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気候変動を探る

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展示作品の狙い

 気候変動のメカニズム解明が進められています。地球温暖化が注目される今、宇宙・地下の研究そして情報技術を駆使することにより、科学者や技術者らの地道な研究が未来を切り拓いていることを知っていただきたいと思います。

知識プラスワン

【複雑な気候変動のメカニズム】
 地球平均気温が過去100年で0.7℃くらい上昇していることは、科学者による地道な気象観測からわかった事実です。人間活動により大気中に放出された温室効果ガス(おもに二酸化炭素)の増加が原因だとする仮説が有力であることはご存じのとおりです。
 しかし、この仮説を証明することは容易なことではありません。気候変動の要因としては、太陽放射量、アルベド(入射光と反射光のエネルギーの比)、温室効果ガスの濃度、微粒子の量、海水温、植生、地形など多くのことが考えられるうえ、それぞれが様々な空間・時間スケールで相互に影響しあい、極めて複雑となるからです。地球全体的にわたる気候変動を理解するためには、これまでに得られている知識や技術を総動員して研究に取り組む必要があります。
【宇宙から解き明かす気候変動】
 宇宙からの地球観測(リモートセンシング)技術は、地球表層で起こっている現象を俯瞰することを可能にしました。地表から反射や散乱あるいは放射された電磁波を衛星に搭載されたセンサーによって繰り返し観測・解析することで、地表付近で起こっている現象を調べることができるようになりました。今やすっかりおなじみの気象衛星「ひまわり」もその代表的な衛星です。おかげで、気象現象について理解が進みました。それ以外にも、世界中で様々なセンサーを搭載した衛星が打ち上げられており、地球表層の大気・海洋・大陸間を熱や物質が循環することで互いに影響しあう複雑な地球のシステムを解き明かそうとしています。
【地下から解き明かす気候変動】
 地下物質(地層・岩石)や南極の氷の研究は、過去の気候を知る手がかりとなります。南極氷床の中には数十万年前までの空気や微粒子が閉じ込められており、当時の大気組成を直接分析できます。地層中のプランクトン(珪藻・放散虫・有孔虫など)の化石は、いつ頃どのような環境で生きていたのか知ることができる有用な記録です。堆積物の化学組成などから、過去の大気組成の推定も試みられています。これらの記録を読み取ることで、科学者は過去の地球環境をさぐろうとしています。現在起こっている気候変動は地球史の中で例がないほど急激だということを教えてくれたのは、このような研究の成果です。
【研究を支える情報技術】
 地球環境における様々な現象の現状を正確に把握するためには、広範囲を長期間にわたって,高頻度かつ高精細に観測・解析することが必要です。そのためにはスーパーコンピュータなどの情報技術が欠かせません。将来の気候変動予測もコンピュータによるシミュレーションによるものです。
 このように、宇宙・地下の研究、そして情報技術の開発によって、気候変動のメカニズムは少しずつ解明されてきました。しかし、地球環境に関わる現象はまだわからないことが多く、様々な分野の科学者が結集して研究が進められています。

 


【 参考資料 】

参考資料
宇宙航空研究開発機構(JAXA)ISSウェブサイト:http://iss.jaxa.jp/
海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球シミュレータセンターウェブサイト:http://www.jamstec.go.jp/esc/
国立極地研究所ウェブサイト「南極サイエンス基地」http://www.nipr.ac.jp/~academy/science/hyosyo/
0.1ミリのタイムマシン?地球の過去と未来が化石から見えてくる。須藤 斎(2008)くもんジュニアサイエンス
チェンジング・ブルー-気候変動の謎に迫る- 大河内直彦(2008) 岩波書店
地下環境研究のフロンティア〜地質学に関わる新展示企画アプローチ〜(2010) 西本昌司(名古屋市科学館紀要第36号)
文 学芸員 西本昌司

 

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