名古屋市科学館

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水星磁気圏探査機「みお」スイングバイ

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●JAXA(宇宙航空研究開発機構)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)の共同開発による水星磁気圏探査機「みお」は2018年10月20日に打ち上げられ順調に飛行を続けています。探査機は水星に2025年に到着予定ですが、その途中で地球の重力を使って軌道を変えるスイングバイを行うことになっていました。いったん地球から打ち上げられた探査機が地上から捉えられるまでに戻ってきて、目的地に向かうというこの印象的なイベントに向けて全国の公開天文台では観測キャンペーンが行われました。

 

●地球に近づくといっても小さな探査機ですから肉眼ではもちろん見えません。予想される明るさは13等級。望遠鏡を通しても普通にみられる明るさではありません。そこで観望会ではなく撮影による観測キャンペーンだったのです。各地の公開天文台にはノウハウを持った専門スタッフがおられます。それぞれの天文台の特徴を生かした撮影、公開が行われました。

 

●名古屋市科学館は大都市の中心にある公開天文台です。街の明かりが空を照らしあげてしまう「光害」が激しく暗い天体は見えないとされています。しかし、視野を狭く絞っての撮影では、空全体からの光を防ぐことができ、思ったより暗い天体も検出なら可能なのです。これは望遠鏡を使うと昼間に星が見えるのと同じ原理。星は点像ですが、空は面で光っているので、視野を絞れば面積が減少し空を暗くすることができるのです。

 

●上の写真は屋上天文台の20cm望遠鏡に高感度で撮影できるカメラを取り付けて撮影した画像です。2分20秒の連続撮影の間、恒星を追尾しました。すると星とは違う動きをするものだけがシャッターを切るたび移動するので点線のように写ります。写真の中央を左から右斜め上に移動する点線が「みお」の姿です。周囲の星に添えてある数字はそれぞれの星の明るさ(等級)です。周囲の星と比較すると「みお」はほぼ13等級程度だったことがわかります。

 

●写真の上のほうにはもう一つ別の点線があります。これはカナダがうちあげたNimiq 2という放送衛星の軌跡です。日本の静止衛星では気象衛星ひまわりが有名ですね。これらは上空36000kmで地球の自転と同じ速度で公転していて、いつも同じ方向に位置することから静止衛星と呼ばれます。この写真では恒星が点像になるように向かって左から右(東から西)へ追尾しているので、止まっているはずの静止衛星が右から左にみかけ上動いて見えています。この写真ではすれ違いに見えますが、「みお」は上空13000km、「Nimiq 2」は上空36000kmですのでかなり離れたすれちがいです。

 

●上の写真を撮影した方向はうみへび座あたり(正確にはろくぶんぎ座ですが見つけにくいです)でした。名古屋市科学館の星座早見アプリのスクリーンショットにおおよその位置を書き込んでみました。前述のとおりとても見えるものではありませんでしたが、スイングバイでは、このあたりを通ったんだということを眺めていただけます。

 

●水星磁気圏探査機「みお」の無事の到着と活躍を願っています。

 

詳しくはこちらのリンク先を御覧ください。

ベピコロンボ地球スイングバイ観測キャンペーン 

水星磁気圏探査機みお(JAXA)

 

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