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地下から地球を解き明かす-ボーリングコア-

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展示作品の狙い

地下深部から取り出した岩石や地層から科学者らはどのようにして何を読み解くのか、その醍醐味を感じていただく展示です。


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知識プラスワン

【地層から過去を解き明かす】
 まずは、名古屋市科学館の地下のボーリングコアを見てみましょう。一番上の層には、融けたガラス瓶が含まれています。つまり、その地層ができたときにガラス瓶が存在し、それが融けるほど高温になったことがわかります。これは戦災を示している遺物と言えます。その下の地層は、主に中世頃の地層だと考えられています。それは当時の焼き物などが見つかるからです。その下は古墳時代。そのまた下は縄文時代です。このように、古い時代から順に積み重なっている地層を調べるということは、埋もれた遺物から過去を推定することなります。
【小さな化石が役に立つ】
 化石は過去を知る有力な手がかりですが、わずか直径数センチのボーリングコアに大きな化石が入っていることは稀です。そこで、有効なのが「微化石」です。微化石は、顕微鏡を使わないと見えないくらい数ミリ以下の小さな化石のことで、有孔虫、珪藻、放散虫などのプランクトンの殻や、花粉、胞子などがあげられます。普通の化石よりも、少ない試料から大量の標本を得ることができるので、ボーリングコアの研究ではたいへん重要です。
 多くの微化石は、広範囲に分布するうえに、短期間で形態や種が変化していることがわかっており、そのような種類の微化石が見つかれば年代が決定できます(示準化石)。また、プランクトンや花粉などは種類によって生息環境が違いますので、当時の環境(気温・水温・塩分など)を知ることができます(示相化石)。さらに、微化石に含まれる酸素同位体を用いて当時の気温を推定することもできます。
【境界部がおもしろい】
 地下の物質は堆積物(岩)ばかりではありません。マグマが固まった岩石(火成岩)や高温高圧で再結晶した岩石(変成岩)もあります。でき方がちがう岩石や堆積物が接していれば、そこに時代のギャップがあることを示しています。たとえば、火成岩と堆積岩が接していれば、マグマが固まった後に冷えてからその上に土砂などが堆積したか、堆積物が固くなってからマグマが入り込んできたか、あるいは岩盤が断層でずれたかの可能性があります。でき方が違う岩石が接している境界部分は、過去の何らかの現象の記録ですので、科学者の興味がそそられる部分です。
【いろいろな分析を通して地下を調べる】
 調査目的に応じていろいろな分析も行われます。岩石を研究する場合、偏光顕微鏡で観察してみるのが基本です。どのような鉱物が含まれており、どのような組織をしているのか分かります。場合によっては、どんな成分がどのくらい含まれているか分析することもあります。岩盤の強さや地下水の通りやすさを調べるためには、空隙率、粒度、割れ目頻度などが測定されます。ボーリングコアは普通では見られない地下のことを調べる貴重な試料なのです。
 ボーリングによってできた穴には、地下水位計や地震計などを設置し、地下環境の状態をモニタすることもあります。坑内に湧き出た地下水を採取して、湧出量や溶けている成分を調べる場合もあります。これら様々な測定・分析によって、地下に記録された過去の記録や現在の地下環境の状態が研究されています。



【 参考資料 】

■ 参考資料
先端巨大科学で探る地球(2008)金田義行・佐藤哲也・巽 好幸・鳥海光弘(東京大学出版会)
■展示協力
産業技術総合研究所地質総合センター、日本原子力研究開発機構、DOWAホールディングス株式会社、住友金属鉱山株式会社、名古屋市見晴台考古資料館、国際日本文化研究センター安田喜憲教授
■著者(日本語)学芸員 西本昌司

 

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