名古屋市科学館

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マプサウルス

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展示作品の狙い

 恐竜は多くの人を惹きつけます。人類がいなかった過去の地球に巨大動物が確かに存在した揺るぎない証拠だからでしょう。この復元骨格を仰ぎ見ることで、太古の地球に思いを馳せていただき、恐竜をはじめとする古生物研究に関心を持っていただきたいと思います。

知識プラスワン

「ティラノサウルスだ!」と思ったら大間違い。その顔つき、強力そうな大きな顎、ステーキナイフのような歯、三本の鋭い爪がある指などを見れば、ティラノサウルスを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、これは「マプサウルス」。ティラノサウルスよりも少し面長な感じです。2007年に命名されたばかりの恐竜ですから、映画に登場したこともなく、恐竜ファン以外でその名前を知っている人は少なかったのですが、テレビドラマ「ガリレオ」(2013年)の撮影に使われ、少し有名になったかもしれません。ちなみに「マプサウルス」とは「大地のトカゲ」という意味。約1億前(白亜紀)に南半球にあったゴンドワナ大陸で繁栄した典型的な肉食恐竜です。

 アルゼンチン・ネウケン州で発見されたマプサウルスの骨格化石は、同じ場所から大量に発掘され、全部で7個体分以上もあること、その体長は6〜13mとまちまちであることがわかりました。このことからマプサウルスが群れをつくっていたと考えられ、大型肉食恐竜は単体で行動するという従来の定説を覆すことになりました。もしかすると、群れをなして獲物を追っていたかもしれません。この展示では、親子が仲良く寄り添うように復元されています。

【復元骨格とは 】

 復元骨格は実物化石ではありません。重くてこわれやすい化石は、運搬も組立ても大変です。実物化石は大切に保管しておく必要もあるため、そっくりそのままのレプリカを軽くて丈夫な素材でつくって研究します。発見されなかった骨格については、科学的根拠に基づいてその形状を推測し、全身がどのような骨格だったかを復元します。つまり、恐竜など大型動物化石の全身復元骨格は、研究者たちの考えで完成させた“作品”と言って良いでしょう。全身骨格をレプリカで組み立てることが、その動物がどんな姿であったか復元することにつながり、過去の生態系や地球環境を探る手がかりにもなるわけです。

【生物の進化を促した大量絶滅 】

 恐竜は約6600万年前に絶滅しました。同時に恐竜以外の動物もたくさん絶滅したことがわかっています。このように、ある時期にたくさんの種類の生物が絶滅してしまうことを「大量絶滅」と言います。大量絶滅の原因については、隕石の衝突説や大規模な火山活動などを発端とする急激な環境変動と考えられています。

 地球の歴史において大量絶滅は何度もあったことがわかっており、とくに規模が大きい大量絶滅が5回あったとされています(オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末、三畳紀末、白亜期末)。最も壊滅的だっと言われるのはペルム紀末(約2億5000万年前)で、海洋生物の約95%と陸上生物の70%が絶滅したと推定されています。大量絶滅の時期を生き延びた生物は、その後、急激に多様化しており、生物は絶滅と多様化を繰り返しながら進化してきたと言えます。

 


【 参考資料 】

参考資料
大恐竜展〜知られざる南半球の支配者〜(特別展図録) (2009) 冨田幸光(読売新聞社)
“A new carcharodontosaurid (Dinosauria, Theropoda) from the Upper Cretaceous of Argentina” Geodiversitas Vol. 28, 71-118.(2006) Coria, R. A. & Currie, P. J
文 学芸員 西本昌司

 

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