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火星接近_2022

火星スライド2022.002.jpeg地球が火星に接近!?

火星は地球の一つ外側を回る惑星で、太陽の周りを約687日で一周します。内側を回る地球のほうが早く一周するため(約365日)、2年と2ヶ月ごとに地球は火星の内側から近づいて追い越します。この時、互いの距離が近くなることを「接近」といいます。

左の図は地球と火星の軌道を北側から見下ろしたものです。中心の太陽の周囲を地球も火星も左回り(反時計回り)に回っています。10月1日には1億2000万km以上もあった地球と火星の距離が、12月1日には8100万kmにまで近づきます。

 

火星スライド2022.008.jpeg

火星接近一覧
火星の軌道はかなりの楕円なので、太陽に近いとき(近日点)と遠いとき(遠日点)では、太陽からの距離が約5000万kmも変わります。

今回の火星接近はいわゆる中接近になります。この大中小には厳密な定義はないのですが、火星の近日点(軌道が太陽に近くなる点)付近で地球が火星に並ぶときを大接近、反対に遠日点(軌道が太陽から遠い点)付近で並ぶ時を小接近と言います。上の図をクリックして拡大すると、4年前、2018年の大接近から2035年まで2年2ヶ月ごとの各接近の、年月日、地球との位置関係、距離、明るさ、視直径を読み取っていただけます。 

 

火星星図2022.001.jpeg

今回の見どころは動きです
今回の火星はおうし座方向に見えるタイミングで、内側から地球に抜かれます。かけっこでも車でも列車でも自分が相手を抜くとき、自分から見ると相手が下がっていきますね。火星が太陽を回り星空に対して動く向きは図の右から左(順行)ですが、10月30日から翌2023年1月13日までは左から右へ下がって見えます(逆行)。今回の接近時は、火星の周囲に明るく目立つ星が多いので、火星の動きをつぶさに見ることができます。

  
火星の模様はもともと淡いものです
接近中の火星を望遠鏡で見ると、極冠と呼ばれる白いところが見えることがあります。地球と同じく火星の極地域も寒いので、ドライアイスや氷が見えているのです。大接近の際には火星の地軸の傾きのおかげで南極冠が見やすくなります。 

それ以外の火星面の模様はとても淡く見えにくいものです。インターネットなどでは、火星探査機や宇宙望遠鏡の映像や、画像処理を施して地球大気の揺らぎを補正した画像がたくさん公開されていますが、実際に望遠鏡を覗いた時に見える火星は、赤くぼんやりとしています。

 

火星を望遠鏡で見てみたら
大気の揺れも含めて、肉眼で見た雰囲気に撮影した前回の接近時の火星の動画です。日を追って追加していきます。中口径の望遠鏡で、普通からちょっと悪いシーイング(大気によるゆらぎ)の時の見え方に相当します。火星の模様はこれくらい見えにくいものです。火星の像の上が青く、下が赤く少し色がついています。これは地球大気のいわゆるプリズム効果による色収差です。望遠鏡で覗いたときにこれが見えても望遠鏡のせいではなく自然の現象です。この動画ではそれを消したりせずにありのままでご覧いただいています。

 
mars2018_04.jpeg

接近しても火星は小さい
上の図のように大接近でも火星は小さいですね。こんなに小さくて模様も淡いからこそ、想像力を膨らませすぎた100年くらい昔の人たちには「火星人の作った運河が見えてしまった」のです。

 

名古屋市科学館の大望遠鏡で
名古屋市科学館での、今シーズンの火星をお楽しみいただける観望会は2回です。2023年1月14日のオンライン観望会「木星・火星」(申込不要)と1月28日の「火星をみる会」(要申込)です。

市民観望会の日程とお申し込みはこちら

12月上旬の最接近の頃は夜遅くにならないと火星が高く昇りません。望遠鏡で見る場合、地平線付近で大気のゆらぎの大きい状態で見るより、少々遠ざかっても大気のゆらぎの少ない高く昇った状態で見たほうがよく見えます。これらを考慮して観望会の時期を設定しています。一般に、宿泊型でない公開天文台での観望会の好機は最接近から1ヶ月ほどからになります。 

 

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