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中秋の名月_2014

IMGP2172_m.JPG 今年、2014年の中秋の名月は、9月8日(月)でした。中秋の名月は旧暦の8月(中秋)の15日の月(名月)を愛でる昔からの行事です。当日は月齢13.5の月が、17時15分に昇ってきました(名古屋)。こういった時刻は理想的な地平線から昇ってくる計算上の時刻。遠くに山があるだけで、見え始める時刻は遅くなります。さらに一見晴れているように見えても、地平線付近は霞んでいて、少し上に昇らないと見えてこない時も多いですから、すこし気長に待つのが得策。当日、名古屋近辺では東に少々雲があり、高くなってから、すっきりとした名月になりました。

 

2014年9月8日 21:24 Pentax Q  ISO 400  83mm相当 F4.5 1/1600秒露出 ストロボ使用 からトリミング 

 

          ● 以下、過去の情報・表現を含みます 

 


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上の表はここ30年の中秋の名月の一覧です。毎年日付がばらばらなのは、旧暦の8月15日にお月見を行うからです。旧暦と新暦はもともと出発点=正月が1ヶ月ずれており、さらに毎年11日ほどずれます(1年より短い)。そこで、19年に7回ほどのペースで一年を13ヶ月にして調整します。そこで、上の表のようにばらばらなのです。

そして、今年の中秋の名月、9月8日は早くありませんか? 上の表のこの30年で、今年が最も早い名月の日なのです。さらにもっと長い期間(1950〜2070)から、中秋の名月が早い年を調べてみると、下の表になります。

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中秋の名月が9月8日以前になるのは、なんと、120年で5回という珍しいことだったのです。
旧暦(天保暦)の理論上、最も早い中秋の名月は現在の暦で9月7日となります。これは2052年まで現れません。天保暦では秋分の含まれる月が8月なので、最も早い旧暦8月15日は、秋分が旧暦8月末日の30日となる月に現れます。該当期間の新暦の秋分の日は9/22-24で変化しますので、22-15=新暦9月7日が理論上最も早い名月です。また一番遅い中秋の名月は同様の理由で10月8日となりますが、上記の120年間に一日もありません。最遅は1987年の10月7日でした。関連情報は国立天文台の暦wiki「中秋の名月」にあります。

  

前回の9月8日名月は、38年前の1976年。王貞治選手が715本目のホームランを打ってベーブ・ルースを抜いたり、およげ!たいやきくんが大ヒットした年です。ロッキード事件もありましたね。

 次回は2033年。あと19年後です。この年は旧暦(天保暦)が1844年=天保元年に使用されはじめて以来(公式には1872年=明治5年で終了)、閏月の入れ方が破綻する年で、厳密には中秋の名月を決められないという特殊な年です。複数ある候補の早い方をとって9月8日を表に採用しました。このあたりは国立天文台の「旧暦2033年問題」が詳しいです。

 

というわけで、2014年の中秋の名月は、え? もうお月見なの? という感じでやってきます。今宵見えている月が満ちたらもう名月。だからといって、スーパー・アーリー・ハーベスト・ムーンなんて言わないでくださいね。また、昇ってきたばかりの月は大きく見えます 。これはスーパームーンとして言われる月の距離の変化よりも、私達の心のはたらきによるものが大部分です。詳しくはこちら「月が大きく見えるわけ_2014」をお読みください。

本家中国では、旧暦8月15日だけがお月見でしたが、日本ではもう一巡りちょっと前の旧暦9月13日にもお月見をする風習が付け加わりました。「後の月」とか「十三夜」と言います。2014年の後の月は10月6日。ちょっと欠けた月を愛でるという風流なお月見です。お供えするもの=収穫時期で、中秋の名月を芋名月、後の月を栗名月とか豆名月と呼ぶ場合もあります。

 

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なお、中秋の名月は旧暦の8月15日の月という決め事なので、月と地球と太陽が一直線にならぶ実際の満月と最大2日ずれる場合があります(表中黄色文字の年)。今年の場合は、翌日9月9日の10時38分が天文学上の満月となります。ただしほとんど丸いことには変わりありませんし、中秋の名月は旧暦の8月15日という決め事ですから、もともと少々ずれても気にしてなかったということなのです。

 このずれ・遅れの理由の一つ目は、月の軌道が楕円で、図の右側の図の一番右の新月の月が、満月の位置に行くまで、遠回り(図右上)の場合と近回り(図右下)の場合があり、新月の瞬間から満月までの時間を日単位で表すと、13.9日〜15.6日と幅があることが原因です。この平均は14.7日となりますが、さらに下の図のように、日にち単位で区切っていくために、名月の翌日や翌々日の満月が多くなるのです。

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 理由の2つ目は、日単位で区切ることです。上の図は旧暦の日付と満月までの日数の関係を表したものです。もし新月が旧暦1日の午前0時に起き、14.7日で満月になったとすると中秋の名月である旧暦8月15日が満月となります。しかし旧暦1日のお昼頃や24時近くに新月になったとすると、旧暦16日が満月となります。さらに13.9日〜15.6日の幅を考えると、薄青の平行四辺形の範囲が満月のエリアとなります。すると、名月の翌日が満月になるほうが多いことがわかります。さらに前日になる場合は、満月までの日数が最短で、さらに新月が旧暦1日の0時ごろに起きた場合だけとなり、非常にまれなことがわかります。中秋の名月の前日(旧暦8月14日)が満月になる実例は、国立天文台によると600年で2回(1942,2127)しか起きないのです。このあたりは、国立天文台の「必ずしも満月ならず」、が詳しいです。

 

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名月まで、だんだん満ちていく月を眺めるのもまた楽しいです。上の図は夜7時頃の月の位置と形です。8月末から細い三日月が西の空に見え始め、だんだん南から東の空に形を変えながら移っていく様子が見られます。これは月が地球のまわりを回っている動きです。名月になるまでの月もぜひお楽しみ下さい。

 

P1110952_m-crop.jpg図中の8月31日の夜、雲間からかろうじて、火星と土星と月が見えました。月はもっと細いのですが、うす雲越しの火星と土星が写るように露出を与えたため、明るすぎて太く写っています。

2014年8月31日 19:44 Panasonic LX7
 ISO 400  35mm F1.6 1/2秒露出 トリミング 

 

 

 

 

 

昨年や以前の名月の写真は、中秋の名月_2013」をご覧ください。今年もすてきな名月が見られると良いですね。

 

 

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