科学について調べる > 学芸員NOW > 続・新型コロナウイルス ワクチンと変異
みなさん、こんにちは。柏木学芸員に続き、人体・保健担当学芸員の堀内です。
新型コロナウイルスの模型の隣に掲示してある「続・新型コロナウイルス SARS-CoV-2(サーズ コヴ ツー)ワクチンと変異」パネル(理工館6階の「話題の科学」に展示)を担当しました。このパネルの図と模型とを見比べていただくと、解説がわかりやすいと思います。ここでは、模型の推しポイントを熱ーく語ります。
■ 模型の推しポイント その1 大きさ編 ウイルスは小さいんです
まずは、大きさ編。
柏木さんも書いていますが、新型コロナウイルスは、大きさがおよそ100ナノメートル。1ミリメートルの1万分の1です。学校にある顕微鏡では見えない大きさです。
そこで、展示している3D模型は、新型コロナウイルスをどーんと大きくした、100万倍サイズ。
ちなみに、「1m」を100万倍すると、1000kmになります。
名古屋からの距離だと、青森や九州までくらい。
新型コロナウイルスは、人体に比べてとんでもなく小さいんだ・・・ということが、おわかりいただけますでしょうか。
ちなみにx2、小さくて気になるものといえば、スギ花粉も小さいですね。
こちらは30μm(1ミリメートルの100分の3)※ くらいだそうで、ウイルスの300倍です。
100万倍すると、30mくらいになるので、当館の内径35mのプラネタリウムドームの中にすっぽり入るくらい。このサイズのスギ花粉、イヤだな・・・。
※ 参考:https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/qanda.html
■ 模型の推しポイント その2 色遣い編 膜の内側や断面にも注目してほしいんです
図1 模型の断面に注目!!
模型の色分けは、「パネルの図とある程度、合わせたい!お願い!」と、希望をお伝えして作っていただきました。(柏木さん、関係の皆様、ありがとうございます。)
内部をよーく見てください。まるい新型コロナウイルスの膜に突き刺さったスパイクなどが、膜の裏まで伸びて貫通しているのが見えます。
それから、なんと言っても膜の断面!
薄いサンドイッチみたいに、二重構造になっていることも表現してもらいました。
個人的には、さらによく見ると、松の葉っぱみたいな2本足の細い物質が多数、2重に並んでいるという部分の表現がお気に入りです。
「萌え断」です!
ちなみに、この膜の部分は新型コロナウイルスが作り出すのではなく、細胞の中の膜をそのままもらって、形だけ丸くして使ってしまう・・・というところが、細胞にとってじんわり悲しいエピソードです。
ちなみにx2、膜の松葉もようの成分は新型コロナウイルスの弱点でもあります。アルコールやせっけん、ハンドソープ、洗濯洗剤などが混ざると膜の成分が並んでいられず、ウイルスの働きをストップ。汚れを落とすだけじゃなくて、ウイルスを直接やっつけることができます。
■ 模型の推しポイント その3 内部編 RNAのまわりのタンパク質もポイントです
図2 模型の中の細長いRNAとタンパク質を表した部分
模型の内部のRNAについては、3Dデータがなくて、いろいろな資料から模式的に表しています。
個人的には、RNAと一緒に入っている緑の丸い粒が推しポイントです。
(サイズは、3Dデータがないので、正確な比率ではありません。数ももっとたくさん入っています。)これは新型コロナウイルスのRNAにくっついている、粒状のタンパク質を表しています。ウイルスの存在や、免疫の状態について調べると検査でポイントになる成分で「Nタンパク質」とか「Nプロテイン」と呼ばれます。
今後、検査が一般的になってくると、よく耳にするようになるかもしれません。
文:学芸員 堀内智子