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地下へ到達する-地球深部探査船「ちきゅう」-

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展示作品の狙い

 足下にある地下のことは月のことよりもわからないと言われます。地下深部の物質を直接観察するには掘ってみるしかありません。ここでは、地球深部を掘削する技術について紹介します。

知識プラスワン

【ボーリングとは】
 地中深くに穴をあけながら掘り進むことをボーリングと言います。ボーリングは、地下深部の物質を直接観察する有効な手段で、温泉や石油を掘り出すために不可欠な技術です。これまで人類がが掘った最も深い穴は、ロシア北部のコラ半島の深さ12262mの学術調査ボーリング孔です。
 ボーリングでは、先端にドリルビットを付けた中空の金属製パイプ(ドリルパイプ)を回転させながら岩盤を削っていきます。掘り進めるにつれ、ドリルパイプの中に地下物質が入っていきます。これを回収したのが「ボーリングコア」です。
【ボーリングの技術〜ドリルビットと泥水(でいすい)】
 ドリルビットは、掘削する地層や岩石によって変えられます。軟らかい地層の掘削では鋼鉄の刃先で良いのですが、硬い岩盤の掘削になるとタングステン・カーバイドやダイヤモンドなどが埋め込まれた鋼鉄を使います。摩擦とそれにより発生する高い熱に耐えるようにするためです。ドリルビットの選定は、コストや掘削時間に大きく影響します。このため、地質を見ながらドリルビットを慎重に選ぶことが求められます。
 岩盤を掘れば、削りくず(カッティングス)ができます。これを地上に出していかないと掘り進められません。そこで、ドリルパイプの外径より少し大きな穴を掘削し、穴の壁とドリルパイプの間を通して、ドリルパイプの中から注入した特殊な粘度を加えて作った水「泥水(でいすい)」とともに、削りくずを地上に上げるようにしています。この際、単なる水ではなく泥水を使うのは、掘削した穴が周囲の岩盤の圧力に負けて崩れないよう、穴の中の圧力を上げるためです。泥水は、摩擦で熱くなるドリルビットを冷却する役割も果たします。ボーリングでは、どのような泥水を使うかが大変重要なノウハウとなっています。
【海洋掘削の技術〜ライザー掘削とDPS】
 海底下でボーリングを行うと、注入した泥水が削りかすとともに海底面から海水中に吹き出してしまいます。これでは大量の泥水を準備しておかねばならず非効率です。そこで、泥水を海上の掘削施設まで回収・循環できるよう、ドリルパイプの周りに別のパイプを設けて2重管とし、2つの管の間を泥水が削り屑とともに通す方法があります。この掘削方法を「ライザー掘削」、その外側の管を「ライザー管」といいます。
 海上からボーリングできる設備を持った船が、掘削船(ドリルシップ)です。船から海底を掘り進めるのには、潮流、風、波がある海上で、船を定位置ににとどめておく必要があります。そこで、GPSやその他の位置センサーで自動的に船の位置を維持する「船位保持システム(DPS)」が必要となります。
 海底下数千メートルまで掘削するには、これら高度な技術力が要求されます。
【地球深部探査船「ちきゅう」】
 日本が世界に誇る最新鋭の探査船が「ちきゅう」です。「ライザー掘削」が可能で、「船位保持システム(DPS)」を搭載しています。目指すは水深4,000mの海底の下、7,000mの地下深部、海面からだと11,000m下です。海底地殻を掘り抜くことができれば、世界ではじめてマントルに到達できます。巨大地震発生のしくみ、将来の地球規模の環境変動、生命の起源、海底資源などの解明のため、地下深部の物質をボーリングコアとして掘り出そうとする国際協力事業「統合国際深海掘削計画(IODP)」の主力船となっています。世界中の科学者が協力して研究開発を行う、いわば“地下探査の国際宇宙ステーション”です。

 


【 参考資料 】

協力
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
参考資料
金田義行・佐藤哲也・巽 好幸・鳥海光弘(2008) 先端巨大科学で探る地球. 東京大学出版会
海洋研究開発機構(JAMSTEC)ちきゅう発見:http://www.jamstec.go.jp/chikyu/jp/CHIKYU/
高知コアセンターウェブサイト:http://www.kochi-core.jp/
文 学芸員 西本昌司

 

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