科学について調べる > 学芸員NOW > 交流モーターのいいところ
工学担当の学芸員藤本です。
学芸員NOWにて『新しい鉄道模型が寄贈されました』(2024年4月26日掲載)という文章を書かせていただきました。その中で寄贈いただいた鉄道模型の車両は交流モーターを使っていて、優れていることに触れました。今日は、交流モーターがどのように優れているか説明します。
まずは、直流モータと交流モーターの違いから見ていきましょう。
当館理工館4階に直流モーターと交流モーターの展示があります。左が直流モーターで右が交流モーターです。
直流モーターは一つのコイルに直流電流が流れており、コイルが永久磁石に近づいたり離れたりしながら回転します。
交流モーターは二つのコイルに交流電流が流れており、コイルが固定されていて内側のかごが回転します。
理工館4階モーター展示(左:直流モーター 右:交流モーター)
日本で最初に営業用の電気鉄道が走り始めたのは、明治28年で、現在の京都市内の路面電車でした。この時使われていたのは直流モーターで、それから長い間、日本国内の鉄道車両のモーターは試作を除いて直流でした。これは、交流モーターには、速度を制御しやすい電気の周波数(交流は電気が波のようになっていますが、1秒間あたりの波の数でヘルツという単位で表します)を作ることが難しかったためです。交流モーターでは、50ヘルツの交流電源を通常の通勤型電車用のモーターに流した場合、時速34キロメートルでトルクが0になってしまいます。そのため、交流モーターをうまく使うためには、モーターに送る交流の電圧と周波数をなめらかに変化させる必要があります。そして、昭和57年に熊本市電で初めて「VVVFインバータ制御」が実用化され、交流モーターが鉄道車両で使われ始めました。VVVFとは可変電圧・可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency)の頭文字を取っています。その後VVVFインバーター制御と交流モーターは鉄道モーターの主流になり、現在電気鉄道のモーターのほとんどに交流モーターが使用されています。
では、長い間使われてきた直流モーターの弱点は、どのようなところだったのでしょうか。直流モーターでは、電磁石になるコイルに送る電流のプラスとマイナスを切り替えるブラシという部品が必要です。ブラシは常に摩擦していますが、すり減った時には交換しなくてはなりません。その交換に大変手間がかかりました。
つまり、交流モーターは、メンテナンスが簡単で、同じ出力なら直流モーターよりも小さくて軽いというメリットがあります。
今回、直流モーターと交流モーターのカットモデルの撮影にリニア・鉄道館さんにご協力いただきました。
リニア・鉄道館さんには未来の鉄道として超電導リニアの展示もあります。この超電導リニアにも交流モーターが使われています。