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金属疲労

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展示作品の狙い

 あなたがハンドルを回すと、6種類の金属板が振動します。これは実際に、金属板を何回も繰り返し振動させ、つまり繰り返し力を加え、金属疲労をおこさせる実験展示です。金属が破断するまでにそれぞれ何万回(?)振動させたかをくらべてください。
 材料が繰り返し力を受けることで強度が下がる現象を「疲労」といいます。金属の場合は「金属疲労」として一般に知られていますが、他の材料でも起こり得る現象です。

知識プラスワン

【材料の強さ】
 一口に材料の強さといっても、硬いとか壊れないというような機械的強さ、薬品やさびなど腐食に対する強さなどがあります。
 さらに機械的強さには、引っ張りに対する強さ、圧縮に対する強さ、衝撃に対する粘り強さ、硬さ、低温・高温環境の下での強さなど、さまざまな強さがあります。しかしながら一般的に強さ・強度というときは、「引張強さ」のことを指します。金属は引張強さが大きな材料です。例えば鉄鋼の引張強さはガラスや木の10倍ほど、コンクリートの500倍ほどです。
 それでも金属を大きな力で引っ張ると壊れますが、その壊れるか壊れないかぎりぎりの最大の力が「引張強さ」の値となります。
【金属疲労】
 ところが、引張強さよりはるかに小さな力でも、繰り返し力が働くと金属が破壊されてしまうことがあり、「金属疲労」とよばれています。
 覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、1985年に日本航空のジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落して大惨事となりました。このとき飛行機の圧力隔壁(乗客室と後方の尾翼を仕切る壁)が金属疲労により破壊され、破片が尾翼を破壊して操縦不能になったことが墜落の原因でした。その飛行機は事故の7年前に着陸時にしりもち事故をおこしていたのですが、修理ミスで小さな亀裂が生じていました。圧力隔壁は、上空では外側が低い気圧になるので客室側から圧力を受けます。飛行するたびにそうした力が繰り返し作用して、亀裂が大きくなっていったのです。
 金属疲労は、金属材料に微小な亀裂を生じ、繰り返し力を受けることでその亀裂が次第に大きくなって破壊されると考えられています。そしてその破壊された面を肉眼で観察すると、亀裂の起点を中心に同心円状の線(貝がら模様とかビーチマークとよばれる)が見られることが多いです。また走査電子顕微鏡で観察すると、細かい連続した縞模様が見られ、縞の数は繰り返しを受けた力の回数に相当します。
(注1)金属疲労は学術用語ではありません。上述の事故で金属疲労ということばで報道され、広く使われるようになりました。
(注2)文中の「力」は「応力」を意味しています。応力とは、単位面積あたりの力(外から働く力に対し生じる抵抗する内力)のことです。

 


【 参考資料 】

参考資料
金属疲労のおはなし(2007)西島敏(日本規格協会)
強さのおはなし(1997)森口繁一(日本規格協会)
材料力学入門(2004)久保田浪之介(日刊工業新聞社) 
独立財団法人 物質・材料研究機構のサイト
  http://www.nims.go.jp/publicity/digital/gallery/vk3rak000000jdkv.html
文 学芸員 石田恵子

 

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