名古屋市科学館

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ね じ

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展示作品の狙い

機械を分解していくとさまざまな構成要素になっていきます。これ以上分解することができない最小のものです。ねじもそのひとつで、最も重要なものといってもよいでしょう。
ねじの役割は、「締めつける」が主なものです。しかしそれだけではなく、回転運動を直線運動に変える重要な機能も備えています。ねじについての理解を深めていただくことがこの展示品の目的です。

知識プラスワン

<ねじとは?>
ねじは、円筒や円錐の面に沿ってらせん状の溝をつけたものを指します。長方形の対角線を一つだけ書き、この長方形を巻いて円筒にしたとき、対角線はつる巻き曲線という三次元曲線を描きます。ねじはこのつる巻き曲線に沿って溝をつくったもののことです。円筒や円錐の外側に溝のあるものを「おねじ」、内側に溝のあるものを「めねじ」と呼ぶことも知っておきましょう。
<ねじの歴史>
ねじがいつ頃考案されたのかについてよくわかっていません。アルキメデスのポンプというものがあります(図1)。ねじとはいえませんが、アルキメデスはらせんを機械に持ち込んだ最初期の技術者であったことは間違いありません。1500年ごろになると、ダ・ヴィンチのスケッチの中にねじがたくさん出てきます。
1543年、種子島に火縄銃が伝来しました。このとき、火縄銃とともにねじが伝来しました。それ以前にねじが使われていた証拠がまだ発見されていませんから、わが国にねじが初めて伝わったのは鉄砲の伝来と同時であると考えられます。このとき、藩主の命令で銃の模造を試みた刀鍛冶は、ねじの作り方がわからず、自分の娘をポルトガル人に嫁がせて作成法を聞き出したとする伝説が残っています。火縄銃の銃身の後ろ側をふさぐ尾栓におねじとめねじが使われていたのです。
1800年、イギリスのヘンリー・モーズレーがねじ切り用の旋盤を発明しました。旋盤のことは展示品「切削」で紹介していますので、ここでは詳しく触れません。円筒形の材料を回転させ、回転軸に対して直角に刃物をあてながら回転軸に対して平行移動するとねじができます。正確なねじが大量に生産され、産業革命を後押ししました。
<ボルト・ナット>
ねじと同様の名称であるボルト・ナットについて紹介しましょう。公に決められた定義と現場で慣用的に使う場合で異なるのですが、日本工業規格(JIS)では、「ボルトはナットと組んで使うおねじの総称、ナットはめねじ部分の総称」としています。
ねじやボルトは締めつけることが目的と書きましたが、1950年代まで、土木・建築・大型機械などの分野では、金属を締めつけて接合する場合、主にリベットが使われていました。リベットは短いクギのようなもので、2枚の金属板にあけた穴に通し、裏側に飛び出た部分をつぶして2枚の金属板を密着固定します(図2)。リベットは火にあぶって高温にし、打ち込みます。冷えるとリベットが収縮して、一層強い力で締めつけることになります。名古屋・栄のテレビ塔、東京タワーなども下部の脚の部分はリベットが、上部のトラス部分はボルトが使われています。トラスとは橋などに見られる三角形を基本にした構造形式のことです。
これは、締めつけた後、ボルトに直角で左右に引っ張る力、すなわちせん断力がかかったときに、当時のボルトが簡単に破断してしまうことから、重量物やとりわけ強い力がかかるところではリベットを数多く打った方が安全だと考えられていたからでした。大きなせん断力に耐える高張力鋼という材料でボルトが作られるようになってから、次第にリベットは使われなくなっていきました。
<回転運動から直線運動へ>
ねじの役割は締めつけだけではありません。回転運動から直線運動へ変換することも重要な役割です。100分の1ミリまで測定することができるマイクロメータという器具があります。図3のように測定したいものを挟んでねじの部分を回転させ、とまった位置の目盛りを読むことで長さが測定できます。
ねじの山と山の間隔、すなわちピッチを3.6ミリとすると、ねじが1回転すると3.6ミリ進むということになります。つまり、ねじを1°回転させると、360分の3.6ミリ、すなわち0.01ミリ進むわけで、これがマイクロメータの原理になっています。これを利用し、ごくわずかな直線運動をさせたいとき、ねじが用いられます。CDやDVDなど、盤面にレーザー光をあててその凹凸を読み取るのですが、時間の経過とともに、ほんの少しずつ内側から外側に移動させなければなりません。このようなメカニズムにもねじの回転運動から直線運動に変えるしくみが使われています。

 


【 参考資料 】

参考資料
ねじとねじ回し(2003)ヴィトルト・リプチンスキー/春日井晶子訳(早川書房)
文 学芸員 馬渕浩一

 

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