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展示ガイド

トムソンリング

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展示作品の狙い

 バネや発射機構なしに飛び上がるアルミのリングを見て不思議を感じてもらい、電磁気について理解してもらいます。

知識プラスワン

 スイッチを押すと、アルミのリングが高く飛び上がります。バネや発射機構は見当たらないので、見えない力で突然リングが飛び上がったように見えます。その見えない力は、リングの真下にあるコイルによって作られました。このコイルに突然電気が流れた時に、リングは飛び上がります。コイルというのは棒などに電線を何百回も巻きつけたもので、電気を流すと両端が磁石になります。ただし、リングが飛び上がるのは電流を流し始めた瞬間だけです。コイルに定常的に電流が流れるようになった後では、リングは飛び上がりません。
 コイルは電流が流れなければ磁石ではありません。電流が流れると磁石になります。つまり、スイッチを入れた瞬間に、それまで磁石ではなかったものが磁石になるわけです。しかし、磁石でないものが磁石になるのには、ほんのわずかの時間ですが、ある時間がかかって磁力が増加して磁石になります。そのわずかの時間にリングにはある変化が生じます。コイルの磁力の変化を打ち消そうとする働きがリングに生まれるのです。どのように打ち消そうとするのかというと、コイルに表れてくる磁力と反対向きの磁力をリングは発生させます。そうすると、コイルの磁力とリングの磁力が反発しあうことになります。磁石のN極とN極あるいはS極とS極同士を向かい合わせたのと同じことが起きます。その磁力の反発によってリングは高く飛び上がります。
 コイルの磁力が変化している間、アルミのリングには電流が流れます。このように磁力の変化によって電流が流れる現象を電磁誘導といい、流れる電流を誘導電流といいます。
 リングが飛び上がるという現象を発見したのは、 アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)の前身のひとつであったトムソン・ヒューストン社の創立者で、電気工学者のエリュー・トムソン(1853-1937)です。それで、この展示品をトムソンリングと呼んでいます。
 電磁誘導によってリングが飛び上がる現象を発見したのはトムソンですが、電磁誘導そのものはそれ以前の1830年に発見されています。電磁誘導の原理は発電機やモーターに使われていますし、身近なところではIH調理器が電磁誘導によって熱を生みだしています。IH調理器は内部にコイルがあり、そこに流れる数十kHzの交流電流によって、鍋の底に誘導電流が流れ、その電流によって鍋が熱を持つという原理になっています。また、発電所から送られてくる電気は、各家庭の近くの電柱では6,600ボルトの電圧ですが、変圧器によって100ボルトや200ボルトに下げられて送られてきます。変圧器も電磁誘導の原理を用いて電圧を変化させています。

 


【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
文 学芸員 山田吉孝

 

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