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受精から出産まで

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展示作品の狙い

 卵と精子が出会って受精し、たったひとつの小さな受精卵がひとりの赤ちゃんとして生まれてくる過程を動画(ビデオ)でアニメーションと実映像を組み合わせて紹介しています。
 生命のふしきぎや大切さについて考えるきっかけを与えてくれる展示品です。
 周囲には受精や受精後の変化についての解説も掲示されています。
 なお、1989年に生命館が開館したときに同じテーマで映像と解説のある展示品を設置していましたが、この展示品では映像や解説を新しくしています。

知識プラスワン

【ヒト一人のもとになる細胞は? 】
 2つの細胞1つずつがもとになります。
○卵(らん)(直径約0.1mm)
 女性の卵巣で準備されます。ホルモンの量の変化によって約28日(※)に1個、卵管へ出る「排卵」がおきます。
(※)個人差や体調などによって日数が違う場合があります。

○精子(せいし)(長さ約0.06mm)
 男性の精巣で準備されます。
 興奮すると運動能力が高まり精管から尿道へ出てくる「射精」がおきます。1回の射精で出てくる精子は約3億個前後といわれます。
 このうち子宮と卵管を通って卵子にまでたどりつくのは数百個、さらにそのうち1つだけが卵と受精して受精卵ができます。

【いつ一人のヒトができはじめるの? 】
 「受精卵」が細胞分裂をしながら移動し、子宮の内側表面にある「子宮内膜」にもぐりこみ定着します。これを「着床」といいます。
ヒトのからだができていく初期の時期を「胚」といい、胚はその後、「胎児」として育ちます。この変化を「発生」といい、各器官が作られ全体の形も大きく変化します。
 受精卵は1つの細胞ですが、分裂して細胞の数が増えるにつれ、役割の違ういくつかのまとまりになっていき、最終的にちょうどよい大きさや形のいろいろな器官や組織としてはたらくようになります。
 このように、とてもうまく行われる発生のしくみですが、まだ完全には解明されておらず謎が残っています。

【子宮の中はいつも同じなの? 】
 排卵の後、子宮内膜は着床に備えてだんだん厚くなり、養分をたくわえます。着床がない場合は子宮からはがれ、外に出てきます。
これが「月経」で、その後また子宮内膜が厚くなります。体温も排卵や月経とともに変化します。
 このような変化は約28日(※)ごとに繰り返され、卵巣から出る2つの女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)の量が関係しています。
 女性ホルモンの量の調節は脳から出る別のホルモン2種が行い、さらにこの2つを調節するもう1つのホルモンが脳の別のところで作られます。これらの量の増減が女性ホルモン自身の量の影響を受ける「フィードバック」という調節のしくみがあります。
(※)個人差や体調などによって日数が違う場合があります。

【赤ちゃんは子宮の中で息や食べものはどうしているの? 】
 着床した受精卵の一部分が変化して、子宮内膜とともに「胎盤」が作られます。胎盤では、母親の血液中の酸素と養分が胎児の血液に、胎児の血液中の二酸化炭素や不要なものが母親の血液に送られます。胎児と母親の血液は、胎盤の薄い膜で分けられており混ざらないしくみになっています。胎児の作る「へそのお」が胎盤へつながっています。

【どうして赤ちゃんは生まれると泣くの? 】
 胎児は子宮の中で自分の作った膜の中の液「羊水」に浮かんでいます。生まれて子宮から外に出ると、つぶれていた肺が広がって空気が入り、肺で酸素と二酸化炭素の「ガス交換」をするように切り替わります。そのときに出る大きな声が「産声」です。
 胎盤と胎児を行き来していた血液の流れも大きく切り替わり、胎児の心臓と肺の間の流れが始まります。
 そして胎盤は子宮からはがれて外に出され、大きくなった子宮がもとに戻っていきます。

 


【 参考資料 】

映像協力:
医療社団法人ミオ・ファティリティ・クリニック
名古屋第二赤十字病院
医療法人 葵鐘会/キャッスルベルクリニック

文:学芸員 堀内智子

<参考資料>
Newton別冊 人体図 (2015年) ニュートンプレス
新版 たのしい理科 5年 (2015年) 有馬朗人ほか (大日本図書)
みえる生命誕生 受胎・妊娠・出産 (2013年) SARAH BREWERほか/著 池ノ上克/監訳 前原澄子/監訳 (南江堂)
知識ゼロからの身体の不思議入門 (2010年)上野正彦 ()幻冬舎) 
改訂版 フォトサイエンス生物図録 (2007年) 数研出版  
マンガでわかる 人体のしくみ (2012年) 坂井建雄(監修)、沢田麻間(画)、サイドランチ (画) (池田書店)
新しいほけん 3・4 (2011年) 戸田芳雄ほか (東京書籍)
「妊娠と免疫」からだの科学 182 (1995年) 長田久夫・河田誠
からだの科学 増刊 女性の病気 (1994年) 雨森良彦 (日本評論社)
レナルト・ニルソンの世界 誕生の神秘 (1992年) ラーシュ・ハンベルイェル (小学館)
生命誕生の神秘 Newton1997, 3 12-41
驚異の小宇宙・人体 1 生命誕生 (1989年) NHK取材班 (日本放送協会)

 

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