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竜巻ラボ

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展示作品の狙い

 人工的に竜巻そっくりの空気の渦をつくり出すことができる実験装置です。高さ9mの空気の渦を見るだけでも壮観です。この空気の渦をよく観察しながら、その特徴を理解し、科学的に自然現象を見る目を養っていただきたいと思います。


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知識プラスワン

【意外に多い竜巻】
 雷雲の下にできる強力な空気の渦、それが竜巻です。竜巻はアメリカ中西部で頻繁(年間1000個以上)に発生しており、多くは小規模なものですが、大きな被害を出す大規模なものもあります。日本ではそれほど多くはありませんが、平均18個ほどの竜巻が発生しており、時に大きな被害を出すことがあります。
【竜巻の発生のメカニズム】
 竜巻が発生するメカニズムは未だによくわかっていません。発生したと思ったらすぐに消えてしまううえ、発生エリアがせまく、竜巻内部の観測が非常に危険なため、その全貌を知ることさえ困難なためです。しかし、竜巻が発生しやすい環境についてはある程度わかっています。
 竜巻が発生するには、回転流と強い上昇気流が必要です。回転流は、地表付近で逆方向から吹いてくる寒気と暖気がぶつかって生じます。強い上昇気流は、低気圧に伴う寒気の流入により暖気が押し上げられることで生じます。とくに大きな竜巻を生じるような巨大な積乱雲(スーパーセル)の内部には、直径数km程度の上昇する渦(メソサイクロン) が発達することがわかっています。このメソサイクロンの強い上昇気流が、地表付近でできた回転流を引き伸ばして竜巻に成長させていくのではないかと考えられています。
【雲のかたちが違う人工と自然の竜巻】
 実際の竜巻では、積乱雲から漏斗(ろうと)の形に伸びた雲ができます。雲底に近い上ほど太く、地上に近いほど細くなります。上空に行くほど空気が減圧されて雲のつぶ(水滴)ができるからです。
 これに対して、この実験装置でつくる竜巻は、上に行くほど細くなっているように見えます。それは、渦がよく見えるようにするため、装置下部にある超音波加湿器で水滴を発生させているからです。空気が急激に上昇していくとは言っても、さすがにこの程度の高さでは自然に雲が発生してくれません。むしろ、徐々に水滴は蒸発していくため、上に行くほど雲が薄くなっているように見えるというわけです。自然界の現象を再現することはとても難しいことなのです。
【つむじ風は竜巻ではありません】
 地面が局地的に熱せられることで上昇気流が起こり、建物や地形の影響で乱れて空気の流れが渦をまくと「つむじ風(塵旋風 dust devil)」となります。よく竜巻と誤解されますが、つむじ風は、地表面付近の空気の渦にすぎず、そのでき方もスケールも竜巻とは全く違う気象現象です。
【竜巻の規模をあらわすFスケール】
 竜巻の規模を表わす指標は、シカゴ大学の藤田哲也博士により考案されています。「藤田スケール」または「Fスケール」と呼ばれ、被害が大きいほどFスケールの値が大きくなります。これにより、竜巻の被害状況からだいたいの風速を推定できるようになっています。日本でF4以上の竜巻は観測されたことはありません。
(気象庁ウェブサイトより作成:
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-5.html)
F0 17〜32m/s(約15秒間の平均)
テレビアンテナなどの弱い構造物が倒れる。小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。
F1 33〜49m/s(約10秒間の平均)
屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木は幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。
F2 50〜69m/s(約7秒間の平均)
住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。
F3 70〜92m/s(約5秒間の平均)
壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。
F4 93〜116m/s(約4秒間の平均)
住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十mも空中飛行する。1t以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。
F5 117〜142m/s(約3秒間の平均)
住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などがもち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数tもある物体がどこからともなく降ってくる。



【 参考資料 】

協力
平川明良(音楽)
参考資料
台風と竜巻 (2000) ジャック シャロナー(同朋舎)
気象庁パンフレット「竜巻等突風災害とその対応」
気象庁「Fスケールとは」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-5.html
文 学芸員 西本昌司

 

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