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展示ガイド

放電ラボ

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展示作品の狙い

 轟音をともなう激しい電気スパークを見てもらいます。強烈な体験と共に、放電現象がどのようなメカニズムで起きているのかを理解してもらいます。

知識プラスワン

【テスラコイル】
 そびえる2基の塔はテスラコイルといいます。テスラコイルはニコラ・テスラ(1856-1943)によって発明された高周波・高電圧発生装置です。展示品は、 1万5千ボルトの電圧でコンデンサにためた電気をスパークギャップで放電させ、その電流を1次コイルに流し、巻数比の非常に高い2次コイルに約120万ボルトの電圧を発生させるものです。
 2つのコイルを接近させて、1つめ(1次コイル)に交流電流を流すともう1つ(2次コイル)にも電気が流れます。このときコイルの巻数比によって、2次コイルに発生する電圧を変化させることができます。このような装置はトランス(変圧器)と呼ばれ、パソコンのACアダプタや電柱の変圧器など身近にあります。テスラコイルの大きな特徴は1次コイルと2次コイルの巻数比が極端に違うことです。また普通のトランスはコイルの中に鉄芯などが入っていますが、テスラコイルの場合はなにも入ってない空芯になっています。
 しかし、テスラコイルは通常のトランスの原理だけでは考えることができない、共振や進行波などの諸条件が複雑にからみあった原理が働いて高電圧が発生している、未だ不明な点が多いコイルです。
 展示品では2基のテスラコイルで実験を行っていますが、これはより大きな放電を見てもらうためです。2基なければ動作しないわけでなく、1基だけでテスラコイルとして成り立っています。また、テスラコイルは初期の無線機の発振回路などに小型のものがよく使われました。
【放電 稲妻 スパーク】
 テスラコイルから放たれるスパークは雷の稲妻と同じです。どちらも、空気中を電気が流れているものです。空気は通常では電気を流しませんが、非常に強い電圧がかかると電気が流れます。電気の通り道にある空気中の気体分子は、高電圧で加速された電子によってイオン化され光を放ちます。テスラコイルのスパークも稲妻も青紫色をしていますが、これは空気の成分である窒素分子と酸素分子による色なのです。他の気体中でスパークを行えば、雷の色は違ったものになります。
 テスラコイルも稲妻も激しい音がします。これは、電気の通り道の空気がとても高熱になるためです。急激に温度が上昇し、空気が急膨張することによって音が発生します。
【テスラコイルとニコラ・テスラ】
  ニコラ・テスラはこのテスラコイルを用いて「世界システム」を作り上げようとしました。世界システムとは、無線によって電信・電話・写真転送から送電までを行うシステムです。現在では、無線による情報のやりとりは日常生活と密着していますが、当時は電波の存在がようやく実験で証明(1888年)されたばかりのころです。無線通信が存在していない時代に、世界を無線でつなげる構想をテスラは持っていました。彼は近距離の無線の送受信に成功し、無線電話やラジオの基本原理となるものを発明していきました。その後、無線通信のみに彼が研究を集中させていれば、マルコーニによる大西洋を横断する長距離無線通信(1901年)やラジオ放送の開始(1906年)などは彼の功績になったと言われています。しかし、彼は無線送電を含む世界システムの構築にまい進したため、それらの栄誉を受け取ることができませんでした。彼が夢見た無線送電は現代でも実現していませんが、宇宙で発電して地球へ電力へ送るシステムとして研究がされています。
【ニコラ・テスラ】
 ニコラ・テスラは磁束密度の単位「T(テスラ)」に名前を残しています。テスラと同時代の発明家エジソンの名前は誰もが知るところですが、 テスラの功績から考えると彼の知名度はあまりにも小さいと言わざるを得ません。無線通信の基本的な発明だけでなく、私たちが使っている電気にも彼の発明が重要な役割りをはたしています。
 電気には「直流」と「交流」の2種類の電流の流れ方があります。私たちの身の回りの家電製品は「交流」で動いています。その交流で動くモーターを発明したのはテスラですし、交流発電機を発明したのもテスラです。テスラの交流システムは高額な特許料でウェスティングハウス社が買取りました。そして、発電所からの送電を交流で行なおうとするウェスティングハウス社と、直流送電をすでに開始していたエジソンとの間で「電流戦争」と呼ばれる激しい争いが生じました。相手の電流がいかに危険なものであるのかを示すために電気処刑椅子まで作られたほどです。現在では、送電は交流で行われています。

 


【 参考資料 】

参考資料
超人 ニコラ・テスラ(1993)新戸雅章(筑摩書房)
文 学芸員 山田吉孝

 

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