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展示ガイド

炭素

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展示作品の狙い

 地球上には億単位の種類の物質が存在していますが、その多くが炭素の元素をふくむ物質です。それらは主に炭素・水素・酸素・窒素などの元素の組み合わせからできています。
 なぜこのような少ない種類の元素で、多種多様な物質ができるのでしょうか。この展示「炭素」と展示「さまざまな分子と化学結合」を見て考えてみましょう。


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知識プラスワン

【炭素のみからできている物質】
 炭素のみ1種類の元素からできている物質には、ダイヤモンド、グラファイト(鉛筆のしん等で使われている黒鉛のこと)、フラーレン(C60など)、カーボンナノチューブ、無定形炭素(炭やスス)があります。これらは炭素どうしのつながり方が違い、性質も異なります。このように炭素元素だけでも、いろいろな物質があります。
 ところでカーボンナノチューブは1991年に飯島澄男さんにより発見された物質で、新素材として注目されています。
【炭素には結合する手が4つある】
 原子は、原子核とその回りにある電子からできています。各原子のもつ電子の数は原子番号に等しくなります。そして電子はいくつかの軌道に分かれて存在し、それぞれの軌道に入ることができる数が決まっています。原子核に近い方から2個、8個、18個、32個、50個、72個の電子が入ることができます。
 さて原子番号6の炭素は、内側の軌道に2個の電子、外側の軌道に4個の電子が入っています。外側の軌道に入る電子の数がちょうど8個になると安定しますので、あと4つの空席がある状態です。炭素の原子はあと4つの空席を満たそうとし、他の原子とお互いの電子を出し合って共有して「分子」をつくります。このような結びつきを「共有結合」といいます。図では炭素1個と水素4個が結びつく様子を示しました。
 このように炭素は必ず4つの電子を共有しますので、手を差し伸べあって握手する様子にたとえて、4つの手とか、結合手が4本といっています。4つの手をもつため、炭素どうしをどんどん四方へつなげていくことができ、無数の種類の分子をつくりだすことができるのです。
 
【C4H10Oはどんな物質?】
 一つの例として分子式C4H10O、つまり炭素4個・水素10個・酸素1個すべてを使ってできる物質の種類はいくつあるでしょう。炭素には4つ、水素には1つ、酸素には2つの結合手があるというルールで考えてください。いろいろな組み合わせが考えられます。答は展示品を見てください。
 この例のように、同じ分子式つまり同じ原子でできているのに異なる分子であるものをお互いに「異性体」といいます。異性体があるため、炭素の化合物はさらに種類が増えるというわけです。
【鏡像異性体】
 異性体の中には、鏡に映した姿のようにお互いに左右対称の分子構造をしている物質があります。「鏡像異性体」とよんでいます。「右手」と「左手」のように似ている2種類の物質です。違うのは光に対する性質だけで、沸点や融点も同じ、密度や溶解度も同じ、というように性質がそっくりで、2つを分離することができません。そして人工的に一方の物質だけを合成したくても、どうしても両方とも一緒にできてしまうのです。
 しかし生物は、その2つを区別することができ、また必要な一方だけを体の中で作ることができます。例えば、「メントール」にはスーッとするミントのいい香りがするものと、そうでないものがあります。展示では2種類のメントールの香りを実際にくらべることができるので、香りをかいでみてください。
 こういう物質が最初に発見されて(1848年にフランスのパスツールが発見)以来、作り分けは生物だけにしかできないと言われてきました。この常識を破ったのが野依良治さんの研究です。よい香りのメントールだけを完全に人工的に作り分ける方法を考え出し、2001年のノーベル化学賞を受賞しました。



【 参考資料 】

協力
高砂香料工業株式会社
参考資料
ニュートン別冊 すぐわかるビジュアル化学(2010) (ニュートンプレス)
図解でわかる有機化学のしくみ(2007)時田澄男(日本実業出版社)
高砂香料時報No.160(2007)(高砂香料工業株式会社)
NEDO技術開発機構 よくわかる!技術解説 http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/index.html
文 学芸員 石田 恵子

 

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