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師崎層群の中期中新世海生化石群 〜愛知県「県の石」シリーズ〜

 

みなさん、こんにちは!学芸員の片田です。

 

愛知県「県の石」シリーズ第3弾!!

愛知県の化石に選ばれたのは、師崎層群(もろざきそうぐん)の化石です。師崎層群からは、当時深海に生きていた様々な生物の化石が見つかっています。

 

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写真1 師崎層群の化石たち

 

一番の注目ポイントは何といっても魚化石の軟体部です。骨だけでなく魚のいわゆる“身”の部分や、おなかの発光器、眼がきれいに化石になっています。なんと素晴らしい保存状態でしょうか。いやぁ、いつまででも眺めていられますね。この化石を見ているとなんだか胸がどきどきしてきてはっ!これはまさか恋!?

 

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写真2 魚化石(点線が体の輪郭、矢印が発光器のひとつ)

 

さて、師崎層群ができたのは今から約1700万年前です。つまり私たちは1700万年前に死んだ魚達の肉を見ているのです。1700万年前の魚の肉をこの目で見られるとは!出会いに感謝ですね。

 

しかし、肉が残っていることの何がそんなにすごいの?と思っている方もいるかもしれません。生き物が化石になることについて一緒に考えてみましょう。

生き物が化石になるためには、3つのステップが必要です。そのステップとは、①死んで、②土に埋まって、③石化することです。特に、②の土に埋まるステップは意外と重要です。

 

例えばあなたが今、海の中にいると想像してください。海底を見ると、魚が一匹死んでいます。さて、そのまま3日経ったら魚はどうなるでしょうか?考えてみて下さい。私が周りの職員に聞いてみたところ、“他の生き物に食べられる”、“腐って骨だけになる”、という答えが返ってきました。

他の生き物に食べられてしまえば、体はバラバラになってしまうでしょう。また、微生物が死んだ魚を分解し、腐らせてしまうかもしれません。このようなことが起こると美味しい身の部分や柔らかくて分解されやすい部分はどんどん失われてしまいます。

私は今死んで1700万年後に自分の肉が残っている自信は全くありません。でも、肉が残ったら残ったでなんだか恥ずかしいような。私は化石になるならきれいに骨だけの化石になりたいです。

なんてことはどうでもよくて、大切なことは肉や発光器のような部分が化石に残るのはとても珍しい、ということです。

 

師崎層群で見つかる深海魚の化石は、運よく(?)大量の砂や泥の生き埋めになって死んでしまったので、他の生物に食べられたり分解されることなく、化石になったのです。そして、たまたま人の目に触れて見つけ出されたのです。こう考えると師崎層群の化石ってすごいと思いませんか?そう、彼らはロマンの塊なのです。

 

そんなロマンの塊は生命館2階発見処に展示されています。ぜひ足を運んでくださいね。

 

 

参考文献

土屋健, 2018, 『化石になりたい~よくわかる化石のつくりかた~』, 技術評論社.

 

 

学芸員 片田はるか

 

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