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火星ほぼ大接近_2020

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火星を望遠鏡で見たときの大きさ変化です。同じ倍率で撮影していますが、ずいぶんかわるものですね。強い画像処理はせず、肉眼で望遠鏡を覗いた感じに仕上げています。最接近の10月6日に向けてさらに望遠鏡では大きく、肉眼では明るくなります。撮影ができ次第画像や動画を追加していきます。
2018年の大接近のときは火星で大規模な砂嵐が起きてしまい模様が霞んでしまいましたが、今回は(今のところ)大丈夫そうですね。今回の火星接近は大接近ではありませんが、見かけの明るさが、前回の大接近とほとんど変わらない「ほぼ大接近」です。北半球から見上げたときの空の条件としては2018年を大きく上回りますので、結果的に今回のほうがよく見えることになります。以下の解説を読んでお楽しみくださいませ。それぞれの図はクリックすると大きくなります。

 

mars_2020.002-crop.jpg地球が火星に接近!?
火星は地球の一つ外側を回る惑星で、太陽の周りを約687日で一周します。内側を回る地球のほうが早く一周するため(約365日)、2年と2ヶ月ごとに地球は火星の内側から近づいて追い越します。この時、互いの距離が近くなることを「接近」といいます。

左の図は地球と火星の軌道を北側から見下ろしたものです。中心の太陽の周囲を地球も火星も左回り(反時計回り)に回っています。6月1日には1億5千万km以上もあった地球と火星の距離が、10月6日には半分以下の6207万kmにまで近づきます。



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今回の火星はうお座の方向に見えるタイミングで、内側から地球に抜かれます。かけっこでも車でも列車でも自分が相手を抜くとき、自分から見ると相手が下がっていきますね。火星が太陽を回り星空に対して動く向きは図の右から左(順行)ですが、9月10日から11月16日までは左から右へ下がって見えます(逆行)。ただし今回の接近時は、火星の周囲に明るく目立つ星がないので実感しにくいのが残念です。

 

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ほぼ大接近は “かなり長接近”!?
今回、-2等級よりも明るい火星が見られるのは9月9日から11月5日まで2ヶ月近くにもなります。また木星よりも明るくなって宵空での最輝星の期間も9月27日から10月31日までと約1ヶ月となります。

最接近の日だけが特別なのではありません。かなり長い期間、火星が明るいという現象が「火星接近」です。そして「ほぼ大接近は“かなり長接近”」なのです。

 

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火星接近一覧
火星の軌道はかなりの楕円なので、太陽に近いとき(近日点)と遠いとき(遠日点)では、太陽からの距離が約5000万kmも変わります。

2003年と2018年は、一連の接近の中で、火星が近日点に最も近いタイミングで接近するので「大接近」となります。大接近は15年もしくは17年毎に起きます。今回は2018年の大接近があるので大接近とは呼べませんが、それに近いかなりの好条件です。上の図をクリックして拡大すると、18年前の2003年の大接近から今回までの2年2ヶ月ごとの各接近の、年月日、地球との位置関係、距離、明るさ、視直径を読み取っていただけます。 

 
火星を肉眼で楽しみましょう!
接近中の火星は肉眼で、さらに街中でもとても明るく目立ちます。そしてほぼ大接近の時の火星のみどころは、秋の澄んだ夜空に存在感たっぷりに輝く様子です。

さそり座のアンタレスは「火星に匹敵するもの」という意味ですが、その明るさは1.0等です。この秋の-2.6等の火星はその28倍もの明るさで、アンタレスはまったく太刀打ちできません。

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10, 11月の宵空(左上)
最接近のこの時期は、宵の東の空に火星が見えます。太陽と真反対の方向に火星があって、西に夕日が沈むのとほぼ入れ替わりで東の空に昇るからです。一晩中火星が見えるのも、この時期です。
特に10月の火星は、−2等級超えの明るさです。まわりには目立つ星が少なく、東の空は火星の一人勝ち状態です。

 

12, 1月の宵空(右上)
火星は南の高い空に見えます。東には冬の明るい星々が見えていますが、南の空に一等星は少なくて、火星が目立ちます。
12月前半は−1等級の明るさですが、1月には0等級になり、少しずつ明るさが落ちていきます。恒星の中で一番明るいシリウス(−1.5等級)には負けますが、それでもかなりの明るさです。

 

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2, 3月の宵空(左上)
火星は西の空に見えています。明るさは1等級程度で、ちょうどアルデバランと同じくらいです。3月中旬には、色も似ているこの2つが横並びになって、まるで双子のようです。3月19日には細い月と火星とアルデバランが並びます。

 

4, 5月の宵空(右上)
春を迎えても、火星は西の空に見え続けます。明るさは1等級から2等級へと落ち着いていきます。
火星は、冬の星座の明るい星たちの中を動いていきます。周囲の目立つ星たちは、火星の位置変化の良い目印になるでしょう。

  

  

20201006.jpgまた、南西の空には、-2等台の木星、0等台の土星も同時に見られます。明るい惑星がこうして一緒に見られるのはめずらしい巡り合わせです。

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火星の模様はもともと淡いものです
接近中の火星を望遠鏡で見ると、極冠と呼ばれる白いところが見えることがあります。地球と同じく火星の極地域も寒いので、ドライアイスや氷が見えているのです。大接近の際には火星の地軸の傾きのおかげで南極冠が見やすくなります。 

それ以外の火星面の模様はとても淡く見えにくいものです。インターネットなどでは、火星探査機や宇宙望遠鏡の映像や、画像処理を施して地球大気の揺らぎを補正した画像がたくさん公開されていますが、実際に望遠鏡を覗いた時に見える火星は、赤くぼんやりとしています。

 

火星を望遠鏡で見てみたら
大気の揺れも含めて、肉眼で見た雰囲気に撮影した火星の動画です。日を追って追加していきます。中口径の望遠鏡で、普通からちょっと悪いシーイング(大気によるゆらぎ)の時の見え方に相当します。火星の模様はこれくらい見えにくいものです。火星の像の上が青く、下が赤く少し色がついています。これは地球大気のいわゆるプリズム効果による色収差です。望遠鏡で覗いたときにこれが見えても望遠鏡のせいではなく自然の現象です。この動画ではそれを消したりせずにありのままでご覧いただいています。

 

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ほぼ大接近でも火星は小さい
上の図のように大接近でも火星は小さいですね。こんなに小さくて模様も淡いからこそ、想像力を膨らませすぎた100年くらい昔の人たちには「火星人の作った運河が見えてしまった」のです。

 
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名古屋市科学館の大望遠鏡で
名古屋市科学館での、今シーズンの火星が見られる市民観望会は3回です。10月上旬の最接近の頃は夜遅くにならないと火星が高く昇りません。望遠鏡で見る場合、地平線付近で大気のゆらぎの大きい状態で見るより、少々遠ざかっても大気のゆらぎの少ない高く昇った状態で見たほうがよく見えます。これらを考慮して観望会の時期を設定しています。一般に、宿泊型でない公開天文台での観望会の好機は最接近から1ヶ月ほどからになります。 

プラネタリウムでの当日見る天体の講座の後、屋上の望遠鏡で天体を観望します。往復はがきかインターネットでお申し込みください。表をクリックして内容をお読みいただき、電子申請をされる方はこちらからどうぞ。

 

少しマニアックな比較

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今回の火星接近はどれくらい「ほぼ大接近」なのでしょう? 明るさを2018年の大接近と一続きのグラフで比べてみましょう。確かに木星を上回っている期間は違いますが、それは木星側の明るさの変化との兼ね合い(2018年のほうが木星が暗いところで交わっている)があります。明るさの最大が0.2等違いというのは、肉眼で見る限り誤差のうちです。さらに、-2等級を上回っている期間は2018年が6月26日〜9月5日までの72日。2020年が9月9日から11月5日までの58日の2割減でしかありません。というわけで「ほぼ」と言っていいですね。

 

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少しマニアックな映像

この画像は上の方の画像の「見た感じ」とは別のコンセプトで、地球の大気の影響をどれだけ避けられるかを試みたものです。2020年10月6日の最接近の夜は、上空の風が強く最良の条件ではありませんでしたが、ここまで検出できました。
名古屋市科学館屋上天文台 20cm屈折望遠鏡 f=2000mm  テレビューパワーメイト4x ZWO ADC(プリズム)、UV/IR カットフィルター、ZWO ASI 290MC(カメラ)
2020年10月6日22時8分 1分の動画から、Lynkeos 3.4、PhotoshopCCで画像処理



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