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落ちにくい円盤

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展示作品の狙い

 2枚の板の間に、アルミの円盤を落とします。板には外から所々に強力な磁石がはりつけてあります。普通ならばストンと下に落ちる円盤が、磁石の所では落ちるスピードがゆっくりになります。アルミは磁石にはくっつかないのに、この展示品ではアルミと磁石がなんらかの影響を及ぼし合っているのが分かります。これは、磁石の近くをアルミが動くと、アルミの中に渦電流という電流が発生し、その電流による磁力と板に張り付けてある磁石が引きつけあったり反発しあったりすることによるものです。それで、動きがゆっくりになります。
 展示品では渦電流という現象を、アルミ円盤の動きで理解することができます。


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知識プラスワン

 アルミや銅といった金属は、電気は流れますが、磁石にはくっつきません。しかし、動きがある場合は様子が異なってきます。例えば、100%アルミである1円玉を机の上に置いて、強力磁石を手に持ち、1円玉の上すれすれを横に移動させると、1円玉が磁石に付いてくる動きをします。また、アルミパイプを地面に垂直に立てて、中に強力磁石を入れると、パイプの中をゆっくりと落ちていきます。アルミパイプでなく、塩ビパイプで同じことをすると、磁石はストンと落ちてしまいます。アルミと磁石はくっつかないのに、磁石と何か関係があるような動きをします。
 もう少し注意深い実験を行うと、磁石をアルミに近づけていく時、アルミは磁石から離れていきます。反対に、磁石をアルミから遠ざけていく時、アルミは磁石に付いて行こうとします。この現象を展示品で観察すると次のような動きになります。展示品では磁石が固定されていて、アルミ円盤が動いています。アルミ円盤が磁石に近づいていくときは、磁石から反発する力を受けるため、押し戻され、動きにブレーキがかかります。逆に磁石から離れていくときは、磁石から引き付けられる力を受けるため、引き戻され、動きにブレーキがかかります。ただしどちらの場合も、止まってしまうと磁石からは何の力も受けないので、アルミは重力に従って落下しようとします。重力で落下する力と、アルミ円盤の動きによって発生する磁石からの力のバランスのとれた速度で、アルミ円盤はゆっくりと落下していきます。
 このような現象が生じる理由は、アルミの中に電流が発生するからです。アルミと磁石の距離が一定のとき、つまりアルミも磁石も動いていないときは、アルミの中に電流は発生しません。磁石とアルミの距離が変化する時、つまりお互いに近づくかあるいは遠ざかる時に、アルミの中に電流が発生します。この電流を渦電流と呼びます。渦電流が発生すると、その電流は磁力を発生させます。その磁力が磁石と反発あるいは引きつけあうことで、アルミの動きが変化させられます。
【アルミ円盤とプラスチック円盤】
 展示品にはアルミ円盤とプラスチック円盤が置いてあります。その2つの円盤の落ちる速度の違いを比べると、アルミの方がゆっくり落ちるのが分かります。プラスチック円盤は地球の重力に引かれるままにストンと落ちますが、アルミ円盤は少し遅く落ちます。
 プラスチックは電気を流しませんので、渦電流が発生しません。渦電流が発生しなければ磁力も発生しませんから、磁石の力を受けて落ちる速度がゆっくりになることもないのです。アルミもプラスッチクも磁石にくっつかないことは同じでも、電気を流す流さないの違いで、磁石の影響を受ける受けないの違いがあらわれます。電気と磁石は強い関係があるのですね。
【渦電流ブレーキ】
 展示品では、落下するアルミ板に磁石の作用でブレーキがかかることが分かります。この性質を利用して、鉄道車両では渦電流ブレーキが使われているものがあります。車輪と平行に取り付けられたディスクを挟むように電磁石が取り付けられていて、ディスクに生じる渦電流によってディスクの回転にブレーキがかかるようになっています。また、室内運動器具のエアロバイクにも回転に負荷をかけるために渦電流が用いられているものがあります。



【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
文 学芸員 山田吉孝

 

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