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SM50S型雪上車522号車

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展示作品の狙い

平成24(2012)年まで南極で実際に使われていた雪上車です。1976年に登場したSM50型雪上車は、日本の南極観測隊のために作られました。南極では1年の大半の期間が雪に覆われるため、普通のタイヤの自動車では走ることが難しくなってしまいます。雪上車はタイヤのかわりに履帯(りたい)を使い、雪の上でも沈み込まずに移動することができます。
この522号車はSM50型雪上車の22台目で、平成元(1989)年から20年以上にわたって南極で活躍していたものです。

知識プラスワン

雪上車には、人員の移動、荷物の輸送、宿泊の3つの機能があります。
南極で移動するには、飛行機、ヘリコプター、スノモービル、雪上車あるいは徒歩の方法があります。南極では、強風や暴風雪など厳しい気候のため、空を飛ぶ乗り物を使うのは困難です。また、冬の間太陽が昇らない極夜の期間があり、真昼でも薄暗いので飛行機やヘリコプターが着陸できなくなります。
スノーモービルは手軽に使えそうですが、運転者が風をまともに受けるので、低温の南極では使える場所が限られます。また、雪面の凹凸や氷の割れ目を警戒しながら進むため、それほどスピードを出すこともできません。
安全を確保しながら慎重に移動するなら徒歩が確実ですが、疲れてしまいますし荷物もたくさん運べません。
このため、日本の南極観測では雪上車が活躍しています。
雪上車が荷物を運ぶにはソリを使います。荷物を積み込んだソリを、直径5センチ長さ2mほどの太いワイヤーロープで雪上車につないで引っ張ります。複数のソリを引く場合は、列車のように連結します。このSM50型雪上車が引けるのは2台のソリまでですが、大型のSM100型雪上車なら1台につき7台ものソリを引く力があります。
雪上車の中では調理もできます。換気扇の下にカセットコンロを置いて食事を作るのです。料理に必要な水は、雪上車の暖房で雪を溶かして作ります。
また、後方には寝棚があり、シュラフなどを使えば車内で寝ることができます。雪上車の暖房はエンジンが動いているときだけ使えますが、燃料を節約するため寝ているときにはエンジンを切ることになっています。このため、寝る間際まで暖房を入れて車内を暖めておき、暖房を切ってから寝るのです。保温性が高い寝具を使うことで、朝までは暖房なしで寝ていられます。しかし、朝起きるときには車内がかなり冷えてしまっており、なかなか寝具から出られません。
雪上車は、あまりスピードを出すようには作られておらず、人が早足で歩くのとあまり変わらない速さで移動します。もしかすると雪の上を走るペンギンよりも遅いかもしれません。これは、スピードよりも、ゆっくりでもいいから引っ張っていける荷物の量を重視して設計されているからです。多くの荷物を運び、風や雪を避けて寝泊まりできるキャンピングカー、それが南極の雪上車なのです。

 


【 参考資料 】

https://www.oharacorp.co.jp/en/products/snowvehicles/antarctic/
Ohara corporation, the only provider of snowcats for Japanese Antarctic Research Expedition.
文 学芸員 小塩哲朗

 

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