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くもとあめ

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展示作品の狙い

地表の水は蒸発して水蒸気となり、上昇し上空で雲をつくります。雲はやがて雨(水)となって地上にもどってきます。水は地球上で循環しているのです。「水のひろば」はこの大きな水の循環と水の性質について、さまざまな実験を通して知識を深めていただくためのものです。
ここでは「くものステージ」にある3つの展示を解説します。雲を構成する小さな水滴と成長後の雨に関する実験と知識の整理を行います。

知識プラスワン

<くものつぶとあめのつぶ>
雲は、大気中にかたまって浮かぶ水滴や小さな氷の粒のことです。そして、それらが大きく成長して雨粒になるのですが、それらがどのくらいの大きさなのかを示すのがこの展示です。
雲を作る雲粒は、空気中に浮かぶちりやほこりなど(エアロゾルといいます)の微粒子を核としてつくられます。そのため、エアロゾルが多いと水蒸気が凝固しやすくなり、雲が発生しやすくなります。このときにできた雲粒は0.001~0.01mmくらいとごく小さなものです。これが、雲粒同士の衝突や、雲粒に水蒸気がさらにくっついて凝固していくなどして、雲粒は次第に成長し、最大で0.2mmの大きさになります。さらに成長し、雨粒になると、その直径は1mm前後になるのです。最初の雲粒から雨粒を比較すると、100~1000倍になっていることがわかります。
<みずのプリズム>
白色光を赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の7色に分解する三角柱のガラスをプリズムと呼んでいます。白色光は波長の異なるさまざまな光が集まったものでることがわかります。17世紀、イギリスのアイザック・ニュートンもプリズムをつかった実験を重ね、「光学」という本を出しました。
プリズムはガラスで作ったもの、ではかならずしもありません。水でもプリズムになるのです。アクリル樹脂という透明性の高いプラスチックで作った三角柱のいれものに水を入れるとプリズムになる、というのがこの実験です。
なぜ、光を分解することができるのでしょうか。そこには屈折という現象がふかく関わっています。空気中と水の中では、光の進むはやさが違います。この違いから、光が水に入ったとき、水から出ることに、光が折れ曲がって進むようになります。これが屈折です。
水の入った茶碗にはしを入れると折れ曲がったように見えるのも、この屈折によるものです。
ここで、どのくらい屈折するか、すなわち屈折率が重要です。屈折率は光の波長によって違います。波長の長い赤色の光は屈折率が小さく、波長の短い紫色の光は屈折率が大きいのです。したがって、赤色から紫色まで含んだ白色光は、プリズムで屈折して、7つの色に分解されるのです。
虹ができるのは水の屈折によるものです。空気中の小さな水滴に太陽の光が入り、そこで屈折と反射を起こし、そこで分解された7つの色を、私たちは虹として見ているのです(図1)。
<さかのぼるあめ>
雨は空から地上に降ってくるものです。しかし、この実験装置をつかうと、雨が上昇しているように見えます。不思議な実験ですが、これはトリックです。
精巧に作られた装置から連続して水滴を滴下しています。ここで仮に水滴に番号をつけることとします。そこに、ストロボ照明をあてます。ストロボ照明とは、決まった間隔で連続的にごく短時間、光を放つものです。したがって、暗い環境の中でストロボ照明を行うと、光が放たれた瞬間だけ水滴を見ることになります。
この間隔を調整すると、水滴が上昇しているように見えるときがあります。図2が示すように、ひとつ上の水滴を次々に人の目が追いかけているのです。また、ストロボ照明を再度調整すると、水滴がとまったように見えることもあります。これはひとつ上の水滴が前の水滴の位置にきたときにストロボが発光しているのです。

 


【 参考資料 】

参考資料
気象(2009)ジョン・ウッドワード(ランダムハウス講談社)
文 学芸員 馬渕浩一

 

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