥に行ったからといって劇的に見え方が変わるわけではありません。名古屋市中心部からは、10日は写真には写っていたけれども、7倍50mmの天体用双眼鏡でも見えない。11日は写真にも写り、双眼鏡では、検出に慣れたスタッフがなんとか見えたという程度の明るさでした。肉眼ではいずれも無理でした。標高の高い(空気の澄んだ)地域では肉眼で見えた方もあるようですが、慣れた方が場所をちゃんと双眼鏡などで確認した後、肉眼でも見えたということです。

 3月12日は前の2日に比べて晴れてはいましたが、かすみがありました。写真には写り、口径5cmの小型望遠鏡ではかろうじて捉えることができましたが、双眼鏡と肉眼では見えませんでした。

 3月13日の名古屋周辺は曇りor雨ですので、彗星も他の星も見えません。明日以降の好天気を期待しましょう。 

 3月14日の名古屋周辺は雲が多かったですが、双眼鏡と写真で確認できました。以前に比べれば地平高度が少し上がった分、見やすくはなっていますが、肉眼では見えないことと、星雲星団の観望に慣れている方でしか双眼鏡でも難しいという状況に変わりはありません。

 3月15日の名古屋周辺は低空はやや霞んでいましたね。昨日より双眼鏡での見え具合は少し悪かったです。 肉眼で見えないのは同じです。尾はほぼ真上方向でした。

 3月16日は、霞が多くほとんど曇りに近い状態で、見えませんでした。3月17日も曇ってしまいました。

 

 ご質問の電話も多数いただいております。中には尾が2本見えるから彗星という理解をされている方がありました。これはイオンの尾とダストの尾という解説を聞いて、尾が2本なら彗星と思われるようです。今回のパンスターズ彗星では彗星そのものがやっと見えるかどうかというレベルで、二種類の尾を見分けることなどできません。下に記載しました飛行機雲のほうがエンジンの数で2本に見えることが多く、結果として誤認を増やしているようです。そこでこのページではイオンの尾とダストの尾についての解説は割愛しておきます。

 

パンスターズ彗星の写真

 ここでは、あえて、できるだけありのままの姿をあらわすように撮ったパンスターズ彗星の映像をご覧いただきます。ここまで見えにくいんだということを知っていただいた上で、もし見えたらうれしいですよね。そして何としても肉眼で見えるくらいに明るくなることを期待したかったです。今後は遠くなっていくので、だんだん暗くなります。

IMG_8289_m.jpg

 上の写真の中にパンスターズ彗星が写っています。これでも実際の空よりぐんと見つけやすいくらいです。写真の左右方向は中央。地平からの高度は3.5°、空の色がオレンジから淡いブルーに変わっていくあたりにいます。クリックすると写真は大きくなりますから、拡大して探してみて下さい。写真中央に左上方向にかすかに尾を引いたぼんやりした姿のものがもし見えていたら、それがパンスターズ彗星です。
2013 3 11 18:41  Canon EOS5DMark2  200mmF2.8 2.5秒 IOS800 6°×8°にトリミング

 

3.jpg

 ちなみに地平高度3°とはこの図のように、腕をいっぱいに伸ばした時の指2本分の幅です。これだけの低空まで西の方角が開けた所をさがすのもなかなか難しいです。

 
 

飛行機雲がまぎらわしい

P1020663_m.jpg

 この写真は日の入り前ですが、まぎらわしいものが写っています。写真左上に尾を引いたようなものが写っていませんか? 写真をクリックして拡大してご覧ください。これは飛行機雲です。太陽からの光を受けて白くきれいに見えます。さらにきれいに晴れた時には、飛行機雲はすぐ消えます。その結果、短い尾のように見えるのです。飛行機雲はみるみるうちに動いていくことや、多くの場合2本筋が出ることで判別出来ます。さらに飛行機雲は太陽が出ているうちから多く見えます。彗星がもし見えたとしてもそれは日が沈んでからです。

 

チャレンジするなら

panstarrs_nagoya.jpg

 図は日の入り45分「後」の西の空でのパンスターズ彗星の位置を表したものです。もし日が沈む前に見えたらそれは飛行機雲です。14日以降のオススメの時刻(日の入り45分後)は、14日で18時45分頃 20日で18時50分頃です。18時半くらいから探し始めると、周囲の明るさに目も慣れてきて良いかと思います。

 今回のパンスターズ彗星にもしチャレンジされるのなら、思いっきり西が開けたところを探し、双眼鏡を使ってください。まずは遠くのものでピントをしっかり合わせておいて、目的の方向を探します。低空まですっきり晴れている日でないと見えません。明るさは月末に向かってだんだん暗くなります。今週(3/17まで)のうちにスッキリ晴れた日があったら、ちょっと気にしてみてください。

 彗星の位置は正確に計算できますが、明るさは偶然がともなうので正確な予報はできません。というのも彗星の核は氷と砂粒がゆるく集まったもので、よく汚れた雪だるまに例えられます。それが太陽に近づくとその熱で融けて蒸発します。するとぼんやりと広がった姿に見え、時には尾もひくのです。その雪だるまの融けぐあいの変化が彗星の明るさの変化になるわけで、本質的に予想がしにくいものなのです。反対に予想を越えて明るくなるということもあるわけですから楽しみなのです。

 

パンスターズ彗星をおいしく楽しむのでしたら 

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 パンスターズ彗星の観測好機、3月13日から17日(15日は休館日です)。名古屋市科学館のレストランに特別メニューが登場します。名付けて「パンスターズ・パンケーキ」。え? なぜパンスターズ? それは、「パン」ケーキが星形「スター」で2枚「複数形」…(^_^;)

 本物のほうが、お天気が悪かったり、明るくならなくってうまく見えなくても、みなさんに何らかの形でパンスターズ彗星の来訪を楽しんでいただけたらという気持ちです。(^_^)/

 期間が短いですが、これは「彗星の如く…」ということで(^_^;)。

★彡3月17日で好評のうちに終了となりました。またこういった企画を考えていきますのでお楽しみに(^^)/

 

 

 なお、パンスターズ彗星そのものについては、下記のページが詳しいです。
 国立天文台 パンスターズ彗星

 

 11月から12月にかけては、パンスターズ彗星よりぐんと明るくなることが期待されているアイソン彗星がやってきます。これも上記のように予想がしにくいことは同じなのですが、過去の彗星とくらべて明るくなりやすい軌道を持っているのが期待です。日にちが近くなったら情報を公開いたします。

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