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GGSS すごい石材 Vol.1「ビアンコ・カラーラ」

 

みなさんこんにちは、学芸員の西本です。

 

今日は公式YouTubeチャンネルで紹介したビアンコ・カラーラについてゴリゴリ深掘りします!

動画をまだ見ていない方はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=NQW146pahs4

 

名古屋市科学館のお隣、名古屋市美術館のロビーの壁や床面などに、グレーの斑模様や網目模様が入った白っぽい石材が使われています。

この石材は「ビアンコカラーラ」と呼ばれているいわゆる“大理石”の一種で、有名なダビデ像やピサの斜塔に使われている石だというとピンと来るでしょうか。

 

ビアンコカラーラが採掘されているのは、イタリア・トスカーナ州のピサから北東におよそ50kmのところにあるカラーラ(Carrara)という都市で、アペニン山脈の西にあたり「アプアン・アルプス」と呼ばれる山脈地帯にあります。この地域でローマ時代から始まったという大理石の採掘は現代まで続けられ、今や石材産業の中心地となっています。

 

さて、ビアンコカラーラが白いのはなぜでしょうか。それは、ビアンコカラーラが方解石という鉱物(炭酸カルシウム(CaCO3)の結晶)の粒の集合体であり、雪が白く見えるのと同じように粒の表面で光が乱反射しているためです。

もともとは中生代ジュラ紀に海底に積もった石灰質の堆積物が固まった石灰岩だったのですが、その後の地殻変動の最中に再結晶してできた粒揃いの岩石に生まれ変わりました。

このように、石灰岩が熱を受けて再結晶した岩石を「結晶質石灰岩」といいます。

 

では、グレーの網目模様はどのようにしてできたのでしょうか。それは、割れた跡です。

割れるといっても、ハンマーで叩いたときに岩石が割れる感じではありません。地下深部では大きな地圧がかかっているので、割れるときに飛び散ったりすることはありません。ミシミシとひび割れるように、固結状態のまま、ゆっくり破砕されていきます。

そんなひび割れが再結晶によって網目模様として残されました。

 

このように、ビアンコカラーラを科学の目で観察すると、地中海域の地下で起こっていた現象を読み解くことができます。

石材は、地球の芸術作品を利用させてもらう天然素材だと言って良いでしょう。

みなさんも、街中でビアンコカラーラを探してみてください!

 

ビアンコカラーラ.jpg

写真1:ビアンコカラーラ

 

M13C ビアンコカラーラヴェナートC.JPG

写真2:ビアンコカラーラの採石場(提供:矢橋大理石株式会社)

 

M13C ビアンコカラーラヴェナートC  (2).JPG

写真3:ビアンコカラーラの採石場(提供:矢橋大理石株式会社)

 

文献:

Primavori, P., 2017, Carrara Marble: a nomination for Global Heritage Stone Resource from Italy. in Pereira, D., Marker, B. R., Kramar, S., Cooper, B. J. & Schouenborg, B. E. (eds) 2015. Global Heritage Stone: Towards International Recognition of Building and Ornamental Stones. Geological Society, London, Special Publications, 407, 137–154. http://dx.doi.org/10.1144/SP407.21.

 

 

学芸員 西本昌司

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