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水分子

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展示作品の狙い

 地球上には1億種類もの物質があります。しかし、固体・液体・気体の3つの状態を簡単に見ることができるのは「水(氷・水・水蒸気)」だけです
 「氷(固体)が水(液体)に浮く」ことに、私たちは何も不思議さを感じません。しかし、ほとんどの物質は、固体が液体より重く下に沈みます。自然界では、水は変わり者なのです。
 この展示では、そうした水の奇妙なふるまいの原因が何かを映像と分子模型で解説しています。


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知識プラスワン

【水の分子と水素結合】
 水の分子は酸素原子1個と水素原子2個からできています。水分子は非常に小さく、コップ1ぱいの水(約180ml)でおよそ6,000,000,000,000,000,000,000,000個です。
 酸素原子は電子を引きつける力が強いため、「く」の字の形をしている水分子には、電気的な偏りが生じます。酸素原子はややマイナスに、2つの水素原子のほうはややプラスになります。そのため、となりの水分子どうしは、電気的に強く引き合うことになります。これを「水素結合」とよんでいます。
【氷が水に浮く不思議!?】
 氷は、水分子が規則正しく並び、ずいぶんすきまが多い構造をしています。
 どんな物質でも、液体のときは分子がばらばらに並んでいて、固体になると規則正しく並ぶという性質があります。しかし、水以外の物質は、固体になったとき、もっとぎっしりつまった状態で並び、ばらばらに並んだ液体より重くなります。
 一方、氷の中の水分子は、まわりの4個の水分子と水素結合によって四面体型に結びついています。そのため氷はすきまの多い並び方になってしまうのです。その結果、密度が小さくなり「氷が水に浮く」わけです。
 もし、氷が水より重かったらどうなるでしょう。
 池の魚は冬の間、底の方でじっとしています。氷点下の水面で冷やされた水が氷になって下に沈む、ということが繰り返されます。そして氷が池の底からどんどんたまり、池全体が凍ってしまうでしょう。魚が冬を越すことができるのは、水が変わり者だったおかげといえるでしょう。
 また氷に圧力をかけると、体積を小さくする方向へ、つまり氷から水へと変化します。これも他の物質には見られない特徴です。
【水と熱の関係】
・「比熱が大きい」
 水はほかの物質にくらべ、比熱が大きい、つまり温度を上げるのに多くの熱エネルギーを必要とします。つまり暖まりにくく冷めにくいということです。もし水がなければ、砂漠のように昼は非常に暑く、夜は非常に寒くなってしまうでしょう。
・「蒸発熱(気化熱)や凝固熱が大きい」
 固体から液体へ、液体から気体へというように状態が変化するときも、熱エネルギーが必要です。夏の夕方に道や庭に水をまくと涼しくなるのは、水が水蒸気になるとき、周囲から多くの熱を奪うからです。
・「融点・沸点が異常に高い」
 一例として融点・沸点を、水と硫化水素とで比較してみます。水は融点0度、沸点は100度です。硫化水素は、噴火口や温泉でおなじみの臭いガスの成分で、融点−85.5度、沸点−60.7度です。硫黄原子1個と水素原子2個から成り、水分子に似た分子構造をしていますが水とは相当に差がありますね。水の融点や沸点が異常に高すぎるのです。
 これらの水の奇妙な性質は、「水素結合」によって強く結びついた水分子どうしを引き離すために、大きなエネルギーが必要となることが原因です。
【水は表面張力が大きい】
 金属(水銀など)以外で、最も表面張力が大きいのが水です。
 表面張力は、分子どうしがお互いに引きつけあうことによって生じます。水素結合によって引きつけあう力が強いため、表面張力が大きくなります。
【水は、いろいろなものをよく溶かす】
 水は、雨や雪、川、水、水蒸気などというように絶えず姿を変えながら地球上をめぐっています。水はものを溶かす力がとても大きく、いろいろな物質を溶かしこんで運んでいます。例えば海水1リットルにはいろいろな物質が約35g(そのうち食塩24〜28g)も溶けています。
 水で洗濯ができるのも、水がものを溶かす力が大きいおかげです。よごれを水に溶かすことができるからです。水分子には電気的にかたよりがあります。そして他の物質にも、プラスの電気やマイナスの電気の部分を持つ分子やイオンがあります。水はこのような似た物質をよく溶かします。
 水道水など普通の水にはいろいろな物質が溶けこんでいます。この不純物をとりのぞいて作られた「超純水」は、ものを溶かす能力が非常に大きく、コンピュータ部品のような精密機械のよごれを洗うのに使われています。



【 参考資料 】

<参考資料>
氷はなぜ水に浮かぶのか(1998)  稲場秀明(丸善)
水の総合科学(2000)  播磨裕 他(三共出版)
氷の科学(1988) 前野紀一(北海道大学図書刊行会)
絵と文 学芸員 石田恵子

 

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