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地圏−地殻

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展示作品の狙い

ショーウインドウのようにディスプレイされた岩石や鉱物標本などを見ながら、大陸地殻と海洋地殻の違いを知っていただくとともに、地球内部構造やプレートテクトニクスに興味を持っていただきたいと思います。

知識プラスワン

【2つに分かれている地殻】
 地圏のうち最も外側を薄い皮のように覆っているのが「地殻」です。地殻は、さらに大陸地殻と海洋地殻に分かれています。たまたま海面から上になっている部分と海面下になった部分というわけでなく、大陸地殻と海洋地殻はそもそも構成物質が違います。大陸地殻は地圏の中では一番軽いので、海に浮かぶ氷山のように高い出っ張りをつくり、海面の上に顔をだしてしまうのです(=陸)。
【大陸地殻は複雑】
 大陸形成のメカニズムは、まだ解明されているわけではありません。ただ、おおざっぱに言えば、海洋地殻が融けて軽い成分が分離したものが大陸地殻だと言えるでしょう。大陸地殻ができている場所が、海洋地殻が沈み込んでいる「海溝」に沿ってできる火山列島(「島弧(とうこ)」)だと考えられています。日本列島は代表的な島弧です。島弧は、やがて大陸に衝突・合体して大陸を成長させることになります。島弧は大陸地殻がつくられている場所だと言えるでしょう。
 大陸地殻は、大気と触れているがゆえに、風雨にさらされ浸食されたり、流されて堆積したり、再び熱や圧力を受けることで様々な岩石に変わります。それでも、海洋地殻より軽い岩石ばかりなので、海洋地殻の下に沈むこんでしまうことはありません。このため、大陸地殻には古いものから新しいものまで様々な種類の岩石が蓄積されて、バラエティーに富んでいきます。
【大陸地殻の中でうまれる宝石たち】
 かつて、水晶は氷が石になったものだと信じられていました。もちろん、氷が水晶に変わるはずがないことは今では明らかです。しかし、水晶は、やはり水によって作られた鉱物です。
 水晶は「シリカ(二酸化ケイ素)」の結晶です。シリカは、ほとんどの岩石に含まれる成分ですが、高温の地下水(熱水)には溶けやすいのです。ですから熱水が冷やされたとき、溶けきれなくなったシリカが結晶となります。岩盤を貫く水晶の脈があれば、そこは熱水が通った割れ目の痕跡なのです。
 このように、地下水が岩石を少しずつ溶かしては、別の場所で再び沈殿させる作用が、地下環境における物質移動の重要な役割を担っています。様々な岩石がある大陸地殻には、様々な成分が地下水に溶け込み、様々な鉱物の結晶を作り出しています。
 一方、割れ目のないようなところでも大きな鉱物の結晶ができていることがあります。固体である岩石の中で結晶が成長するというのは、にわかには信じられないかもしれません。しかし、極めて長い時間をかければ、元素は岩石の中を拡散して移動します。わずかでも隙間があれば、すばやく元素は移動するでしょう。わずかな水があれば、溶けやすい元素ほど移動しやすいでしょう。このように地下環境においても、水が物質循環を担っています。
【海洋地殻はシンプル】
 大陸地殻に比べると、海洋地殻はシンプルです。陸地から離れた海洋底は、どこも玄武岩ばかりで、その上を生物の死骸などが降り積もった堆積物が覆っているだけです。しかも、古い時代の玄武岩はありません。
 海洋地殻がつくられる場所は、海底火山の列「中央海嶺」です。そこでは、海洋地殻が引き裂かれ、その裂け目を埋めるために熱い地下物質が上昇してきます。海底下数十kmのところに上昇してきたマントル物質(カンラン岩)は少しだけ融けて、玄武岩質マグマの小さな滴みたいなものができます。これがマグマのもとです。それが鉱物の粒の隙間を縫うようにしてゆっくりと上昇し、たくさん集まって、ついには海底に流れ出ます。
 こうして中央海嶺でできた玄武岩が海洋地殻となり、プレート運動により移動し、海溝に沈んで行きます。このため海洋地殻は、海嶺から離れるほど古くなります。いわば、海洋地殻は常にリニューアルされているのです。
【海底資源】
 海洋底には海底熱水鉱床、マンガンノジュール、コバルト・リッチ・クラストの3種類の鉱物資源が見つかっています。
 海底熱水鉱床は、チムニーと呼ばれる熱水噴出孔付近に沈殿した銅、鉛、亜鉛、金、銀などを含む金属硫化物鉱床です。マンガンノジュールは、海底堆積物中に半分くらい埋没した状態で見つかる直径2〜15cmほどの球形あるいは楕円状の塊で、鉄やマンガンのほか、ニッケル、銅、コバルトなども含みます。コバルト・リッチ・クラストはマンガンノジュールと似ていますが、コバルトを多く含み海山上部の玄武岩を覆う厚さ数mm〜数10cmの殻のようになっています。
 さらに、熱水噴出孔周辺や海底下地下深部などには、これまで知られていなかったような生物が見つかっています。未知の有用な微生物などが見つかる可能性もあり、海洋底はまさに資源の宝庫といえるでしょう。

 


【 参考資料 】

参考資料
カラー版徹底図解 地球のしくみ (2006) 新星出版社編集部
鎌田浩毅(2004) 地球は火山がつくった?地球科学入門 (岩波ジュニア新書)
地学雑誌特集号「地殻からマントルへ〜モホ(面)とは何か?」 Vol. 117 (2008)
文 学芸員 西本昌司

 

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