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展示ガイド

ボールの色選び

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展示作品の狙い

 赤・緑・青のボールが、ある光のもとでは同じ色に見えてしまう現象を通して、 色とは何か?光とは何か?を知ってもらう展示です。

知識プラスワン

展示品ではどのボールも同じ色に見えます。濃淡の差はあるものの色の見分けはできません。これはボールに当たっている光に原因があります。ボールに当たっているオレンジ色の光はナトリウムランプという照明器具による光です。このナトリウムランプの光はとても特殊な光なで、光の色の成分が他の光源とは全く異なっているのです。
 太陽や蛍光灯の光をプリズムという器具に通すと虹の7色に別れるのを観察することができます。太陽や蛍光灯の光には色がついていないように思えますが、実際は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色が混じり合った光なのです。もっともプリズムで別れた光を観察しても7本の絵の具のように明確に7色に分かれてはいません。7色が順番に連続して色が変化しています。見方によっては6色とも思えますし、もっとたくさんの色に感じることもできます。
 ナトリウムランプはオレンジ色の光ですが、プリズムに通しても他の色は出てきません。よく見かける赤や緑などのランプは、プリズムに通すと赤や緑だけでなく、他の色もたくさん入っていることが分かります。しかし、ナトリウムランプの光は、他の色がまったく混じっていないオレンジ一色なのです。そのような光で照らされた物体は、オレンジ色以外に光りようがありません。物体は自分で発光しない限り、照らされた光を反射することで色を示すしかないからです。ナトリウムランプのもとではオレンジ色しか反射できないのですから、ボールの色が赤や緑であっても、そのボールはオレンジにしか見えません。これがナトリウムランプのもとではボールの色を識別できない理由です。ただし、たくさん反射するか少し反射するかによって、濃淡の差ができます。
 ナトリウムランプでなく、フィルターなどで作られた赤い光の中で色を見分けることができるのは、赤い光の中に、少しは緑や黄色の光が入っているからです。
 生活の中でナトリウムランプが最も使われているのはトンネルや道路の照明です。 オレンジ色のみという単色光を用いると、ガスや埃の中でも見通しが良くなったり、物がはっきり見えたり、紫外線を出さないので虫が集まらないなどの利点があるためです。
 ナトリウムランプには主に低圧ナトリウムランプと高圧ナトリウムランプの2種類があります。展示品で用いているのは低圧ナトリウムランプです。このランプは展示品で分かるように色を見分けることがほとんどできません。従って一般的な用途には使いにくいので、もう少し色を見分けることのできる高圧ナトリウムランプが多く使われるようになっています。低圧と高圧の違いは、ランプの中のナトリウム蒸気圧の低い高いです。ナトリウムの蒸気圧を高くすることによって、オレンジ以外の色もでるようになります。
 太陽や蛍光灯の光に色はついていませんが、このような光を白色光といいます。太陽の光を調べると、緑色の成分が強くそこからスペクトルの左右(赤や紫方向)に離れると光の強度が弱くなっています。地球の生物は太陽のもとで進化してきましたので、人間は太陽の光を基準として、その光を白色光と呼んでいます。

 


【 参考資料 】

参考資料
視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録(2006)数研出版編集部(数研出版)
光と色の100不思議(2001) 左巻健男(東京書籍)
文 学芸員 山田吉孝

 

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