名古屋市科学館

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けずる

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展示作品の狙い

 切削とは「削(けず)る」ことを意味します。金属を加工するとき、切削はきわめてよく用いられる手法です。金属の加工と大量生産に関する知識を深めていただくことがこの展示品の目的です。

知識プラスワン

<切削を行う2つの工作機械>
 金属を削る場合、いろいろな方法があります。大きく分けると2つ。一つは加工したい金属を回転させ、固定した切削用の刃物(バイト)をおしあてて削る方法です。工作機械の中で重要な旋盤と呼ばれるものがこれにあたります。工作機械とは機械部品を作る機械のことを示しています。もう一つは、加工しようとする金属を固定し、高速で回転するバイトをおしあてて削る方法です。フライス盤とよばれる工作機械がこれにあたります(図1)。
 映像では、旋盤とフライス盤の作業風景を見ることができます。優れた工作機械がいつごろ、どのような背景で生まれてきたのか簡単に紹介しましょう。
<蒸気機関をつくるため>
 18世紀後半からイギリスで産業革命が起きました。重要な発明にワットの蒸気機関があります。蒸気の力を利用し、シリンダー中のピストンを上下に運動させねばなりません。このとき、シリンダーの内壁とピストンができるだけ密着していないと、蒸気が漏れてしまい十分に作動しません。そのために、大きな円筒形の鉄を中繰りする機械が必要になってきました。中繰りとは、回転軸に対して直角に取り付けられたバイトを内側からあてて、正確な円をもつ内壁を削りだすことをいいます。蒸気機関が普及するためには、性能のよい工作機械が必要でした。1775年、ジョン・ウィルキンソンが蒸気機関のための中繰り機を実用化しました。
<モーズレーの貢献>
 旋盤の父と呼ばれるイギリスのヘンリー・モーズレーは、腕の良い鍛冶師として働いていました。18世紀後半の一般的な旋盤は足踏み動力で、職人が切削用の刃物(バイト)を手に持ち、削りたい場所にあてるという仕組みでした。こうした構造ではあまり精密な作業はできません。特に鉄などの硬い金属を加工する場合には問題がありました。そこでモーズレーは、バイトを固定できる工具台を設け、その工具台を旋盤本体に対して正確に平行移動できるようにしました。この工具送り台のことをスライドレストといいます。モーズレーの改良したスライドレスト付き旋盤は、機械加工に革命をもたらしました。
<ねじ切り旋盤と互換性>
 さらにモーズリーは、産業用として実用的な最初のねじ切り旋盤を、1800年に生み出しました。これは、一定の速さでスライドレストを移動させ、円筒形の金属にねじ山を作る旋盤です(図2)。このねじ切り旋盤によって、ボルトとナットの互換性が実現しました。
 これ以前は、ボルトとナットは特定の一組でしか噛み合わせることができませんでした。どのボルトとナットの組み合わせでもしっかりかみ合うという今日当たり前のことがここで実現しました。このことを互換性と呼んでいます。大量生産には欠かせない重要な概念は、イギリスの産業革命の時代に生まれました。
<フライス盤>
 フライス盤は、固定した金属に高速で回転するバイトをおしあてて削る方法であることは前述のとおりです。平面に加工したり、溝を切ったりすることが得意な工作機械です。
 現在残されているもっとも古いフライス盤は、アメリカのエリー・プラットニーによるもので1820年に作られたといわれています。

 


【 参考資料 】

協力
名古屋市立工業高校
参考資料
機械工作概論(1986年)萱場孝雄ら(理工学社)
フライス盤作業(2008年)澤武一(日刊工業新聞)
文 学芸員 馬渕浩一

 

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