名古屋市科学館

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偏光

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展示作品の狙い

 透明なプラスチックに色がついて見える現象を楽しんでもらいながら、光の偏光や干渉、複屈折について知ってもらいます。

知識プラスワン

 透明なプラスチックを偏光板2枚の間に挟むと、カラフルな色がついて見えます。色がついていなくて透明な部分もあります。どうして透明なプラスチックに色がついて見えるのでしょうか。
 色がついている所は、プラスチックの中に歪みがたまっている所です。歪みは無理な力がかかっているか、プラスチックを作るときにたまった歪みです。また、色のついていない透明なところも、無理に力をかけて歪ませると色がついて見えます。このように力をかけると色がついて見える性質を『光弾性(こうだんせい)』と呼びます。この性質を利用すると、物体のどこに力が集中しているのかを知ることができます。力が集中しているところは壊れやすい場所になるので、製品の設計開発で光弾性を用いて調べることによって、より壊れにくい製品を設計することができます。
 色がついて見える理由には『偏光』『複屈折』『干渉』の3つの現象が関係しています。
【偏光】
 光は波の性質を持っています。例えば太陽を見たときに、太陽からやってくる光は地面に水平に波打ってやってくる光もあれば、垂直に波打ってやってくる光もあります。斜めもあります。特にどちらかの方向に偏っているわけではありません。このような光を偏光していない光といいます。蛍光灯や電球の光も同じように偏光していない光です。偏光している光というのは、ある特定方向にだけ波打つ光のことです。
 展示品の少し不透明な円盤は『偏光板』といい、特定の方向に波打つ光しか通しません。偏光した光を作り出すことができると言ってもいいでしょう。展示品では2枚の偏光板が平行に置いてあり、その下に光源があります。また、上の偏光板は回転させることができます。光源から出た光は偏光していません。そして、下の偏光板は特定の方向に波打つ光しか通しません。偏光板を通すと、偏光した光だけになるのです。そして、上の偏光板を回転させて、その偏光した光を通す向きにすれば、上から見たときに明るくなります。さらに回転させて、偏光した光が通らない向きにすれば暗くなります。
【複屈折】
 光がある種類の物質に入ると、2つの方向に別れることがあります。方解石という複屈折が生じる代表的な鉱物を本の上に置くと、文字が二重になって見えます。2つに別れた光は波打つ方向が互いに直角になります。そして2つの波は進む速度が違うので、物質を出たときに波の位置が変化します。これは位相が変化したと言います。
【干渉】
 2つ以上の波が出会うと、波の出会い方でさらに強い波になったり、波が小さくなったりします。これを波の干渉といいます。身近な光の干渉例はシャボン玉の色です。シャボン玉の薄い膜の表面で反射した光と、膜の中に入って反射した光とが干渉を起こし、特定の色のみが強められることで色が見えます。
 透明なプラスチックに色がついて見える理由は次のとおりです。
 下の偏光板で一方向に波打つ光が作られ、プラスチックに入っていきます。プラスチックの中で光が2つに別れて異なる速度で進みます。プラスチックから出るときには2つの波は位相がずれます。プラスチックに入る光が白色光であれば、位相のずれは光の色によって異なります。中には位相が重なる色もあります。位相が合えば干渉によりその色は強まります。ただし、プラスチックから光が出た時点では、2つの光の波は直角なのでそのままでは干渉しません。そこで、2つの光を上の偏光板に通すと干渉が起こり特定の色が強められて色がついて見えます。

 


【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
文 学芸員 山田吉孝

 

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