科学館を利用する > 展示ガイド > 展示フロアマップ > 【ホメオスタシス】抗原抗体反応
この展示品は撤去されました。現在はご覧いただけません。
私たちの体の中は自分(自己)と異なるおかしなもの(非自己;異物)を攻撃するしくみ「免疫(めんえき)」によって守られています。
そのうちの「抗原抗体反応」のしくみをわかりやすくゲーム形式で展示しています。上から落ちてくる5種類の形のブロックにぴったりあう形に変えて真下にもっていくとブロックを消すことができます。
ありとあらゆる形の異物に対応した形を作り出して攻撃し、高得点をめざしてください。
【抗原抗体反応とワクチン】
免疫にはたくさんの物質と細胞が関係していますが、主役となるのは白血球の仲間です。
白血球のうち「Bリンパ球」という種類は異物を攻撃する物質「抗体」(免疫グロブリンまたはイムノグロブリンというタンパク質で、I gと略記します)を作り出します。
この抗体は異物(この場合「抗原」といいます)に対してくっつく2つの腕をもったY字型の物質です。抗体は抗原にたくさんくっつくことで、抗原のはたらきをおさえたり、他の細胞の攻撃の目印となるはたらきをしたりします。これを「抗原抗体反応」とよんでいます。
抗体のY字型の先の部分の形は大変多くの種類があり、それぞれ、目的とする抗原の形にぴったり合うようになっていて、そのため別の抗原や自分の仲間を攻撃しないようになっています。また、Bリンパ球は一度出会った抗原の形を正確な指名手配写真のように覚えていて、2度目に同じ抗原に出会うとより速く多くの抗体を作り出します。このため、私たちは同じ病気に2度かかることがありません。このことを利用して病気を予防するワクチンが作られています。ワクチンは毒性を弱めたり、一部だけにしたりした抗原をあらかじめ体内に入れて、次に毒性の強い抗原が体内にやってきてもはたらきを速くおさえるものです。
もっとも、少しでも違う形の抗原に対しては2度目の反応ができないので、たびたび形を変えてやってくる抗原(たとえばインフルエンザウィルスなど)に対してはいつも初対面のようなものでワクチンを作っても万全とはいきません。
なお、決まった抗原だけにくっつく抗体の性質は、微量な物質の測定などにも応用されています。
【日本人初のノーベル生理学・医学賞受賞者 利根川進】
ありとあらゆる種類の抗原に対してそれぞれぴったり合う抗体が必ず作られるのは、設計図である抗体の遺伝子にそれだけ多くの種類があるからです。そんなに多くの遺伝子が全部小さなBリンパ球に入っているのでしょうか。
そのなぞを解き明かしたのは、利根川進(とねがわすすむ)博士でした。
Bリンパ球のもとになる未熟な細胞では、抗体の遺伝子は1冊の本のコピーのように同じものが入っているのですが、成熟したBリンパ球になっていくときに少しずつページを抜き取って、部分的に内容の異なる少し薄い本に組み直すような現象が起きていたのです。
この業績によって、博士は日本人として初めて1987年のノーベル賞の生理学・医学賞を受賞しました。
参考資料
大自然のふしぎ 人体の図詳図鑑(1994年)(学習研究社)
からだと免疫のしくみ(1996年)上野川修一(日本実業出版社)
精神と物質(1990年)立花隆・利根川進(文藝春秋)
驚異の小宇宙・人体 6 生命を守る — 免疫(1989年)NHK取材班(日本放送出版協会)
imidas1991別冊 人体アトラス(集英社)
絵と文 学芸員 堀内智子