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熱や光で色変化

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展示作品の狙い

 熱で色が変わる展示、光(紫外線)で色が変わる展示の2つがあります。
 一つめの展示では、壁にはってある色シートを手の体温で温めると色が消えますが、温めるのをやめると冷えて再び色が現れます。
 二つめの展示では、ライトペンから出る紫外線により、サングラスのレンズの色が濃い色に変化します。ライトペンで好きな字を書いてしばらくたつと、レンズの色は元にもどります。
 このように物質が外からの刺激(熱・光・電気・溶媒の種類・圧力など)によって、可逆的に色が変わる現象を「クロミズム」といいます。刺激の種類によって「○○クロミズム」といういい方をします。またそうした機能をもつ材料のことを「○○クロミック色素」や「○○クロミック分子」とよんでいます。


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知識プラスワン

【サーモクロミズム】
 温度の変化によって可逆的に変色する現象を「サーモクロミズム」といいます。
 展示している色シートには、非常に小さなカプセル(マイクロカプセル)をふくんでいる特殊インキが使われています。このマイクロカプセルには3種類の成分が入っていて、熱により変化し無色になります。冷えると再び元の状態になり色が現れます。
 (別添の図)
  パイロットコーポレーションのホームページより引用
 このインキのしくみは、摩擦熱で消せるボールペンや、お湯を入れると色が変わるマグカップ、氷水を入れると色が変わるガラスのコップなどに利用されています。
 ところで、ポイントカードや定期券などで、文字の書き換え可能な青〜黒色文字のカードや銀色面に白い文字のカードを見たことがありますよね。リライトカード(リライタブルカード)とよばれるもので、しくみは少し違いますが、これもサーモクロミズムを利用しています。青〜黒文字のカードでは、180度で加熱し急冷した部分が発色して文字となり、その後120〜160度で加熱しゆっくり冷やすと文字が消えます。この現象は繰り返すことができるので、文字を何度も書き換えることができます。
【フォトクロミズム】
 光で色が可逆的に変化する現象を「フォトクロミズム」とよんでいます。ある波長の光で変色し、別の波長の光や熱で元にもどります。
 展示しているのは調光サングラスのレンズです。調光サングラスは、紫外線の多い屋外でレンズが濃い色になり、室内で元にもどるというサングラスです。
レンズには無色のハロゲン化銀がふくまれています。ところが、このレンズに紫外線があたると、銀とハロゲン(塩素など)に分解し、銀が可視光を通さないため濃い色になります。紫外線があたらなくなると、銀とハロゲンは再び結合しハロゲン化銀にもどります。そしてレンズの色も薄くなっていくというわけです。
 濃淡の変色だけでなく、鮮やかに変色するフォトクロミック分子もあります。太陽光(紫外線)で色が変わる絵の具、紫外線チェックカードなどに利用されています。
 色が変わるのは、分子の構造が変化し、吸収する光の波長が大きく変わってしまうからです。色だけでなく屈折率をはじめとしたさまざまな性質も変わります。こうした特徴を利用し、フォトクロミック分子は「光記録」や「光スイッチ」への応用に期待がもたれています。



【 参考資料 】

協力
パイロットインキ株式会社(THE PILOT INK COMPANY, LIMITED)
参考資料
機能性色素のはなし(2005) 中澄博行(裳華房)
日常の化学事典(2009) 左巻建男監修(東京堂出版)
PILOT(パイロット)のホームページ http://www.pilot.co.jp/frixion/info/
RICHO(リコー)のホームページ
 http://www.ricoh.co.jp/technology/tech/004.html
文 学芸員 石田恵子

 

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