名古屋市科学館

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火星大接近_2018

火星中継は終了しました。撮影した動画はこのページで公開します。

mars_2018.jpeg火星の望遠鏡で見たときの大きさ変化です。ずいぶんかわるものですね。6月に起きた火星の砂嵐の影響で模様のコントラストが低く見えにくいのは残念ですが、見上げたときの異様な明るさはいかにも大接近です、以下の解説を読んでお楽しみくださいませ。

 

mars2018_01.jpg 地球が火星に接近!?
火星は地球の一つ外側を回る惑星で、太陽の周りを約687日で一周します。内側を回る地球のほうが早く一周するため(約365日)、2年と2ヶ月ごとに地球は火星の内側から近づいて追い越します。この時、互いの距離が近くなることを「接近」といいます。

左の図は地球と火星の軌道を北側から見下ろしたものです。中心の太陽の周囲を地球も火星も左回り(反時計回り)に回っています。4月1日には1億6千万km以上もあった地球と火星の距離が、7月31日は約3分の1の5759万kmにまで近づきます。



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火星大接近一覧
火星の軌道はかなりの楕円なので、太陽に近いとき(近日点)と遠いとき(遠日点)では、太陽からの距離が5000万kmも変わります。

今年は、火星が近日点に近いタイミングで接近するので「大接近」となります。大接近は前回の2003年から数えて15年ぶりとなります。上の図をクリックして拡大すると、15年前、2003年の大接近から2年2ヶ月ごとの各接近、そして次回の2020年の接近までの、年月日、地球との位置関係、距離、明るさ、視直径を読み取っていただけます。

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大接近は “長接近”!?
今回、-2等級よりも明るい火星が見られるのは6月24日から9月6日まで2ヶ月以上にもなります。
長い期間、火星が明るいという現象が「火星大接近」です。つまり「大接近は“長接近”」なのです。

火星を肉眼で楽しみましょう!
接近中の火星は肉眼で、さらに街中でもとても明るく目立ちます。そして大接近の時の火星のみどころは、夏の霞んだ夜空に存在感たっぷりに輝く様子です。
さそり座のアンタレスは「火星に匹敵するもの」という意味ですが、その明るさは1.0等です。この夏の-2.8等の火星はその30倍以上の明るさで、アンタレスはまったく太刀打ちできません。
9月上旬には、-4.4等の金星、-1.9等の木星も同時に見られます。明るい惑星がこうして一緒に見られるのはめずらしい巡り合わせです。ぜひ見比べて見ましょう!

夜空での惑星の位置はこちらのページ「惑星大集合」でご確認ください

火星の模様はもともと淡いものです
接近中の火星を望遠鏡で見ると、極冠と呼ばれる白いところが見えることがあります。地球と同じく火星の極地域も寒いので、ドライアイスや氷が見えているのです。大接近の際には火星の地軸の傾きのおかげで南極冠が見やすくなります。
それ以外の火星面の模様はとても淡く見えにくいものです。インターネットなどでは、火星探査機や宇宙望遠鏡の映像や、画像処理を施して地球大気の揺らぎを補正した画像がたくさん公開されていますが、実際に望遠鏡を覗いた時に見える火星は、赤くぼんやりとしています。

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上の図のように大接近でも火星は小さいですね。こんなに小さくて模様も淡いからこそ、想像力を膨らませすぎた100年くらい昔の人たちには「火星人の作った運河が見えてしまった」のです。


大気の揺れも含めて、肉眼で見た雰囲気に撮影した火星の動画です。日を追って追加していきます。小中口径の望遠鏡で、普通からちょっと悪いシーイング(大気によるゆらぎ)の時の見え方に相当します。火星の模様はこれくらい見えにくいものです。火星の像の上が青く、下が赤く少し色がついています。これは地球大気のいわゆるプリズム効果による色収差です。望遠鏡で覗いたときにこれが見えても望遠鏡のせいではなく自然の現象です。この動画ではそれを消したりせずにありのままでご覧いただいています。

 

20180731_mars.jpg  
この画像は見た感じとは別のコンセプトで、地球の大気の影響をどれだけ避けられるかを試みたものです。現在の火星の模様は砂嵐によってかなりコントラストが低いですが、ここまでは検出できます。

名古屋市科学館屋上天文台 20cm屈折望遠鏡 f=2000mm 
テレビューパワーメイト4x ZWO ADC(プリズム)、UV/IR カットフィルター、ZWO ASI 290MC(カメラ)
2018年7月31日23時44分〜52分 1800枚から、Lynkeos2.10、PhotoshopCCで画像処理

 
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今回の大接近での、星空に対する火星の位置変化です。近くに明るい星がいないので順行逆行の様子は、実際の空では目立たないです。

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名古屋市科学館での、今シーズンの火星が見られる市民観望会は4回です。7月末の最接近の頃は夜遅くにならないと火星が高く昇りません。望遠鏡で見る場合、地平線付近で大気のゆらぎの大きい状態で見るより、少々遠ざかっても大気のゆらぎの少ない高く昇った状態で見たほうがよく見えます。これらを考慮して観望会の時期を設定しています。一般に、宿泊型でない公開天文台での観望会の好機は最接近から1ヶ月ほどからになります。
プラネタリウムでの当日見る天体の講座の後、屋上の望遠鏡で天体を観望します。往復はがきでお申し込みください。表をクリックすると大きく読みやすくなります。



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