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天の川銀河円盤に落下する星形成の材料"分子雲"を発見

 

みなさん、こんにちは。天文担当学芸員の河野です。
 
今回は私を中心とする名古屋大学、東京大学、国立天文台らの研究チームの新しい成果が公開されたので紹介します。
この研究では、私たちの住んでいる天の川銀河の円盤に落下する新しいタイプの分子雲(図1)を発見しました。分子雲とは宇宙にある星を作る原材料となる水素ガスの集まりです。
今回の発見にはオーストラリアにある電波望遠鏡の観測データが大きく活躍しました。
天の川銀河がどのように進化してガスや星を作ってきたのか? その謎を解明する手がかりになると考えています。ぜひご覧ください!
 

 
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図1 本研究で発見した天の川銀河円盤に落下する2つの分子雲

 

【本研究のポイント】

・天の川のじょうぎ座(※1)の方向に銀河円盤から垂直に尻尾のように伸びた構造(ヘッドテイル構造)を持つ分子雲を発見した。

・位置天文衛星ガイア(※2)のデータ解析によって分子雲までの距離を8000±590光年と推定した。 

・分子雲が天の川銀河円盤に落下し、円盤部からの衝撃圧縮によって加熱を受けている可能性が示唆された。

 

当館の河野 樹人 学芸員を中心とする名古屋大学、東京大学、国立天文台らの研究チームは、オーストラリアに設置されたモプラ電波望遠鏡(※3)で得られた一酸化炭素分子(CO)輝線(※4)のデータを解析することで、じょうぎ座の方向で天の川銀河円盤から垂直方向に伸びた分子雲を発見しました(図1)。分子雲は銀河円盤から尻尾のように伸びた構造を持ち、通常の分子雲と比較して加熱されていることが分かりました。さらに位置天文衛星ガイアの可視光観測データを解析することによりこの分子雲までの距離を8000±590光年と推定しました。これは分子雲が天の川銀河円盤に落下し、円盤からの衝撃圧縮によって加熱される現場を捉えた初めての例です。

本研究成果は、2026年2月発行のPublications of the Astronomical Society of Japan (日本天文学会欧文研究報告)に掲載されます。

詳しくは以下のリリースをご覧ください。

 

# 名古屋大学 研究成果発信サイト

https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/02/post-937.html

# 論文のURL

https://doi.org/10.1093/pasj/psaf125

 

【用語説明】

※1 じょうぎ座

18世紀にフランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカーユによって設定された星座。南天の天の川に位置し、4等星以下の暗い星で構成されている。日本の多くの地域では、地平線から低くまでしか昇らないため星座全体を見るのが難しい。この方向には赤外線や電波で明るい、RCW106と呼ばれる活発な星形成領域が存在し、名古屋大学が南米チリで運用するNANTEN2 望遠鏡による分子雲広域観測の結果が本研究の契機となった。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/adae87

※2 位置天文衛星ガイア (Gaia)

2013年にヨーロッパ宇宙機関によって打ち上げられた位置天文衛星。天の川銀河の構造の解明を目的としていて、Data Release 3 では約14億個以上の恒星の距離と運動の結果が公開されている。

※3 モプラ (Mopra) 電波望遠鏡

オーストラリア国立望遠鏡機構(ATNF)が運用している口径22mの電波望遠鏡。ニューサウスウェールズ州クーナバラブラン近郊に設置されている名古屋大学の研究チームも共同研究として、一酸化炭素分子輝線による天の川広域観測プロジェクトに参加し、名古屋大学からの遠隔操作による観測にも貢献した。

https://www.narrabri.atnf.csiro.au/mopra/

※4 一酸化炭素分子(CO)輝線

星間ガスの主成分である水素分子は通常、電磁波を出さず直接観測が困難なため、その次に存在量の多い一酸化炭素分子が主要な観測手段として用いられる。分子の回転により電波が放射される。本研究では、波長2.6 mm, 2.7 mm (115, 110 GHz)と波長1.4 mm (220 GHz)の電波観測によって得られたデータの解析を行った。

 
 

学芸員(天文) 河野 樹人

 

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