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地圏−マントルと核

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展示作品の狙い

 マントルや核がどのような物質でできているのか知っていただくとともに、それらが長い時間をかけてゆっくり流動することで、地球表層環境に影響を及ぼしていることに興味を持っていただきたいと思います。

知識プラスワン

【マントル】
 地殻の下には、岩石が融(と)けたマグマがあるわけではありません。「カンラン岩」という岩石でできています。カンラン岩は、カンラン石と輝石(きせき)のほか、スピネル、ザクロ石、斜長石などを少し含む岩石です。ちなみに、カンラン石は「ペリドット」という名前で宝石にされていますので、マントルは宝石だらけということになります。
 ただ、もっと深いところ(深さ約660kmより下)では、成分はカンラン岩と同じなのに、違う物質(ペロブスカイト)になっています(相転移)。圧力が高すぎて、原子の並び方が密になってしまうためです。そこで、カンラン石が存在できるまでの深さを上部マントル、それより下を下部マントルと呼んでいます。
 マントルの一番底(2,700km以深)には「D"層(Dダブルプライム層)」と呼ばれる緻密な岩石の層があると推定されています。これは海洋プレートが沈んできて溜まったもので、それが融(と)けてマントルの上昇流が発生を引き起こしているのではないかと考えられています。一方で、ペロブスカイトが相転移しているのではないかという説もあり、はっきりしていません。
【マントルプルーム】
 水や空気が、下から温められて、上から冷やされると「熱対流」が生じます。同様に、マントル物質も長い時間をかけて熱対流をしています(マントル対流)。対流ですので上昇流と下降流があり、高温で上昇する流れ を「ホットプルーム」、低温で下降する流れを「コールドプルーム」と呼んでいます。プルームとは、もともとは、煙突などからもくもくと湧き上がる「煙」のことを意味する語です。マントルの中でプルームがどのような動きをしているのかは、地球内部を伝わる地震波による研究(地震波トモグラフィー)やコンピュータシミュレーションから推定されます。どうやら、その動きはラバランプで見られる対流と似ているようです。この対流が、地表に熱を運び、火山活動やプレート運動を作り出していると言えます。
【ダイヤモンド】
 同じ成分なのに、別の鉱物に変わる(相転移する)鉱物として、よく知られているのが石墨(せきぼく:炭素)です。よく、炭(すみ)をぎゅっと押しつぶせばダイヤモンドになるという話を聞いたことがないでしょうか。ダイヤモンドは、地下100kmを超えるような高圧の場所でないとできません。
 ダイヤモンドは「キンバーライト」という岩石に含まれています。キンバーライトのマグマは、地下100〜300kmのマントル中で発生し、高速で一気に上昇して噴出したと考えられています。ゆっくり上昇していては、石墨へ相転移をしてしまうからです。地下深部のことは、地下深部でできた鉱物が教えてくれるというわけです。
【核(コア)】
 核(コア)は「外核」と「内核」に分かれています。どちらも、おもに鉄とニッケルの合金ですが、外核は液体で、内核は固体です。液体の鉄が流動すると電気が流れ、地球に磁場が生じます(地磁気)。おかげで、方位磁石で方角を知ることができるわけですが、それよりも重要なのは、太陽から吹き出すプラズマの流れ(太陽風)の直撃から地球の大気を守っていることです。 地磁気がなければ、地球の大気は太陽風にはぎとられ、生命の存在しない星になっていたことでしょう。地磁気は、まさに「地球のバリア」と言えます。地球奥深くの流動現象が、地表に生物がすめる環境をつくっているのです。

 


【 参考資料 】

参考資料
カラー版徹底図解 地球のしくみ (2006) 新星出版社編集部
平 朝彦・徐 垣・ 末廣 潔・木下 肇 (2005) 地球の内部で何が起こっているのか? 光文社
海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部ダイナミクス領域ウェブサイト http://www.jamstec.go.jp/ifree/
文 学芸員 西本昌司

 

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