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物理現象に見る数学

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展示作品の狙い

 曲線には様々なものがあります。小中学校で習うものでも、円や放物線や双曲線などがあります。様々な曲線の中で、物理現象が関係するいくつかの曲線を紹介します。

知識プラスワン

【サイクロイド曲線】
 サイクロイド曲線は、直線上を円が転がるときに、円のある一点が描く曲線です。この曲線を上下逆さまにしたものが、展示品のボールを転がす坂道の形です。この坂道の特徴は、ある位置から別の位置(最初よりは低い位置)まで、もっとも短時間で行くことができるということです。ただし、止まった状態から重力で引かれて落ちていく場合という条件がつきます。
 ある2地点を結ぶ坂道は直線や曲線を何通りも考えることができますが、それらの中で最も早く到達できるのが、サイクロイド曲線を上下逆さまにしたものです。この曲線のことを、最速降下曲線と呼びます。
 また、サイクロイド曲線の坂道はどの位置からボールを転がしても、一番下まで行く時間が同じになる特徴があります。
【クロソイド曲線】
 自動車を一定速度で走らせながら、ハンドルを同じ速度で回していった時の車の通り道がクロソイド曲線になります。車の描くカーブの半径はハンドルの回し始めで大きく、ハンドルを回すにつれて小さくなります。つまり、カーブが徐々にきつくなるということです。ハンドルを戻すときも同じで、その通り道はクロソイド曲線になります。自動車でカーブを曲がるときに、ハンドルを同じ速度で回していって戻すというのは自然なことなので、道路がクロソイド曲線に従って作ってあれば、とても走りやすい道になります。これが、道路のカーブが始まりから終わりまでが一定の曲線、つまり円の一部であるとすると、カーブに入った途端にカーブに合わせてハンドルをその角度まで急に回さなければならず、カーブを出た途端に瞬間的に真っ直ぐに戻さなければなりません。それは、とても危険な運転になります。
 高速道路のランプウェイなど、多くの道路でクロソイド曲線が取り入られています。また、ジェットコースターの縦回転の曲線もクロソイド曲線が使われています。直線と円弧でジェットコースターが作られていると、円弧にさしかかった途端、遠心力が乗車している人に急にかかり危険な状態になりかねません。
【放物線】
 放物線は文字通り、物を空中に投げたときの通り道です。また、噴水で水が山なりになっている曲線が放物線です。物を投げたときに、水平方向には一定速度で動きますが、鉛直方向は重力に引かれて上へ向かう速度は遅くなり、やがて下向きに速度を増していきます。それによって描かれる山なりの曲線が放物線といいます。そして、この曲線は中学校でならう二次方程式 y=ax^2(注)で表されます。
 衛星放送の電波をとらえるためのパラボラアンテナの曲面も放物線です。正確には放物線を頂点を通る軸上で回転させた放物面です。放物線や放物面は軸に平行にやってきた光や電波を反射させると、ある一点に集める性質があります。パラボラアンテナはそうやって電波を集めます。
【カテナリー曲線】
 電柱と電柱の間の電線は重力に引かれてたわんで曲線を描いています。ロープやひも、鎖などの両端を持って引き上げたときに、ロープが描く曲線がカテナリー曲線です。従って、懸垂(けんすい)曲線とも言われます。生活の中のいたる所で見ることができる曲線と言えます。
 カテナリー曲線は、材質が持つ強さを最大限に引き出せるため建築や橋などに使われています。
※(注)この文章ではxの二乗のことを x^2 と表示しました。

 


【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
日常にひそむ数理曲線(2010)佐藤雅彦(小学館)
文 学芸員 山田吉孝

 

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