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アイソン彗星

現状は? (12/3更新 )

 

 

◯彡アイソン彗星は近日点を通過しました。29日朝にNASAの公式ページに「ばらばらになって蒸発した」旨の記事(英語)が出ました。 29日夕方には国立天文台のアイソン彗星のページにも同様の内容が出ました。さらに12/2に追加記事が出ています。

 

◯彡確かに上の動画では消滅したように見えます。「巨大彗星」とか「大彗星」とかではもちろんなく、肉眼で見える…程度でもなく、もう彗星らしい姿では「見えない」ということです。当初から、このページの下の方で、いくつかの可能性を示しておきましたが、その中の一番残念な選択になってしまったようです。


◯彡このように彗星というものはとても脆い(もろい)天体ですので、こういったことも十分に考えられるわけです。軌道は正確に求めることができるのですが、氷の割れ具合は予測ができない性質の現象です。さらに彗星は核本体が周囲のガスやちりで見えない(探査機で近づくと見えますが)のです。見えない氷の割れ方を予測するのですから、サイエンスの立場からして最初から「正しくわからない」ものなのです。

 

◯彡今回、このようにして立派な姿のアイソン彗星を見ることができなかったのはとても残念です。一方、こういうことが事前にわかったということは、すばらしいことだと思います。

 大昔には発見すらできず「何もなかった」だったでしょう。次に一昔前なら、発見と軌道の計算はできますから、明るくなるぞと大騒ぎになった後、12/5すぎに多くの方が早起きをして、見えなくて「あれ〜? がっかり」となったはずです。

 それが現在は、地球からは観測できない近日点通過前後の様子を、太陽観測衛星の観測によって「事前に知ることができた」わけです。これこそが現代の天文学の進歩です。なぁんだ、予想が外れたのか…ではなく、前述のように予想できない性質のものにいくつかの想定を用意し、そのどれになるかを、地球から見える位置に来る前に「観測事実」として得ることができたのです。

 そして「せっかく早起きしたのにがっかり。もう天文現象なんて嫌いっ!」ということを防ぐことができたかもしれません。航空機ツアーや観望会の中止等も残念なニュースとして伝えられていますし、実際、行事などを組んでおられた方はいろいろと大変かと思いますが、いざ、本番で「彗星そのものが存在しなかった」という事態だったらもっと大変。見方を変えれば、現在の観測技術があったので事前に中止できたとも言えるわけです。

 

◯彡アイソン彗星の残骸? は太陽観測衛星のカメラの視野で見えていました。各衛星による観測画像を別ページにまとめています。太陽観測衛星によるアイソン彗星  12月1日現在、すべてのカメラの視野から外れました。

 

◯彡これで「12月にドーンと見えるかも」という期待はなくなりました。細かな破片が残っている可能性はあり、ミニチュア彗星?として特殊な機器による検出は可能かもしれませんが、一般の方がぱっと見上げて、見えるという可能性はまずないでしょう。 研究者やハイアマチュアの「見える」と、一般のみなさんの「見える」はずいぶんと程度が違いますので、ネットなどの情報にはご留意ください。

 

◯彡当館のプラネタリウムは、すべてが専門学芸員による生解説です。ですので今朝(11/29)の初回から「ばらばら・蒸発」の情報を踏まえた解説を行っております。また、今月(12月)のプラネタリウム一般投影のテーマは「星の写真にチャレンジ」ですが、その中でアイソン彗星の最新情報にも触れております。専門学芸員の生解説を活かした臨機応変な解説が名古屋市科学館・プラネタリウムの特徴です。

 

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◯彡今回、アイソン彗星は太陽のかなり近くを通りました。名古屋市科学館・プラネタリウムの外径40mの球体を太陽に見立てると、図のように球体直下から水平に45m離れた位置を通過したことになります。南側はゲートを入ったすぐ。北側は横断歩道のあたりとなります。ご来館の折は、そのあたりから球体を見上げて頂いて、こんな近くから、表面温度6000°の太陽の強い熱にあぶられたアイソン彗星を思い出して下さい。 

  

アイソン彗星をおいしく思い出すのでしたら

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名古屋市科学館のレストランではパンスターズ彗星に引き続き、アイソン彗星のスペシャルメニューを11月上旬から提供しております。

 

  名づけて「アイスオンソーダすい星」。

 

アイスが乗ってる・アイスオン…アイスォン…アイソン (^_^;)

ソーダ水製…ソーダすいせい…ソーダ彗星 (^_^;)

 

写真の右側が基本形。底の青い部分が彗星頭部のコマ。チリに見立てた固形粒(タピオカです)も入ってます。そして白い部分が上に伸びる尾です。

 

さらにそれをかき混ぜると…写真左側のように、なんと全体が彗星らしい淡青に染まるのです(^^)/

 

そしてアイソン彗星がドーンと明るくなったら、アイスの盛りが大きくなるかも…。としたのですが、残念ながら11/29現在、アイス大盛りはなくなり…ません。話題になった記念・追悼で大盛りになりまーす(^^)/ 12月1日現在、1.5倍になっているとのことです。

 

テイクアウトも可能ですから、南側のゲート付近や市電付近など、45mラインでいただくのも良いですね。あ、日なたに長く置いておくと、とけちゃいますよっ(^_^;)

  

ラブジョイ彗星

 

また12月上旬、アイソン彗星よりも(正直期待されていなかった?)ラブジョイ彗星が明るくなっています。5等級と数値の上では肉眼で見えそうな数値ですが、この等級は広がった像を足しあわせたもの。5等星の恒星よりずっと淡いです。そこで、彗星や星雲星団の観察に慣れている方が、双眼鏡や望遠鏡を向けたら確認できるという状況です。望遠鏡・双眼鏡などをすでにお持ちで観察してみたい方は、日本公開天文台協会のページや、アストロアーツのラブジョイ彗星のページをどうぞ。ラブジョイ彗星の詳細はこちら(研究用ページ)です。

 
 

以下、近日点通過以前の情報です。

 

アイソン彗星は現在太陽のすぐ近くにあり、地上からは12/5頃まで観測できません。また、11月24日以前に双眼鏡や写真による検出は可能な期間がありましたが、天文マニアではない一般の方に「どうぞ、早起きしましょう!」という明るさではありませんでした。この時期は計算上の光度は太陽に近くなって上がりますが、背景の空が明るいので見えないのです。


これで次、もし、ドンと明るくなって見えるとしても、太陽のそばを通って帰ってきてから(無事だったら)となります。12月に入って、どなたにでも簡単に尾を楽しんでいただけるような状況になったら、このページのトップでお知らせします。

 

太陽には絶対望遠鏡、双眼鏡、カメラレンズなどを向けてはいけません! 
失明の危険があります。


◯彡アイソン彗星の写真が新聞などの一般向けメディアでも、次々出てくるようになりました。確かに写真には写っていますが、肉眼でぼんやりした彗星らしい姿や尾が見えるような明るさではありませんでした。さらに立派な尾が写った写真は、いろいろなテクニックを使ったもの。見上げたらあんな尾がじゃじゃーんと空に伸びているわけではありません。ですのでまだ見てないと残念がらなくても大丈夫です。そして12月過ぎにはドンと明るくなって欲しいのですね。

  

そこで、はじめに

(以下、近日点通過前の情報を含みます)

◯彡アイソン彗星が明るくなりそうと話題になりつつあります。もしかすると肉眼で見えるくらい明るくなると期待されていますが、彗星の明るさの予報は形の見えない氷の割れ方を予測するものですから、本質的に困難なものです。もちろん予報の外れ方は、予想外に明るくなる方に外れる場合もありますので、楽しみに見守りたいと思います。

 

このページでは彗星を見るのは初めてという大多数の方を対象に見え方(見えなさかも)を解説していきます。何度も彗星を見ていたり写真を撮ったりされる方はすでに情報をお持ちでしょうし、そういった方の「よく見える」と、普通(そういった経験がこれからの方)の「よく見える」の程度は、ずいぶん違うからです。

 

また写真と肉眼で見た姿は全く異なります。写真は光を長時間ためこむことができますし、画像処理も自由自在です。そして最新のデジタルカメラの感度はものすごく高くなっています。さらに望遠鏡で撮影された写真は、視野が狭い分大きく拡大したことになりますから、一見、まさに大彗星といった姿に見えます。これは実際に肉眼で見た姿とは別物とお考えください。ここでは、2013年春のパンスターズ彗星の時のように、みなさんの体験の助けになるような観点での情報や写真を公開していく予定です。

 

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薄明の中のアイソン彗星 2013年11月23日午前5時47分 90mm相当 F2.5 4秒露出 ISO80

 実際に見た感じに仕上げたものです。写真をクリックして大きく表示してご覧ください(でないと見えないです)。中央のビルの上の光点が水星。右上の丸は、双眼鏡でみた雰囲気に拡大したもので、丸の中央にぼんやりとした小さな白いものがみえたら、アイソン彗星です。このように肉眼ではほぼ無理。丸内のように双眼鏡で拡大して、かろうじて確認できるという見え方でした。この後、どんどん低くなり明るい空に埋もれてさらに見えなくなっていきます。現在はこれくらいの見え方ですので、後述のように太陽に近づいた後、より明るく見やすくなることを楽しみに待ちましょう。
ただし、朝のこの時間帯(5時半から6時)の空は写真のようにとてもきれいです。朝焼けの中に輝く水星もとても美しいです。12月5日過ぎ、ここに大彗星になった(らいいな)アイソン彗星が加わるといいですね。

 

彗星のきほん

970320_halebopp.jpg彗星の本体(核)は、氷とチリが緩く固まったものです。1997年に名古屋の街中でもよく「見えた」ヘール・ボップ彗星(写真右、1997年3月20日撮影)は大きな彗星でしたが、それでもその本体は50km程度。今回のアイソン彗星は3-4kmと考えられています。彗星は惑星などに比べるととっても小さい天体ですから遠くにあると見えません。彗星はこの本体が見えているのではないのです。

 

彗星が「彗星の如く」急に発見されるのは、氷が融けて周囲に気体として吹き出し、コマと呼ばれる丸い広がりを作るからです。そして彗星としてぼんやり見えているのは、このコマとそこから伸びる尾を見ているのです(右下の図)。何千kmにも広がる大きなコマが形成されると太陽の光を反射する表面積がぐんと増えますから、明るくなって「発見」となるわけです。

 

並みの彗星は火星軌道付近でやっと見つかるのですが、アイソン彗星は木星軌道より遠くで見つかったので、当初とっても期待されました。ただしその後の増光の傾向から、現在では「明るくなって肉眼で見えたらいいなぁ」という程度の予報にトーンダウンしています。適度に期待しながら待ちましょう。

 

comet.jpg彗星が太陽に近づくとさらに氷は激しく融けて蒸発し、太陽からの粒子の流れである太陽風によって、吹き流しのように太陽の反対側に気体(イオン)やチリが流されて尾を見せてくれる場合があります。ただしこの尾の見え方は、地球との位置関係にもよります。真横から見ると長く見えますが、向こう側になってしまうと見えません。今回のアイソン彗星は横方向ですので、もし尾が形成されたら見えることになります。

 

彗星の明るさの予報が難しいのは、軌道すなわち太陽からの距離と地球からの距離と、氷の融け方の両方の兼ね合いがあるからです。軌道は現在の技術では、すぐに確定できます。ですので、何日に空のどの方向に見えるかという予報は常に正確です。

 

予報が難しいのは明るさです。氷の融け具合はなんとも予想がしにくいのです。とっても極端な例では2007年に街中でも「見えた」ホームズ彗星は予測なしに突然15等級も明るくなりました。反対に大彗星として期待されながら「あれ?」っというものもいくつかありました。今回のアイソン彗星は太陽の近くをかすめるように通過するので、氷がよく融けて明るくなると期待されていますが、反対に表面の氷成分が全部蒸発して、チリが表面を満たしてしまい明るくならない可能性もあります。またバラバラに壊れてしまう可能性もあります。うまくバラバラになってくれると、ものすごい尾が見られる場合もありますが、壊れ方によっては、まったく見えないという可能性もあるのです。

 

このように彗星の振る舞いは「実に面白い」のですが、その明るさは、太陽の近くを通る11月29日を過ぎてみないと「さっぱりわからない」というのが、アイソン彗星の見え方の予測なのです。

 

アイソン彗星データ 

発見:2012年9月21日(世界時)

符号:C/2012 S1(ISON) 符号の付け方の詳細はこちら(国立天文台)

ISONの意味:国際科学光学ネットワーク(International Scientific Optical Network)

        の頭文字ISON

発見者:ISON所属のベラルーシのヴィタリー・ネフスキー(Vitali Nevski)さんと

     ロシアのアルチョム・ノヴィチョノク(Artyom Novichonok)さん。
お二人の姿はこちら(ロシア語)

発見場所:地球から見て、かに座の方向で19等級。
太陽から6.3天文単位(地球太陽間の6.3倍、木星軌道の外)

発見のお知らせ:CBET No.3238(国際天文学連合IAUの中央局天文電子電報)

 

 アイソン彗星の軌道

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このように細長い軌道で太陽のすぐ近くをかすめます。太陽に近いほど氷がよく融けて広がるのと、太陽から照らされる距離が近いため明るくなりますが、地球から見ても太陽に近く、彗星の背景の空が明るくなるので見えにくくなります。離れると暗くなりますが、太陽から離れる分、背景の空が暗くなって見やすくなります。その兼ね合いで彗星の見えかたが変わります。地球から見た時に尾の伸びる向きの横から見ることになるので、もし立派な尾が形成されたら見えることになりますね。

 

アイソン彗星の見える位置

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せっかくご覧になるなら、尾をたなびかせた立派な彗星をご覧になりたいですよね。もしアイソン彗星がぐんと明るくなって、そのように見える可能性があるのは、太陽の近くを通りすぎた直後=12月上旬です。その前後の見える位置を記したのがこの図です。太陽との位置関係を示していますが、いずれも夜明け前です。この時期の名古屋の日の出は6時40分〜50分です。また地平線付近は夕日ですら眩しくなくなるくらいに大気による吸収があるので、地平線から10°ほどは昇らないと普通の「見える」にはなりません。

 

万一、彗星が世紀の大彗星クラスで、ものすごく明るくなったら、日の出30分前〜60分前の明るくなり始めた空で見えるかもしれません。その時に日の出30分前の地平線から10°昇っているのは(図右のち平高度の目盛りを参考に)、12/5の位置ですね。こうなったらとっても嬉しいですが、地平線付近までスッキリ晴れていないとこれまた見えません。もし、彗星が世紀の大彗星とはならなくても、予想よりかなり明るくなったら、日の出60分前の空で見えるかもしれません。同様に地平線から10°上を考えると、12/7すぎとなりますね。ただし今度は光源の太陽から離れていきますので、どんどん暗くなります。そんな兼ね合いで結構チャンスは限られます。せっかくなので見てみようという方は、1時間前で5時40分。その時刻に行ける場所で、東南東が開けたところを事前に探しておいてください。

 

もっと前や後にも観察したい方(双眼鏡や望遠鏡が必須)は、国立天文台のアイソン彗星のページをどうぞ。

 

テレビ、ラジオなどで、「11月上・中旬は夜明け前のおとめ座の方向に見られます」とか流されていますが、これはちゃんとした観測道具と習熟、さらに星図との照合などのテクニックが必要です。それらが必要でないくらいドドーンと明るくなったら、このページですぐにお知らせいたします。

 

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