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展示ガイド

モンキーハンティング

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展示作品の狙い

 落下するボールに、下から狙ったボールを衝突させる実験を通して、物体の運動にひそむ法則を理解してもらいます。

知識プラスワン

 木の枝にぶらさがっている猿に銃で狙いをつけて、引き金を引いた瞬間に猿が気がついて枝から手を離して下に落ちていったら、弾は猿に当たるでしょうか?ハズれるでしょうか?というのがモンキーハンティングの問題です。
 展示品では2つのボールを使って実験を行ないます。1つのボールは斜面の上部にセットされています。もう1つのボールは、斜め下から上のボールに狙いをつけてセットされています。下のボールが上のボールに向かって発射された瞬間に、上のボールが斜面を転がり落ちるように仕組みがつくってあります。実験結果は、上から転がり落ちるボールに発射されたボールが衝突します。発射するボールの速度をいろいろ変えて試してみても、衝突する位置こそ変化しますが、必ず上から落ちるボールに衝突します。
 
 この問題は物理の中で力学と呼ばれる分野の内容です。力学とは物体の運動について扱っています。この展示品では、まっすぐ落ちる物体(ボール)と、斜めに打ち上げられた物体(ボール)の運動について、そこに潜む普遍的な法則を知ってもらうことを意図しています。
 この展示品で重要な点は次の3つに集約されます。
・2つのボールが同時に運動を始めること。
・下のボールが上のボールをまっすぐ狙って発射されること。
・下のボールをどのような速度で打ち出しても、必ずボール同士が衝突すること。
 最初に、重力がない所でこの実験を行ったらどうなるかを考えます。 上のボールは、実験が始まっても押し出されたりするわけではありませんから、最初の位置に止まったままです。重力がありませんから下に落ちたりしません。下のボールは上のボールに狙いをつけて発射されますから、そのまま真っ直ぐ飛んで行って、止まっているボールに衝突します。
 それでは、重力があるときにボールがどのような運動をするかを考えます。上のボールは重力に引かれて落ちていきます。下のボールは斜めに打ち上げられますが、やはり重力に引かれるので、真っ直ぐ飛ぶことはできません。ボールを投げたときに誰もが経験するように、山なりのカーブを描いて落ちていきます。このとき、上のボールにも下のボールにも重力は等しくかかっています。つまり落ちる距離は上のボールも下のボールも等しいということになります。ただ、上のボールはただ落ちるだけ(自由落下といいます)。下のボールは打ち上げられて徐々に落ちていく(放物線を描くといいます)ので、落ちる距離が同じであるようには見えません。しかし、重力がなければその場所にいたと想定される場所から、重力によって落下した距離はどちらも同じになります。下のボールを考えると、重力がなければ、上のボールが最初にいた位置に到達するはずですが、重力があるため下の方に到達することになります。この時、重力によって下に落ちた距離は、上のボールが自由落下で落ちた距離に等しくなります。重力がなければ、上のボールが最初にいた位置で衝突するものが、重力があることで上のボールの自由落下した地点で2つのボールが出会うことになるわけです。これが、この実験でボールが必ず衝突する理由です。
 このように物体の運動は、物体が受けている力をもとに計算することができます。ロケットで打ち上げられた探査機は、太陽や惑星などから受ける重力やエンジンの出力などから計算を行うことで目的の天体に達することができます。

 


【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
文 学芸員 山田吉孝

 

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