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展示ガイド

大隅良典

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展示作品の狙い

 生物の体の中にはたくさんのタンパク質があり、それぞれが生命を維持するためにはたらいています。それらのタンパク質は常に新しく作られていて、古くなったり壊れたりして不要になると分解され、新しく作られるタンパク質の材料になります。細胞の中で起こるこのリサイクル現象を「オートファジー」といいます。大隅良典博士は、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae (以下、酵母)を使ってオートファジーのしくみを解明した功績で、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

知識プラスワン

 大隅博士は、光学顕微鏡で熱心に観察して、酵母のオートファジーを見つけました。その後多くの研究者に研究されて、オートファジーが、全ての真核生物(細胞の中に核を持つ生物)の細胞が持つ、基本的なリサイクル機能として知られるようになりました。現在では、オートファジーががんや神経変性疾患の予防に関わると分かってきて、医療の分野への貢献も期待されています。

【大隅博士と顕微鏡】
 大隅博士は顕微鏡観察が大好きだったので、大隅博士が東京大学で研究していた時代に実際に使っていた光学顕微鏡を展示しています。OLYMPUS BH2というこの顕微鏡は、当時性能が良くて使いやすかったために、大隅博士のお気に入りのものでした。

【酵母ってなに?】
 酵母は菌類で、広い意味ではキノコなどの仲間です。ドライイーストと聞けばピン!とくるかも知れません。身近なところではパンやビールなどの発酵に使われています。大隅博士が研究に酵母を使ったのは、多くの生物に共通する生命現象を研究するのにとても便利な生物だからです。なぜなら、酵母は一つの細胞だけで生きている単細胞生物で、体のつくりが単純です。細胞の中身は動物や植物の細胞とよく似ています。さらに、このような特徴を持つので、昔から多くの研究者に実験に使われていて遺伝学の知見も豊富なのです。「いろいろな細胞」の展示で酵母細胞のつくりを比べてみてください。

【タンパク質の合成と分解】
 生物の体内ではたらく様々なタンパク質は、常に合成されたり分解されたりしながら、そのはたらきが保たれています。タンパク質は多くのアミノ酸が集まってできていて、そのアミノ酸の種類や並んでいる順番は生物が持っている遺伝子によって決まります。つまり、タンパク質が新しく作られる時には、遺伝子が指定したアミノ酸が集められ、それらが集まってタンパク質が作られるのです。反対に、オートファジーがおこる時にはタンパク質がアミノ酸に分解されて、また新たなタンパク質を作るための材料になります。「オートファジーのしくみ」の展示では、このオートファジーの過程を体験できます。

 


【 参考資料 】

水島 昇(2011) 細胞が自分を食べる オートファジーの謎. PHP研究所

 

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