科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > 【骨と筋肉】筋肉の収縮



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骨格筋は、太さ0.02mmほどの細長い細胞が束になったもので、この細胞を筋細胞(筋線維)といいます。筋線維はさらに、太さ0.001mmほどの筋原線維とよばれる細い構造体が束になったものです。筋肉の収縮は、この筋原線維が収縮するはたらきによるものですが、それはさらにミクロの世界で行われます。
筋原線維には2種類の細いフィラメント(アクチンとミオシン)が平行して走り、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間にすべりこむと筋原線維の収縮がおこるのです。
この展示品では、骨格筋の一部を拡大して【1】筋線維(筋細胞)【2】筋原線維【3】筋原線維を拡大したフィラメント(アクチン:赤、ミオシン:ピンク)の模型を示してあります。また【3】はボタンを押すと、筋原線維が収縮する様子を見ることができます。
模型を見るとよく分かりますが、骨格筋では2種類のフィラメントの束は一部が互いの間に入り込んでおり、この部分は他の部分より暗く見えます。そのために、筋原線維には、明—暗の繰り返しがしまもよう(横紋)となって見えます。この横紋は、手や足ばかりでなく、心臓の筋肉にも見られます。
アクチンフィラメントは、アクチンという洋なし形(図では球状に示してあります)のタンパク質が400個ほどつながり、他のタンパク質と組みあわせられて、百万分の7ミリほどの細い糸になったものです。
一方、ミオシンフィラメントは太さ百万分の12ミリというアクチンフィラメントよりやや太い糸で、ミオシンという「頭が2つになったマッチ棒」のような形のタンパク質が200本ほど束になったものです。ミオシンの頭が外につき出ているので、ミオシンフィラメントにはとげがたくさんあるように見えます。
筋肉の収縮のエネルギーには、アデノシン三リン酸(ATP)という物質を分解するときに出るエネルギーが使われます。このエネルギーを効率よく利用し、熱になって逃げてしまう割合が低いということが筋肉の収縮の特徴です。ミオシンの2つの「マッチ棒の頭」の部分にATPを分解してエネルギーを取り出すはたらきがあることが分かっていますが、このエネルギーを使ってどうやってアクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間にすべりこむのかについてはまだ謎が多く残っています。
参考資料
書籍
驚異の小宇宙・人体 5 なめらかな連携プレー -骨・筋肉(1989年)NHK取材班(日本放送出版協会)
生物学ハンドブック(1987年)(朝倉書店)
生理学アトラス(1982年)(文光堂)
NEWTON COLLECTlON 人体の秘密より「筋肉の秘密」(1985年)丸山工作(教育社)
細胞の分子生物学 初版(1987年)(教育社)
ビデオ
驚異の小宇宙・人体 5 なめらかな連携プレー -骨・筋肉(NHKエンタープライズ)
絵と文 学芸員 堀内智子